4-6 衝突
登場人物まとめ
A[整備班 自動車関係に詳しく体も声もでかいが気弱な所もある]
B[研究班、高齢の女教授で研究以外に興味が無く性格がキツい]
D[研究班、研究肌で声が小さく話す前に少し貯める癖がある]
E[整備班、体躯のわりに運動は苦手だが他は多芸で飄々とした性格の個人主義]
G[偵察班、体は大きいが器用貧乏で非日常を好む変人で親しい人間には語尾を伸ばす癖がある]
K[施設班、工学に詳しく冷静沈着で天才肌なまとめ役]
O[施設班、少し気弱でオタクっぽいが機械やドローンに造詣が深い]
P[遠征班、小柄だが朗らかで野外での活動の才能が高く一度見た風景を忘れることが無い]
S[遠征班、糸目で音楽や文学に詳しいムッツリスケベ]
T[遠征班、小柄だが自転車が趣味で体力が高い人の好い性格]
H[遠征班、元学芸員の歴史オタでフィールドワークの経験から重機を動かせ体力もある]
I[偵察班、長身痩躯で極めて性格が善性な人物]
上空を飛ぶドローン。血も通わない優秀な先兵にして斥候、しかして操るのは人間だ。故に見通しのきかない細い道、先行するドローンも木々に遮られて十分な偵察の任を果たすことは難しかった。
先頭を走るGのバイク、木陰から『ゾンビ』がタイヤが砂利を撥ねて進む音に誘われたか躍り出てくる。
Gは考える、体躯の割にその本質は小心者だ、自身がそれを何よりも知っている。心拍数は跳ね上がる。スローモーションのように迫る、太った中年女性の感染者、反射的にブレーキをかけようと―――
死が迫る、それはありふれたものだ。だが人間が直視するのは難しく普段は目を逸らしている、だが常にあり、本能はそれを怖がる。
「ヒャアッ!」
Gは考えすぎない、奇声を上げてGはアクセルを吹かす。体を固定させ衝撃に備える、そして思う。
先に世界がイカれてくれて、良かったと。故に、狂気は本能を超すことができる―――
ゴッという鈍い音、そして衝撃。
『ゾンビ』が僅かに正面から身を逸らしたためにバイクは大きく減速しながらも左に流れバランスを崩して横転する。幸いにも3輪バイクの安定性のおかげでギリギリまで制御を行い、ハンドルから手を放して地面を転がる。
体は多少痛む、頭も少しふらつく、本能が理性と結託して自身の安全を優先させようと脳内から電気信号を送ろうとするが、拒否する。薄暗く赤い情動が体を動かす、それは理性よりも理性的で本能よりもぎらついた本人でも説明できない何かだ。
手早く左手で装面を確認、ずれていない様だ。特殊繊維のポンチョはこの程度で破れない、使い捨て防護服は後で確認が必要になるがポンチョやプロテクターの下だからおそらく大丈夫だろう。体は動く、しっかりと歩け、そして手には力が入る。
問題なし。あってもそれは後で気にすればいい。ああ、そういえば日が少し眩しい、ストローハットはどこかに落としたようだ。
『ゾンビ』の様子を見る、口から血を吐いて呼吸が困難な様子でのたうち回っている―――名前負けしてやがる、本当の死者であれば息なんぞ不要だろう、とGは笑う。
腰に手を当てる、武装はサプレッサー付きの拳銃、マシンガンは紐で方から吊るしていたはずだが落としたようだ。あとはサバイバルナイフに、大腿部のホルスターから伸縮型の特殊警棒。
弾は勿体ない、いかなる反撃でもこちらの防護は十分だ。
30cm程度の警棒を振るとその長さは1m近くまで伸びる。そして警棒は叩くよりも突くものだ、腰を落としながらステップを踏んで『ゾンビ』の頭部に近付く。
『ゾンビ』の濁った瞳を装面のレンズ越しの血走った目が映す、だが迷いなく右腕を伸ばし頸部へと警棒を突き立てると手元のボタンを押す。
『ゾンビ』は一瞬大きく首を振り、全身を細かく震わせる。
10秒後にGは警棒をゾンビから抜く。
『ゾンビ』といえどもその本質は生きている哺乳類、強烈な電撃を頸部に受けては今度こそ本当に死ぬしかなかった。スタンガン付き警棒、空撃ちしなければ実はスタンガンは相手の体内を電気が通るために案外静かなものだ。バチバチ言わせて閃光をピカピカさせていては目立って次の敵を呼び寄せてしまうだろう。
後続の2台のバイクが急ブレーキをかけて静止しTとIが駆け寄ってくる。上空のドローンも異常を察知して急いで戻ってきていた。
「Gさん!大丈夫ですか!?」
「なァに、問題ないさI。それよりもバイクが無事だといいがなァ」
「少し休みなよG、バイクは見てくるし落ちてるものも拾っておくよ。Iは周囲の警戒をしといてよ」
「すまんねT、装備のチェックでもさせてもらうとするかねェ」
「そうしといてよ」
TとIが警戒しつつバイクを起き上がらせ、散らばった荷物も集めている。Gはその間にか荒田と装備の状態を確認、幸いなことに装備は問題なく壊れたものもなく、防護服も少し擦れているものの穴は開いていなかった。
体の状態もそう悪くは無い、打撲か擦傷のせいかズキズキジンジン痛む所が複数あるが、骨は無事の様だし何とか動ける。肩や足首を回しつつ、起き上がらされて概ね元の状態になったバイクへと近付く。
「T、バイクはどうよォ?」
「少し正面は歪んでいるし、ライトはぶっ壊れているけど何とか動きそうだよ」
「そいつは重畳、んじゃ、そろそろ行くとしますかァ」
「ええ?Gさん体は大丈夫なんですか?」
「問題ナッシング、それよか急ぐぞ、日が暮れちゃあ余計見にくくなる。それに暗闇でライトを今つけることもできんしなァ」
「ええ、目立って見つかってしまうかもしれませんしね・・・何か体調不良があればすぐ言ってくださいね」
バイクに再びまたがると簡単な動作チェックを行い問題ないことを確認する。電気式の自動車の利点はそのシンプルな構造にある、シンプルゆえに壊れにくく、直しやすい。ガソリン式に比べれば必要な部品数は驚くほど少ない。
『G!ごめん!』
バイクの通信機を介してOの慌てた声が届く。
『なァに、気にすんな。こんな見にくい道なんだ、仕方ないさァ・・・それよか先を急ごう、もうすぐだろ?目的地』
『うん、工事現場の跡地があって少しだけ開けてるしプレハブの建物もあるよ。そこを中継地点にすれば、もう目的地までドローンを飛ばすことが出来るはずだよ』
『オーケイ、では行きますかァ、先導頼むぜェ』
『勿論!』
再び3台のバイクは動き出す、そしてそう時間のたたないうちに、目的地へとたどり着くのであった。




