1-26 誕生
第一章、コレでようやく終了です・・・長すぎた気がします。〈(*A*)〉
翌日、人数を半分ほどに減らした男達は再び講堂に集まっていた。
「さァて、残ったのかはこれくらいか・・・予想通りかねェ?」
「フン、予想よりは多く残っている。教授は残らない確率も高かったが」
「ババ、教じ・・・ああもういい、ババアも女だてら教授まで上り詰めたんだ、それも昭和になァ。下手に移動してもまともな研究はさせて貰えないと踏んだんだろうさ。何より他の人間の下につくことを嫌っているからなァ」
「ふむ・・・まあいいさ、本題に入ろう。通信機で俺達がここに残る旨を伝えたところ、通知が来たんだが・・・」
「おうよ、教授室へ行くかねェ、あそこにはプロジェクターがあった筈だ」
プロジェクターから白い壁に映されたのは今後の計画と指針、連携や通信のあり方について等々であった。
文面には想定以上に地方都市に留まりつつも研究を続けようとする機関も多い事、明日以降は暫くの間忙しくなるために問い合わせには暫く応対出来ないという事、今後とも地方の研究所と協力しつつ多方面から研究を続ける事等が書いてあった。そしてその中に面白い一文を発見した。
「へぇ・・・俺達の正式なコール名を決めて欲しい、かァ。教授、何かありますか?」
「私はどうでもいいわ、この大学名じゃ駄目なのかしら?好きにして頂戴」
「大学名が一番シンプルですけれど・・・僕達の多くは在籍してるわけでもないですしね。それに、この大学の名前、無駄に長いですし・・・」
集まった一同は暫く唸りながら色々な名前を出したが、どうにもパッと来る名前が得られなかった。疲れた様子の背の高い男が落ち着かない熊の様に歩いていると、壁にかかった紙に目が行った。
「周期表・・・か。」
男は周期表、ひいては元素、物質を作るものをシンプルかつ美しく並べ表現したものが嫌いではなかった。シンプルな一文字二文字のアルファベットが世界を作っている、そんな機能美が感じさせられるのであった。
「アルファベット・・・アルファベッツ。シンプルな、記号か。」
そんな呟きを聞いた目鼻立ちの整った男が皮肉気に、しかし楽しそうに笑う。
「フン、通信では頑張れとか今後も連携するとか書いてあったが・・・結局はそっちで勝手にやれという程度の内容だ。見捨てられ、多くは都市を目指し残された人間も少なく・・・ああ、ややこしく長い名前よりいいじゃないかアルファベッツっていうのも?俺達ももう、アルファベットで数えられるより少ない人数だ。」
少しの間、場はざわついたが疲れていた事もあり、このコードネームは賛成多数で可決された。
「おう、なら・・・ついでに俺達のコードネームも決めちまおうぜ!アルファベッツだろ俺達は?なら、アルファベットでいいじゃねえか!」
ゴーグルのような眼鏡をかけた大柄な男が笑いながら声をあげる。悪乗りが連鎖するように、映画みたいで格好良いだの、連絡時には便利だの、何のかんのと盛り上がっていく。
そして――――
「じゃあ、俺は『A』で行くぜ!言いだしっぺだしイニシャルとも合う!」
そう言い出したのは、ゴーグルのような眼鏡を掛けたゴリラのような大柄の男。地元の自動車関連の企業に勤めていた男の腰には工具類が吊り下がり、鍛えられた広い肩幅がより圧迫感を発していた。整備だけではなく工学の知識も豊富。
コードネーム :A
身体能力:9
精神力 :7
知識力 :6
器用 :7
モラル :5
運 :5
技能 :工学8、外国語3、情報学3、格闘5、運転9
特技 :機械弄り
性格 :豪放
「なら、教授は『B』でどうですかね?」
「何でもいいけれども何でかしら?」
「それは勿論ババ、いえ、BOSSだからですよ」
「・・・アメリカでも上司はよくそう呼ばれていたわね、まあ、それでいいわ」
中肉中背、身なりも雑で髪も伸ばしっぱなしの高齢に差し掛かった女。まだ男女の差が大きかった時代に研究者として最終的に教授という立場まで登り詰める。基礎研究が多かったためか大きな成果は無く、人格的にはあまり褒められないがそれでも知識量には一目置かれる女教授。
コードネーム :B
身体能力:2
精神力 :6
知識力 :10
器用 :4
モラル :1
運 :7
技能 :医学5、化学9、生物学10、外国語8
特技 :解析
性格 :偏屈
「次は『C』にしなきゃいかんのか?」
「うんにゃ、順不同でオケじゃね?」
「・・・『D』でいい。」
「ん?お前か、そりゃあまた何でだ?」
「・・・先日博士号を取得した。」
「ああ・・・さいで。」
前髪が目を隠すほど長い男が小さな声でぼつりと言った。この大学の別の研究室で院生として研究をしていた男、しかもウイルス学をメインテーマにしていた。家にも帰らずに研究室に泊り込み、体育館のシャワーを浴びてまた研究に没頭していた。どこか陰鬱な感じを与え、言動も快活さは無いものの論文は高い評価を得ていた。
コードネーム :D
身体能力:5
精神力 :6
知識力 :9
器用 :7
モラル :5
運 :5
技能 :生物学8、化学8、医学5、外国語8
特技 :研究
性格 :陰鬱
「あー、俺は・・・『E』でいいわ」
「ん?何か理由があるのか?」
「いいや、ただ目に付いただけ。」
「ええ?まあ・・・そういう決め方もあるかもね。」
やや長身で長髪の太いフレームを掛けた眼鏡の男が何でもなさそうに自分の名前を決める。とらえどころの無い性格であるが、音楽とゲームをこよなく愛する男であった。PCを自ら組み、オンラインでの投資や転売で生計を立てていた。
コードネーム :E
身体能力:5
精神力 :9
知識力 :7
器用 :6
モラル :3
運 :5
技能 :工学5、情報学7、医学3、生物学3、音楽7
特技 :ネットワーク管理
性格 :飄々
「フン・・・俺もイニシャルでいけば『K』だが」
「いいんじゃないか?お前は『クール』だしな。」
「おい・・・それなら『C』じゃないのか?」
「『K』でいいのさ、そっちの方が俺たちっぽい」
「ハッ、言ってろ。」
やや細身で平均的な身長だが、目鼻立ちの整った若い男がニヒルな笑みを浮かべながら人差し指で眼鏡の位置を整えた。学友時代にも成績はトップクラスで身体能力も高い、天才肌であった。ロボット好きであり、なるべくして大学で学びそのまま研究者となっていた。
コードネーム :K
身体能力:8
精神力 :9
知識力 :9
器用 :8
モラル :4
運 :9
技能 :工学9、情報学6、化学4、生物学3、医学1、外国語7、格闘2、スカウト4、運転6
特技 :天賦の才
性格 :冷静
「お前は『O』でいいんじゃないか?」
「え?そんなに運転得意じゃないけどさ?」
「いや、昔話題になった「電車マン」に似ている」
「ひどっ!え、ほんとにコレで決まり!?」
驚いたのは、中背小太りで眼鏡をかけた男。どこかオタクのような雰囲気をかもし出している。アニメーター、CG関連の仕事をしていたが激務に耐えかねて退社。ドローンやラジコンの操縦を趣味としており、撮影等で小金を稼いでいた。
コードネーム :O
身体能力:4
精神力 :5
知識力 :5
器用 :8
モラル :6
運 :3
技能 :工学4、情報学7、美術5、運転6
特技 :ドローン操縦
性格 :おおらか
「それじゃあ僕は『P』でいいかな?絵を描くのがすきなんだ。」
「よく山に行っていたしそっち由来のものでなくてもいいのか?」
「うん、まあ本職はそっちだけど。いいさ。」
小柄で朗らかな古臭い眼鏡をかけた男、野生動物とそのデッサンに深い造詣を持ち、頻繁に山に通い生態を調査する傍ら環境マネジメントで生計を立てていた。
コードネーム :P
身体能力:7
精神力 :8
知識力 :7
器用 :7
モラル :7
運 :6
技能 :生物学8、スカウト8、美術8
特技 :絵画
性格 :おおらか
「じゃあ、俺は・・・」
「お前は『S』だ。」
「え?勝手にきめる!?」
「学生の頃、束縛系の同人誌をこっそり持ってきていたこと、忘れんぞ・・・」
「やめてくれ!あれを悪ふざけで持ってきたことは黒歴史なんだ!!」
「目撃者が多すぎる、あきらめろ」
「ちくしょう・・・」
糸目の男が項垂れる。所謂中二病といったものを高校時代に発症してしまいこのことをからかうのが仲間内の鉄板ネタとなっていた。実際はそこまでサディズムに傾倒しているわけでもないのだが、机の上にそのような本を放置したことが目撃されてしまっていた。大学の文学部を経て、地元の小さな出版社に勤めていた。趣味でチューバを吹いていた。
コードネーム :S
身体能力:7
精神力 :8
知識力 :7
器用 :7
モラル :7
運 :6
技能 :文学8、音楽5、美術2
特技 :速読
性格 :小心者
「あー、俺は普通にイニシャルでいいわ。「T」だな」
「了解~。」
こちらも小柄な男ではあるが、人のよさそうな顔をしていた。トライアスロンを趣味としていたが、若くして結婚したが妻の不倫により早々に×1となった以降は自転車を走らせる程度になっている。冷凍食品の工場で品質管理をして生計を立てていた。
コードネーム :T
身体能力:7
精神力 :5
知識力 :6
器用 :5
モラル :7
運 :3
技能 :生物学5、工学1、運転7
特技 :自転車
性格 :おおらか
「はは、じゃあ僕は・・・うーん、史学の『H』にしようかな?」
「歴史好き・・・というか、それで生計立ててたもんなァ」
「ああ、こんなことになってなきゃ今でもそうだったと思うけど。」
「・・・大概そうさ。」
パンチパーマの中肉中背の男、地毛である―――いわゆる歴史マニアであり、博物館の学芸員として働いていた。歴史系の大学、歴史系の職業を得るのは並大抵の努力と運では無かった。意外とフィールドワークも多く、展示品や資料輸送の為の大型車両も動かせる。
コードネーム :H
身体能力:6
精神力 :7
知識力 :7
器用 :4
モラル :7
運 :6
技能 :文学6、考古学8、運転6
特技 :史学
性格 :天然
「そっちはどうする?」
「んん、え~っと少し悩むけれども、やっぱりイニシャルの『I』でいいかな?」
「自分が呼ばれて違和感が無きゃそれでいいさ」
「ありがとう、なら『I』で決めるよ。」
長身で痩せぎすの男が朗らかに言う。柔和な表情、優しげな声が何故か印象に残る。今までに一度も起こっている姿が目撃されておらず非常に生真面目なことで有名だった。
コードネーム :I
身体能力:7
精神力 :10
知識力 :7
器用 :4
モラル :10
運 :4
技能 :文学5、考古学1、外国語3、運転2、医学2
特技 :寛容
性格 :朗らか
「それじゃ、俺は何にするかねェ」
「フン、ならお前は『G』でいいだろう」
「『G』?ジャイアントか?身長なら確かに一番高いがなァ、体格まで入れれば俺じゃなくて・・・」
「いや、老け顔だからじじいの『G』だ、さんざん他の奴にも悪ふざけしてただろう、こんどは貴様の番だな」
「・・・ファッキン!まァ、いいさ。イニシャルはすで埋まっていたしなァ・・・ただ、せめてジェノサイドの『G』にしてくれ・・・」
「ジェノサイド?」
「ああ・・・俺達の目的はそうだろ?このクソッタレた病気を根絶することだ。」
「・・・応」
最も長身で中背の男が天井を仰ぎながら嘆く、勿論このおふざけに乗っている訳であったが、かつて事件に巻き込まれ顔の右側に負った大きな傷跡、瞼まで巻き込むソレは男の右目を細く鋭く見せていた。年齢以上に見えるのもこの傷跡が一役買っていた。言動や見た目に反し結構な小心者であり、義理堅い性格。だが稀に常識を逸する奇行に出ることもある。親の介護の為に仕事を辞職し、つい最近からは女教授、『B』の下で下働きをしていた。取り立てた能力はなく、運動神経も良くは無いが恵まれたフレームと努力でそれなりの力を見せる。敬語以外では語尾を少し伸ばす癖がある、この癖は自分を強く見せようとする表れだと自らを皮肉下に分析している。
コードネーム :G
身体能力:7
精神力 :4
知識力 :7
器用 :2
モラル :5
運 :1
技能 :生物学5、化学5、運転4、医学3、工学1、格闘1、スカウト1、音楽1、美術1、考古学1、文学1、外国語1、
特技 :狂気
性格 :小心者
A、B、D、E、K、O、P、S,T、H、IそしてG。アルファベット26音の半分に満たない穴開きだらけの12人。
むさい男達と花も枯れ果てた高齢者の小さな集団。
原因不明な病に侵されるセカイ。
絶望的な状況。
それでも、この時、この瞬間に確かに誕生した―――――
『アルファベッツ!』




