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  作者: 紀ノ川
第1部 孫を預かる男
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はじまり

 男は独りぼっちでした。

 男は本が好きでした。

 男はヘルマン・ヘッセの「車輪の下」を読んでいる時に思い付きました。

「家の一部を図書館として開放しよう」

 男の家には本が沢山あり、家は大きく明るく、夏は涼しく、冬は暖かでした。

 

 子ども達がやってきて絵本を読みました。

 男子中高生達がやってきてスポーツ漫画を読みました。

 女子中高生達がやってきて恋愛小説を読みました。

 大学生達がやってきて政治や経済の本を読みました。

 主婦達がやってきてゴシップ雑誌を手に世間話をしました。

 お年寄り達がやってきて新聞を手にコクリコクリと居眠りをしました。


 男は図書館で女学生と出会い恋に落ちました。

 男は結婚しました。

 男に息子が生まれました。


 でも幸せな時間はまばたきする間だけでした。


 戦争がはじまり、終わりました。

 景気が良くなったり、悪くなったりしました。

 地震や台風、火山や津波などの自然災害がおこりました。

 そしてまた戦争がはじまり、終わりました。


 男も変化しました。

 男の息子は成長し、やがて男と喧嘩をし、家から飛び出して行きました。

 男の妻は病気になりました。

 男は必死に看病しましたが、妻は死んでしまいました。

 男はまた独りぼっちになりました。


 長い年月が経ちました。

 男の図書館では今日も閑古鳥が声高らかに鳴いています。


 世の中の親も変わりました。

 男の図書館に子どもが来ても、昔なら、

「いつもお世話になっています。ありがとうございます」とお礼の電話があったのですが、今ではお礼の電話もありません。それどころか男の図書館に行った子どもは、親から、

「男から何か変な事をされなかった?男に体を触られなかった?男にイタズラされなかった?」と質問責めにされました。 


 そんなある日、男の息子が小学6年生になる孫を連れてやって来ました。

 男は孫を預かる事になりました。


(最終更新日22年06月21日)

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