おしまい TYPE-B
男の孫は男の子でした。
ところがある日、突然、一言も話さなくなり、本しか読まなくなってしまいました。
お医者さんは自閉症だと診断し、転地療法をすすめたので、息子は孫を男に預けたのです。
男と孫、男同士のふたりだけの生活がはじまりました。
そんなある日、孫は夢を見ました。本のお化けに襲われる夢です。
本のお化けに殺されそうになった時、男が現れて助けてくれました。男が本のお化けを杖で殴り殺してくれたのです。
朝ご飯の時、孫は男の側に近寄りました。
孫は男をじっと見つめました。
男は孫に向ってニッコリとやさしく笑いました。
男と孫は以前よりほんの少しだけ仲良くなりました。
男の近所におばちゃんが住んでいました。
おばちゃんは世界中の子どもを愛していました。
そんなおばちゃんの耳に風の噂が聞こえてきました。
「男の孫は、男と暮らしはじめてから自閉症になった」
「男の孫は、男から性的虐待を受けている」
「男の孫は、助けを求めている」
風の噂なんて嘘っぱちです。
けれどもこの世界中の子どもを愛しているおばちゃんは、警察に通報してしまいました。
男は警察に捕まえられました。
男は暗く冷たい牢屋に入れられました。
男は警察官に取り囲まれて殴る蹴るの拷問を受けました。
そして男は死んでしまいました。
男が拷問を受けている時、孫は男の図書館で、世界中の子どもを愛しているおばちゃんに見守られながら、ヘルマン・ヘッセの「車輪の下」を読んでいました。
男が死んだその時、孫は本の中の一節を声に出して読みました。
一言も話さなかった孫がはじめて口を開いたのです!
その一節を書き写してTYPE-Bを終わりにしたいと思います。
「
ああ、われはいたく疲れたり。
ああ、われはいたく弱りたり。
さいふに一銭だになく、
懐中無銭なり。
」
TYPE-Bを最後まで読んで下さりありがとうございます。
男もあの世できっと喜んでいると思います。
(TYPE-B おしまい 最終更新日22年06月19日)




