突然の誕生日パーティー(前)
「ふぁ〜」
俺は布団の中で小さく伸びをする。
今日は土曜日。
のんびり寝ていても大丈夫。
もう一回寝てもへーきだけどどうしようかな。
ベッドサイドの目覚まし時計は11時を告げている。
…起きよう。
携帯のディスプレイを見るとメールがきている。
誰だよ土曜日の朝っぱらから。
って11時じゃあ昼か。
メールを見ると新着メール30件…
はぁ?
何これありえねぇ…
誰だよ
メールをとりあえずみると、みんな『えんじょいくらぶ』の先輩達からだった。
アーサー先輩以外の先輩には昨日メアドを教えてあるからきてもおかしくない。
でもこの量は異常だろ!!
内容は、アーサー先輩とマチ先輩以外は登録しといてって内容のメール。
で、あとの24件がアーサー先輩とマチ先輩によるもの。
っておかしいだろ!!
2人で24件って事は一人12件だぞ!
なんでそんなにメール送れるんだよ!
なんで俺こんな時間からツッコミしまくってるんだろう…
こんな調子じゃツッコミの天才になっちゃうよ。
ツッコミに天才とかバカがあればの話だけど。
2人のメールは見るのが怖かったから、まずは他の先輩達のメアドを登録する。
なんかみんなのメアド暗号みたい。
初期のやつから変えてないんだ。
珍しい人もいるもんだ。
『解けかけた糸に気付き〜♪』
携帯がなる。
げっ!またメールかよ
『マチ先輩』
ディスプレイにはそう表示される。
…これで25件か。
はぁ〜一体何?
恐る恐る内容を見ると『ユウまだ寝てんの?さっさと起きない』
はぁ?
土曜日だから好きに寝てていいんじゃないの?
そこまでくらぶで決められてるとか?
もしかして今日なんかあった?
残りの24件をあわてて見ると今日はオタ先輩の誕生日なのだそうだ。
だから、誕生日パーティーをする。
オタ先輩の家は一つ隣の駅の近くだから11時に駅に集合。(プレゼントを持って)
24件はそんな事と今家にいるかどうかというものだった。
今はもう20分。
………。
「うわーっ!!」
もうとっくに過ぎてんじゃん!!
まだ起きてから何もしてないから支度に10分はかかる。
駅までチャリで5分。
駅につくと35分にはなっている。
やばいいそがないと!
俺は自分でも驚くようなスピードで支度をする。
着替えて、顔洗って、歯を磨いて…
そのスピードは5分という自己新記録をうちたてるほどだ。
家には俺しかいないから良かった〜。
こんなにバタバタしてたら絶対うるさいもん。
「よしっ」
準備はOK!
でもプレゼントどうしよう…
オタ先輩と知り合って
だ今日で3日だから趣味とか全く知らないし…
それに今金ないから何も買えないし。
どうしよう。
ゲームのソフトとかでもいいかな?
別にいいよね。
オタ先輩ゲーム好きそうだし。
俺は急いでいらないゲームソフトを探す。
テトリスとかいらないよな〜あとぷよぷよとか。
俺は二つのDSソフトを見つけた。
これなら先輩も(多分)好きだよな。
偶然箱が残っていたのでソフトをしまって、ちょっとラッピングをする。
時間は35分。
プレゼント探しに10分もかけてしまった…
これ以上待たせたら殺される…
俺はあわてて家を出ると脱兎の如くチャリをこぐ。
駅には2分程でついた。
「はぁ…はぁ…」
ものすごく疲れたけど。
人間死ぬ気になればこんなもんなんだろうか。
駅は広いから探すのに時間かかるかと思いきや、『えんじょいくらぶ』御一行は売店の前に集合していたのですぐに見つかった。
いつも制服姿しか見ていないから私服は新鮮。
というか変な感じ。
制服以外にも着るんだ。
それは失礼だろうけど。
たっつん先輩とぐっち先輩はカジュアルな服装。
背も高いしすごく似合ってる。
カッコイイなぁ。
俺もあれぐらい身長が欲しい。
たっつん先輩はカッコイイアクセ付けてるし。
どこで買ってるんだろう?
ちょっとごつい感じだし。
つー先輩はなんていうのかな、さわやか〜な感じ。
白いTシャツとジーパン。
先輩らしくて似合ってる。
ナギ先輩は春らしく、薄いピンク色(サクラ色?)のワンピースを着ている。
長い髪はそのままにしてあっておしとやかな女の子の見本みたい。
清楚ってこういう時に使うのかな。
手にはみんな近くのスーパーのレジ袋を持っている。
もう買い出ししちゃったのかな。
「遅れてすいません!!!」
俺が声をかけると先輩達は怖い目で俺を見る。
「やっと来たか」
「本当…遅れるならメールしてよ」
「次は気をつけて下さいよ」
「まってるあいだにかいものできてよかったけどね〜」
たっつん先輩とつー先輩、ナギ先輩とぐっち先輩は顔は怒っているものの、本当はあまり怒ってないみたい。
「本当にすいません」
「甘い!」
ビシッ
「甘すぎ!」
バシッ
ほぼ同時に頭を叩かれる。
「いったー」
本気で叩かれたのか目茶苦茶痛い。
「ユウ」
「一つ言っておこう」
「「ごめんですんだら警察はいらないんだよ」」
バシーン!
ハリセンみたいな物で後頭部を強打される。
いきなりの衝撃のせいで意識が飛びかける。
やばいおじいちゃんが川の向こう側で手招きしてるよ…
「っておじいちゃんまだ死んでないし!!」
意識が戻ってそう叫ぶとみんなが笑っていた。
「「おじいちゃん?いきなりどうしたの?」」
あんたらが原因だよ、あんたらが…
「全く。いたた…」
連続で叩かれたせいですごく痛い。
どのくらい痛いかって?
そんなの言葉にできないくらい痛いに決まってんじゃん。
体験してみたらわかるだろうけど、そんな勇者がいたら俺はそいつを褒めたたえるよ。
「先輩何するんですか!」
「「……」」
「あ〜」
「言っちゃった…」
「言っちゃいましたね」
「おれはしらないよ〜」
何かマズイ雰囲気…
俺なんか変な事言った?
ぽん
アーサー先輩とマチ先輩が俺の肩に手をのせる。
極上の笑顔付きで。
「「とりあえず切符買ってきな?君の愚行についてはその後でゆっっくり話してあげるから」」
「は…はい」
コワイよ先輩…
急いで切符を買って戻ってくるとナギ先輩とたっつん先輩が哀れむ様な目で俺を見ていた。
つー先輩は笑ってるし、ぐっち先輩は…立ったまま寝てる!?
そんなすごい芸当出来る人いたんだ。
「買って来ましてけど」
「「じゃあこれよろしく」」
2人は黒い笑みを浮かべながらレジ袋を俺に押しつける。
しかもみんなが持っていたの全部。
「えっ!?ちょっとなんですかコレ」
ナギ先輩とたっつん先輩のあの目はこういう事かよ。
「何コレってレジ袋だけど?」
「そんな事も知らないの?」
そうそうこのお店のマークが何よりの証拠。
「じゃなくて!
何で俺がこんなに持たなきゃいけないんですか!」
「罰ゲームだよ」
「遅れて来たし、『先輩』って言ったしね。
まぁちょっとの間だから大丈夫。
そろそろ電車くるからホーム行かないと」
2人は駆けて行った…
よくわからん。
ノリについていけないし。
仕方なく持つけど重い…
こんなに買ってどうすんの。
「さきいってるね〜」
ぐっち先輩も2人の後を追うように行ってしまう。
薄情者ー!
まぁ俺が悪いんだけど。
「ごめんなさい」
「ごめんね」
ナギ先輩とつー先輩も行ってしまう。
そんなぁ…ナギ先輩とつー先輩は味方だと思ってたのに。
すると以外な事に
「…大丈夫か?」
たっつん先輩は袋を二つ持ってくれる。
「あ、ありがとうございます」
見た目ちょっとコワイけど優しいんだな。
「急ぐぞ」
早歩きでスタスタと行ってしまう。
「はいっ」
俺も四つの袋と格闘しながらホームへと向かった。
「セーフ」
駆け込み乗車ってあんまりしたことないけど、今日のこれは仕方ない。
疲れた〜
でっかい袋を四つ持つのってしんどいよ
「結構のんびりしてたんだね」
キレイな笑みを浮かべたつー先輩が俺の近くにやってくる。
「なっ!これでも急いで来ましたよ」
「でもおれらがやるときよかずーーっとおそかったよ」
あんたらは超人かい!
「じゃああなたならさっきどのくらいでホームに行けたって言うんですか?」
「ん〜ふつうにあるくのとおなじくらいかな?」
いや、それはおかしいだろ。
どんだけの力と、邪魔な袋をなんとかしたらそうなるわけ?
俺らって言ったけど、ナギ先輩は絶対そんなことなさそうだし。
「ナギせん…んぐっ」
先輩と言おうとしたらつー先輩とたっつん先輩に口を塞がれた。
「んー!」
なんでこんなことするんだ?
また『先輩』がどうのこうのってやつ?
「ユウ」
たっつん先輩が俺の耳元で囁く。
「次に『先輩』って言ったらお前大変な事になるぞ」
そう言うと手を話してくれた。
「くらぶの約束だから守ってね?」
ニコリとつー先輩は笑う。
相変わらずつー先輩は笑ってもキレイだけど、今の笑みには脅しが含まれてて怖い…。
「じゃあなんて言えばいいんですか?」
「僕だったら普通につーとか」
要は呼び捨てにしろって事だよね。
それだけなのになんで罰ゲームとかあるんだよ。
マジこのくらぶよくわからん。
「はぁ…」
「僕、約束とかきまりとか守れない人って人間のクズだって思うんだよね。
君がクズって言うわけじゃないんだよ?
ぶ員でありながらくらぶのきまりを知らなかっただけだから」
グサグサグサッ
つー先輩の毒の矢が俺に何本も刺さる。
見た目とは違って言う事キツイ。
「でも、これからは大丈夫だって信じてるから。
ね、ユウ?」
ねって言われても…
「ついたみたいだよ〜」
俺らを傍観していたぐっち先輩は、たっつん先輩を引きずって一足先に降りる。
俺も袋と再び格闘して電車を降りる。
その時、ナギ先輩とすれ違った。
「私、時間を守れない人って嫌いなんですよね」
ちょっと俺のほうを見たナギ先輩の顔は笑ってたけど、怖かった…
なんでこのくらぶの人達ってみんな美形で笑顔もキレイなのにこんな毒舌なの?
怒ってるのに笑ってるときなんかみんなすごく怖いし。
オタ先輩には悪いけど、オタ先輩誕生日パーティーなんかほっといて早く帰りたい。
早くもなんか挫折しそう…。
俺なんでココにいるんだろう。
なんで俺はマチ先輩なんかに一目ぼれしちゃったんだろう。
確かに女装して大人しくしとけば完璧なんだけどさ。
でも男だし、常にハイだし、重要連絡事項は俺にだけ教えてくれないし。
自分が嫌になってくる…。
俺はなるべくみんなと関わらないようにして後ろについていった。




