推しの精神異常が治らない
推し乱心事件から数日後。
ようやく退院できた日は休日だった、というか大怪我したせいで悪魔狩りのお仕事はしばらく休めと上司に言われてしまったので、もう何日かはお休みだ。
思っていたよりも有給が残っていたらしく、それを今消化してしまえ、と。
身体鈍りそうだからどっかでリハビリしなきゃな、と思いつつきっと自分のことなのでリハビリなんかはしないのだろうな、とも。
とりあえずお昼ご飯を食べに食堂に、ご飯食べた後は何しようかゲームでもやるか、と呑気に生姜焼き定食を食べていたら、自分の前に誰かがどかりと座り込んだ。
推しだった。
食べ物の類は持っていないようなので、すでに食べ終わったのかこれからなのか。
それにしても断り無しに強制的に相席するのはどうかと思う。
けどまあどうでもいいか。
「おひさー」
生姜焼きをごっくんと飲み込んだ後にそう言うと推しは「無事退院できたのか、よかった」と。
「うんそうね。無事に退院できたよ、しばらく有休消化しろ言われたからおやすみだけど」
「そうか」
「うん。そういうわけだから。ってかアンタ様、お昼ご飯は?」
「もう済ませた」
「ふーん」
なんて、割と日常的な会話が和やかに進んだ。
なんか意外だった、多少は引きずると思っていたのに。
推しの顔をチラリと見る、健康そうな顔色になっていた。
それならもう、無事にその精神状態も回復したのだろうと勝手に結論付けて味噌汁をずずずと。
「ああそうだ……お前のこと、諦める気はないから覚悟しておけ」
まだ結構アチアチだった味噌汁に苦戦していたら、そんな謎多きセリフを言われた。
なんのこっちゃと思っていたら名前を呼ばれる。
視線だけそちらにやると、推しはクソ真面目な表情差分になっていた。
「愛している」
って言われた。
味噌汁吹いた。
どうやら推しの精神状態は異常なままであるらしい。
そして麗しの双子のその片割れの『愛している』発言に周囲がざわ、ざわ、と。
ついでにぶっといドリルみたいな視線があちらこちらから私を射抜いていく。
多分来週迄くらいに無惨な死体で発見されるんだろうな、私。
味噌汁吹いた私を見て推しは一瞬驚いたような呆れたような表情差分になった後、イタズラが成功した子供みたいな顔に。
ああもう、そういう顔しないでほしい余計に好きになるから。
本当、勘弁してくれ。




