それぞれの本領
苛立ちを隠すことなく、感情的にドアを開ける。
「おっと、乱暴だな」
「……なんでお前がいるんだよ」
「何を言う。私はお前の使役する魔物の一体だろう」
レオノラが獰猛に笑う。
「はぁ、紅羽の部屋にでも行ってろ」
「まぁまぁ待て。私は、お前の魂の中にいた」
だから何だよ。
「その時、自分の人格がそちらに引っ張られるほどに、内面に触れた」
「そうか」
もはや責める気にはなれないが、不愉快の極みだ。
「あー、だからな。お前の考えていることは充分に理解しているとも」
「ははは」
俺はつかつかとレオノラに歩み寄り、睨み付けた。
「なら黙ってろ」
「……そうだな。お前はそういう男だとも」
ああ、明日にはケロリとしといてやるから下がれよ。
「では、失礼」
レオノラが部屋を出て行く。
……
「あう」
バンシーちゃんがレオノラが去っていった扉の方を見て、「ケッ、役立たずが」とばかりに顔を顰めた。
まぁバンシーちゃんは天使なのでそんな事は一切考えていないだろう。
「掲示板でも開くか?」
「あうあう」
それが良い、とばかりに頷くバンシーちゃんのお腹に横たわり、掲示板を起動した。
タカ:こんばんは
ほっぴー:こんばんは
ガッテン:おー、やっと来たか
タカ:あ、何?なんかやってたの?
ガッテン:祝福の効果確認
タカ:あー
タカ:速く動ける!!!!!!!以上だ!!!!!!
ほっぴー:知ってる
ガッテン:俺も似たような感じで硬くなってパワー上がった
スペルマン:下ネタですか?
ジーク:お、釣れた
ガッテン:餌垂らした覚えないんだけど……
砂漠の女王:お代官様の方が硬くてパワーがありますよ
スペルマン:草
ジーク:張り合わないで
ガッテン:知らんがな
タカ:プライバシーガバガバで草
ほっぴー:どうやって知ったんですかね……
お代官:私のモノを勝手に比較対象に出さないでくれるかね!?
お代官:自分のものでやりたまえ!自分のもので!
砂漠の女王:えっ
砂漠の女王:あー
砂漠の女王:お代官様がお望みとあらば
お代官:そういう事ではない!!!!!!!
砂漠の女王:そうでしたか
砂漠の女王:鉄壁の貞操を崩す鍵を得たと思ったのですが
タカ:まだ貞操守ってんの!?!?!?!?!??!???!
お代官:おい
ほっぴー:草
ジーク:箱入り娘じゃん
スペルマン:意志強すぎん?
ガッテン:流石お代官さんだ
お代官:いや普通守るだろう!?
砂漠の女王:良いんですか?焦らされる程興奮しますよ?
タカ:脅しとして新しすぎる
ジーク:勝手に興奮してろ定期
ほっぴー:観念して結婚した方が良いですよ
お代官:私はまだ守る
スペルマン:こりゃ硬くてパワーがありますね
スペルマン:貞操の話です
ガッテン:白白しすぎん?
お代官:スペルマン君、私は根に持つぞ
スペルマン:砂漠の女王のえっちなイラスト描くので許して下さい
お代官:私になんの利益もないのだが
スペルマン:じゃあお代官さんのを描くので
砂漠の女王:許しましょう
スペルマン:どうも
お代官:どうもじゃないが
お代官:というかスペルマン君、定期的に献上してるだろう!?砂漠の女王の自室にちらほらそういう絵が見られるのだが!?
スペルマン:え?うーん……
砂漠の女王:ゆくゆくは美術館を建てます
タカ:楽しそう
ジーク:300円までなら入館料払える
お代官:誰も入れんぞ
砂漠の女王:まあ、二人っきりですか。嬉しいです
お代官:そして私も入らん
砂漠の女王:……
ほっぴー:草
ジーク:ぼっちじゃん
ガッテン:笑う
「んふ」
思わず漏れた笑い声。
はーあ、こいつら見てっと落ち込むのが馬鹿らしくなってくる。
「寝るか」
今ならまだマシな睡眠がとれそうだ。
俺はゆっくりと目蓋を閉じた。
「あう! あうあう!」
枕のぷにぷにとした振動で目を覚ます。
ああ、朝か。
どうやら早寝早起きしちまったようだ。
「健康になっちまうな」
そんなお決まりのセリフを吐きつつ立ち上がる。
簡易式ラジオ体操を手早く済ませ、洗面台へ向かった。
「はぁ」
朝の準備を粗方済ませた俺は、もう一度バンシーちゃんのお腹に寝そべった。
そのまま掲示板魔法を起動する。
タカ:おはござ
レオノラ:む
タカ:うわ
タカ:お前は寝てろ
レオノラ:酷い言い様だな
タカ:妥当だろ
レオノラ:ははは
レオノラ:ところで、気持ちの整理はついたか
タカ:はぁ?
タカ:まぁ、それなりにな
レオノラ:そうか
タカ:開き直りに近い
レオノラ:まぁ、お前はそういう男だ
タカ:マジでそのマウント返しようがなくて腹立つんだが
タカ:ナーフしろ
レオノラ:無理だな
レオノラ:いやしかし、私ばかりがお前を知っているというのも不公平な話だな
レオノラ:今晩、寝室に来るといい。私の全てを見せてやる
タカ:手土産は爆弾でいいか
レオノラ:随分と情熱的だな
タカ:なんなんだ無敵かコイツ???????
ほっぴー:タカがマウントとられてるときいて
鳩貴族:同じく
タカ:散れハイエナども
ほっぴー:ジーク叩き起こしてくるか
タカ:やめろ
七色の悪魔:ログ読んできたのですが、タカさん、何か悩み事でもあったのですか?
タカ:うっ
七色の悪魔:個チャで相談をしてきても良かったんですよ
タカ:ぐ
七色の悪魔:解決したようなので深追いはしませんが、次からはもっと私達にも相談して下さい
タカ:ぐぬぅ
ほっぴー:聖水かけられた悪魔じゃん
レオノラ:既視感の正体はそれか
鳩貴族:異世界人の証言も追加ですか。タカ、悪魔説の証明が捗りますね
タカ:捗らすな
ほっぴー:とうとう考察勢の本領発揮か
七色の悪魔:それ本領なんですか……?