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4-8 交渉

登場人物まとめ

A[整備班 自動車関係に詳しく体も声もでかいが気弱な所もある]

B[研究班、高齢の女教授で研究以外に興味が無く性格がキツい]

D[研究班、研究肌で声が小さく話す前に少し貯める癖がある]

E[整備班、体躯のわりに運動は苦手だが他は多芸で飄々とした性格の個人主義]

G[偵察班、体は大きいが器用貧乏で非日常を好む変人で親しい人間には語尾を伸ばす癖がある]

K[施設班、工学に詳しく冷静沈着で天才肌なまとめ役] 

O[施設班、少し気弱でオタクっぽいが機械やドローンに造詣が深い] 

P[遠征班、小柄だが朗らかで野外での活動の才能が高く一度見た風景を忘れることが無い] 

S[遠征班、糸目で音楽や文学に詳しいムッツリスケベ] 

T[遠征班、小柄だが自転車が趣味で体力が高い人の好い性格] 

H[遠征班、元学芸員の歴史オタでフィールドワークの経験から重機を動かせ体力もある]

I[偵察班、長身痩躯で極めて性格が善性な人物] 



 小型のドローンはLEDランプを点滅させながらゆっくりとバリケードに近付いていく。カメラの精度は良くは無いが、それでも若い男達がいることが分かる。一応はマスクと手袋を着けている様子。バリケードの近くにいる人数は3人、気怠そうに地面に座っている。


 バリケードは所謂安全第一と書かれた工事用のウマを並べ、補強として鉄パイプや建材を取っ付けたものであった。コンクリートブロックもウマが動かないように使われており、普通の乗用車であれば一応は止めることが出来るだろう。


 そして、気怠そうな様子は仕方が無いともいえる。何故ならば彼らはバリケードを急いで作ってから、もう数時間も同じ場所で待機しているのだろう。緊張状態を長く続けるのは案外難しいものだ。だが、一人の金髪の男、といっても染め直す余裕も無いのかプリンのような色になってしまっているが―――カメラに向けて指をさしているのが見える。その様子を確認しながらドローンはゆっくりと近づいて行った。




『こんにちは、私たちは敵ではありません。話し合いがしたいのですが代表者の方はいらっしゃいますか?』


 手に持った金属バットを誇示するかのように肩に担いでいるプリン頭であったが、ドローンのスピーカーから流れる声に少し戸惑った様子を見せ、すぐに食い気味の様子で捲し立てる。


「おい!お前ら自衛隊かなんかかよ!?」


『いえ、私たちは貴方方と同じ立場のグループです。』


「はあ!?ちっ・・・期待させてんじゃねえよ!!」 


 救助でも来たのかと期待した様子のプリン頭は途端に機嫌が悪くなりブツブツを文句を言ってくるが、他の2人は簡単な言葉を交わすと背の低い一人が少し離れた建屋に向けて走っていく様子が映像の端に映った。


『期待させてしまったのはお気の毒ですが、落ち着いていただけませんか?』


「あん!?こんなオモチャを飛ばしておいて何様だよ!顔も見せないでビビってんのかコラ!」


『落ち着いてください、私たちは話し合いに来ているのです』


 慇懃な態度が癪に触ったのか、金属バットをドローンに向けそうになったプリン頭を流石にまずいと思ったのか残っていたもう一人が制止する。プリン頭の怒りの矛先が制止した男に向かってがなり立てているところを見ると力関係はどうやらプリン頭の方が上のようであった。


 そのようなやり取りの中、人相のよろしくない男達を連れた、スーツを着た中年男がバリケード付近に近付いてくる。騒いでいるプリン頭に声をかけると、2人の男は顔を恐怖に歪ませて静かになった。



「さて、私の部下が騒がせてすまないね。彼も大分この状況に参ってしまっているようだ、あとでよく言い聞かせておくよ。」


 スーツの男はツーブロックの髪を整髪料で綺麗に整えてあり、低く落ち着いた声で謝罪する。表情はマスクで見えないが、しかしその目は申し訳なさそうな様子は微塵も無く、鋭く光っていた。


『お気になさらず、今はどこも厳しいですからね。仕方がありません。』


「そう言ってもらえると助かるよ。それで、君たちは街の方から来たのかい?よければ色々と話を聞きたいのだが、私の家も近い、歓迎するよ。」


『いえ、大変有難いお話ですが、感染症が蔓延している中で初対面の人間と接触するのはお互いに不安だと思いますので、申し訳ありません。』


 にこやかな様子の男がピクッと肩を揺らす。

 

「・・・ほう、そうだな、確かにそうだ。ならば、君たちはどうして我々のところに来たのかね?」


『私たちは物資を集めながら色々と動いています。この周辺があなた方の場所であるのならば大人しく別の場所へ行こうと思っていますが、燃料節約のためにこの先にある太陽光発電所からパネルを回収しようとしています。そのためにこの先の道にトラックを入れる許可をいただきたいのです。』


「なるほど、それはそれは。君達があのバイクをもったグループだったのか。それは悪いことをしたね、しかし分かって欲しい。我々も怪しい影があれば身を守るために行動しなければならないとね。」


『ええ、それは理解できます。しかし、今私たちと貴方で互いに争わず、尊重し合う関係がつくれると思うのですがどうでしょうか?』


「ふむ、そうだね。それは素晴らしい事だ。君たちが話し合いのためにそのラジコンを使っていることもわかる、敵対するのであればこのような真似はしないだろうね。」


『ご理解感謝します、それではバリケードを撤去していただけるという事でよろしいですか?』


 このスピーカーから流れた言葉に形だけの柔和な態度が変わる、暗く笑い、眼光をさらに鋭く、さながら獲物を狙う獣のように見えた。


「それは出来かねるね、我々も警戒のために労力を使ったのだ。君たちもこの先に用があるのであれば、我々に出すものを出すのが筋だと思うのだがね?」


『私たちに何をお求めですか?』


「そう、そこだよ。君たちは我々の家を知っているが我々は君たちの家を知らない、これは不公平であるし・・・君たちは私の顔をそのカメラ越しに見ていると思うが、私からは見えない。これは礼を失していると思わんかね?それに、今後の付き合いもあるかもしれない。一度話し合いをして、いやいや全員ではなく互いに少人数でいい。そうすればバリケードも開けて君たちを手伝おうじゃないか。欲しいんだろう?この先にあるものが。」


『・・・そうですね、少しお時間をいただいてもよろしいでしょうか?』


「ふむ、少しだけだ、我々もそう暇でぶあっ」


 間抜けな音を立てて男が倒れる。周囲を固めていた男たちが呆然とする中、ドローンはその様子をカメラに収めつつ上昇していく。


『もう目的を正直に話している時点で決まっていたんだ。全部のお前たちの時間を貰う、とね』


 直後に爆音、轟音、見ているものでは無い誰かの地獄が始まった。


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