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  作者: 紀ノ川
第3部 耳かき男
23/37

第1章 耳かき男、現る!

カリカリカリ

カリカリカリ

カリカリカリ

耳かき男が耳かきをしています


カリカリカリ

カリカリカリ

カリカリカリ

耳の奥の壁をかいています






 耳かきの気持ち良さは異常です!

 耳かきをしながら、よだれが垂れます。

 耳の奥の壁は鼓膜なのでしょうか?


 耳かきは、鼓膜という氷上のリンクを、耳かきというスケートで、滑る行為なのです。

 勿論、氷上のリンクをスケートの刃で傷付けたら大変です。とてもデリケートな部分なのですから。

 氷上のリンクの上を、隅から隅まで、端から端まで、滑り残し無く、スケートするのです。

 鼓膜の上を、隅から隅まで、端から端まで、かき残し無く、耳かきでカリカリ、カリカリするのです。


 押す場合もあります。耳かきで鼓膜をトントン、トントンと押すのです。

 鼓膜をより奥へと押し込む感覚です。鼓膜の位置をより奥へとずらすイメージです。

 その気持ち良さに我を忘れ、

「一体いつまで押し続けるのだろう?」

 と疑問を抱くまで押します。

 鼓膜の張力を耳かきを通じて楽しむのです。



 さて、お話をはじめましょう。


 耳かき男が小学低学年の時です。

 夏休みを過ごした田舎のおじいちゃんの家には耳かきがありませんでした。


 耳かき男は母親にたずねました。

「耳かきをせーへんとどうなんの?」

 母親は答えました。

「耳垢が勝手に出てくるんやで」

 まだ小学低学年だった耳かき男は、

「爪が伸びるように耳の中の皮膚も外に向かって伸びるのかな?」

 と思いました。

 それは皮膚というプレートに乗って、耳垢という大陸が移動するイメージでした。


 結局その夏は耳がかゆくてかゆくて我慢出来ずに、鉛筆を耳に突っ込んで耳かきをしました。

 夏休みが終わり、家に帰って、母親の膝の上で耳かきをしてもらうと、

「耳の中が真っ黒やで!」

 と彼女は驚きの声をあげました。


「耳かき男」が誕生したのは中学3年生の時でした。

 場所は授業中の教室でした。

 シャーペンの芯を耳に突っ込んだら抜群に気持ち良かったのです!


 今にして思います。

 シャーペンの芯で耳かきをしなければならないほど、耳がかゆかったのだろうか?と。






ツンツンツンツン

トントントントン

ツンツンツンツン

トントントントン

耳かき男が耳かきをしています


ツンツンツンツン

トントントントン

ツンツンツンツン

トントントントン

耳の奥の壁を耳かきで刺激しています


(最終更新日23年10月27日)

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