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1-25 選択の時

「・・・さあて、と。どうしますかね、我々は?」


 とある地方都市の大学、その講堂の一室。最上階にあるその部屋からは街が一望できる。それなりの数のむさくるしい男達が囲む中、背の高い男が椅子に深く腰掛け、天井をぼんやりと眺めながら切り出した。


「ああ。明後日にも主要都市以外を放棄するという声明を出すという通知か・・・フン」


 面白くなさそうに、目鼻立ちの整った男は鼻を鳴らす。


「おう、俺たちはどう動くかだな。業務用の原付なら整備してあるぜ」


 大柄でゴーグルのような眼鏡をかけた男が立ち上がる。


「確かに今なら混乱する前に逃げれるけどねェ・・・」


 小柄で丸顔の男は微笑を浮かべながらも動向を見守る。


「普通に考えれば、まあ移動するべきだなあ、早く知れたし・・・なんで不機嫌なの?」


 小太りの男が横に座る目鼻立ちの整った男を不思議そうに見る。


「フン・・・確かに通告はあったな。通知の前に、だ。通知の2日前だ」


「「あ~・・・」「どういうことだ?」」 

 

 数人が思い当たる節があるようで納得した表情を浮かべる。


「・・・遅すぎる。俺達への通知が、な。無論情報の秘匿は必要だったんだろうが・・・所詮これが俺達への評価というわけだ」


「成程な、まァ、普通の市民よりは優先的に受け入れてくれるだろうが。厚遇はしてもらえんか、精々下働きってとこさな―――――」


 ガリガリと頭をかきながら背の高い男は椅子の背に深くもたれ掛かった。


「が、結局は残るか行くかだ。さァて、どうしたもんか・・・行くのは無難だなァ、拠点の安全は確保され、飯とかも出るだろう。ただし、今みたいに自由にはやれなくなるし・・・場合によっては危険な命令もくるかも知れん、メッセンジャーさんのようにな。」


「残るのは・・・逆ですね。自由が有る、この一点が最大にして唯一のメリットですね。問題点は・・・すべてを自力でやらないといけない、自分の身は自分で守る、電気、水、食べ物・・・これらもですね。えっと、他にも山積みです・・・」


 会議室を重苦しい静寂が包む。ただ、早々に結論は必要であることは誰しも理解していた。


「・・・んん、それぞれ決めればいいんじゃね?」


 太いフレームの眼鏡を掛けた長髪の男が面倒くさそうに声を挙げる。


「―――そうだな。それでいい、いやそれがいい。元々俺達はそんな集まりだった筈だ・・・俺は、残る。やりたいようにやらせてもらおう。」


 目鼻立ちの整った男がそう宣言すると周囲の男達も自分の決意を述べていく。


「すみませんが私は都市圏へと向かいます、実家がちょうどあるのでね。」

「僕は残るさ、まあ長い付き合いだし」

「俺は・・・残る、か。もう親はどっちも感染して病院に入っていた・・・」

「俺は出る、その方が生き延びられそうだ―――――」


 半分程の男達が都市部への避難を決めた。残る男の中にそれを攻めようとする者もまたいなかったし、行く男の中にも留まる男達を馬鹿にする者はいなかった。


「・・・おまえはどうする?」


 ぼおっと天井を見ていた背の高い男に声がかかる。


「行ったほうが楽できるんだろうなァ、俺は七面倒なことは嫌いだ。それに、残るのは嫌な予感がする・・・俺の嫌な予感って言うのは大概当たるんだ、良い予感は当たらないがね。」


「そうか、残るのか」


「・・・おいおい!この文脈でどうしてそうなるんだよ!?」


「あ?じゃあ行くのか?どうせ行かんだろ、このアホが。」


「―――ああ、残るさ、残るともよ。全く茶番くらい言わせろって・・・どうせ、録でもないクソッタレな世界になったんだ。いっそ、嫌な予感がビシビシ来る方を選んだ法が、何と言うか―――それっぽい、ワンチャンあるかも知れん。」


 椅子から立ち、手を高く上げて背伸びをしその長身を更に長くしつつ、男は笑った。


「あァ・・・楽しくなってきたなァ」


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