表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
召喚ゲーマー  作者: tamazo
第二章
22/26

22.ファーレンにて2

■22.ファーレンにて2■


 衛兵に教えられた道順で、シャドウたちは法力省にたどり着いた。


「ところでルルさん、アポとかってあるの?」


「アポ?」


 ルルが首をかしげる。


「あ、時間とか、シャルさんに合う約束してるか、ってこと。」


「いや、してないけど?」


「それって、まずくない? いなかったらどうするの?」


「僕にはシャルが仕事以外のことをしているところが想像できないんだけど。 むしろ、ここに泊り込んでても驚かないし。」


 シャドウはアチャーと頭をかかえるが、気を取り直して建物の中にはいっていく。 入り口には衛兵が控え、受付の係員にルルが招待状を見せると、すんなりと通される。

 指定された部屋へいくと、10人ほどの男女が忙しそうに立ち回っていた。


「あのー、すみません。」


 シャドウが身近の一人に声をかける。


「ん? なんでしょう?」


 その男は、書類から顔を上げて、シャドウたちを見渡す。


「え? エルフ? ひょっとしてルルさん?」


 ルルがうなずく。


「シャルさーん、ルルさんが来ましたー!」


 男が大声で部屋の奥に向かって叫ぶ。 すると、奥の書類の山から、シャルがひょこりと顔を出す。


「ルルー!」


 シャルが机の間を縫うようにかけてくると、ルルに飛びつき、頬擦りし始める。


「やあ、シャル。 それ恥ずかしいんだけど。」


「あら、照れちゃって。」


 さらにシャルがルルを振り回すように抱きしめる。


「シャルさん、お久しぶりです。」


 シャドウが苦笑いする。


「あら、シャドウさん。 いたんだ。」


「ええ、一応。 ルルさんの護衛頼まれたんで。」


 シャドウがさらに苦笑いする。


「うそよ、うそ。 ルルからの手紙で知ってたわ。 ちょっと散らかってるけど、とりあえず座ってよ。」


 シャドウたちは、部屋の片隅にある打ち合わせスペースのようなところに落ち着く。


「ところでシャドウさん。 そちらの女性達は? ひょっとしてハーレム? 隅に置けないわね。」


「違いますって。 ガビー法師とベリーです。 ガビーはリトランさんがらみで、ベリーは俺を狙ってる暗殺者ですね。」


「暗殺者? ちょっとあなた、自分を狙ってる暗殺者と一緒にいるの?」


 シャルの目が見開かれる。


「ええ。 いろいろとあって、行きがかり上。」


「まったく理解できないけど……。 でも、私も流れ者やってたから暗殺者はそこそこ見てきてるけど、あなた暗殺者にはみえないわね。 いままで何人暗殺したの?」


 シャルの質問に、ベリーが指を一本立てる。


「10人か。 そこそこね。」


 しかし、ベリーは首を振る。


「え? 100人? ちょっとすごいわね。」


 さらにベリーが首を振る。


「一人。 気絶させた人たちは含まない。」


「なあ、ベリー。 暗殺者って暗殺以外に気絶させる仕事もあんのか?」


 シャドウが首をひねる。


「いや、ターゲットの護衛は殺せとは言われてないのでな。 そっちは気絶させるだけだ。 さすがに10人とかはそこそこ骨が折れたが。」


「護衛10人を気絶させて、ターゲットだけ暗殺したのかよ……。」


 べりーが当然とうなずく。


「護衛10人気絶って、それフランコじゃないの?」


 ベリーがびくっと反応し、いつの間にか集まっていた人たちがざわつく。

 

「フランコ? 誰ですかそれ。」


 しかしシャドウだけは首をひねっていた。


「結構有名な悪徳商人よ。 あちこちから恨まれてたから、強そうな護衛をいつもしたがえてたのよね。 フランコは暗殺されたんだけど、護衛は誰一人しんでなかったのよ。 まさか、あれを気絶させるだけとか……。」


「ベリーって実は強いのか?」


 シャドウがベリーを見る。


「一応、宵の口では四殺の一人と言われていたな。」


「宵の口って、ミトがいたところじゃない。」


「なに? ミト殿をご存知か?」


 ベリーが身を乗り出す。


「まあ、一応面識はあるわ。 シャドウさんもね。」


 シャドウもうなずく。


「そうか、組織では裏切り者と呼ばれていたが、かなり強かったらしいな。 私もこの稼業は2年ぐらいなので、あったことはないのだが。」


「ん? お前暗殺者初めて2年ぐらいなのか?」


「ああ、そうだ。 もっとも、この2年も流れ者としての収入でなんとか食いつないでいたがな。」


「へー、暗殺者とかって、子供のころから訓練させられてるのかと思った。 ところで、ベリー。 お前なんで暗殺者やってんの?」


「ふん、借金のカタで仕方なくやってるだけだ。 誰が好き好んでやるか。」


 ベリーがぷいっとそっぽを向く。


「お前も借金かよ……。 いくらあるんだ?」


 シャドウはシャルを横目で見ながらたずねる。


「借りたのは1万ゲルだ。 かか様の薬代が必要でな。 依頼を受けてなんとか工面して、10日後に返しにいったら、100万ゲルとか言われた。」


「ちょっと待て。 なんで1万が10日で100万になんだよ。 ちょっと借用書見せてみ。」


 シャドウが手を出すが、ベリーは首を振る。


「そんなものはない。」


「お前な。 借用書もなしで金借りんなよ。」


「仕方がないだろう。 かか様の薬代が必要で、私はあのころ14ぐらいなのだぞ? そんなところまで気がつくと思うか?」


「ん? 14? じゃあ、お前今16なのか?」


 ベリーは涙ぐみながらうなずく。 そしてその場の一同は固まっていた。


「あ、お前20歳ぐらいかと思ってた。」


「ちなみにお母様のご病気は?」


 ガビーが尋ねる。


「ああ、しばらくしてよくなったのだが、鬼獣に襲われた仲間をたすけようとして、死んだ。」


「お前の母親も流れ者だったのか?」


「ああ、そうだ。 私はかか様から剣を習った。 3人でチームを組んでいたんだ。」


「両親とお前?」


「いや、私はとと様の顔もしらん。 元々かか様はとと様と二人で組んでいたらしいがな。 父様は私が小さいころに死んだらしい。なので、もう一人はかかの知り合いだ。 借金もその人に相談して借りたのだが。」


「そいつが犯人かよ。」


 一同が一斉にうなずく。


「今にして思えば、かか様が死んだのも、その人のせいだったように思う。」


「いや、ほぼ間違いなく、そいつのせいだろう。」


 さらに一同がうなずく。


「そいつの名前は?」


「ヘイグという人だ。 ちなみに暗殺者の仕事を紹介してくれたのもヘイグだった。」


 シャドウはため息をつくと周りの人たちを見渡す。


「借用書がない借金って、無効じゃないんですかね?」


 シャルをはじめとする、その場の全員がうなずく。


「つまり、ベリー。 お前、借金はないわけだから、暗殺者やめていいと思うんだけど?」


「そ、そうなのか? だがな、呪いの首輪がだな……。 裏切ると、首が絞まるのだ……。」


「また呪いかよ……。 でも、お前、首輪とかしてないけど?」


 べりーはそっと首輪を取り出す。 シャドウがそれを受け取ると、それはすっぱりと切り裂かれていた。


「外れてるの?」


 ベリーがうなずく。


「だったら、裏切っても首しまらないよな?」


 ベリーがうなずく。


「いつ外れたの?」


「シャドウ殿と、最初に戦ったとき。 突きがかすったときに切れた。」


「なのに、その後も俺をねらってたの?」


 ベリーはうつむいたまま、返事はない。


「違うのだ。 狙ったのは最初だけで……。 その首輪ははずしたものにも呪いがかかるらしい。」


「つまり、俺が呪われてる?」


 ベリーがうつむきながら、小さくうなずく。


「つまり、あれだな。 俺が呪われて苦しむさまを、にやにや見てようって魂胆か。」


「いや、決してそのようなことは。 私はだな、なんとかその呪いを……。」


 ベリーがおろおろする。


「すみません、私も教会で呪いについては一通り教わりましたが、そのような首輪のことは聞いたことないのですが。」


 ガビーは首をかしげていた。 その後ろで、シャルたちが首輪をいろいろ調べていた。


「二人で盛り上がってるところ悪いんですけど、これただの発信機よ?」


 シャルの言葉にその同僚たちもうなずく。


「ただね、ちょっとまずいことになりそうなのよね。 この首輪って、宵の口のメンバーが持ってた、でいいわよね。」


 涙目になっていたベリーがうなずく。


「その首輪がなにか?」


 シャドウの質問に、シャルの同僚が答える。


「これね、僕が法力研究所にいたときに作った試作品なんだよね。 ちょっと若気の至りで、こういう怪しい外見にしちゃったんだけど。」


「はあ。 じゃあ、それは呪いは単なる脅しで、実際には場所の把握ってか監視目的で使われてたってことですかね。」


「んー、いい推測だけど、監視はないかな。 こういう発信機と対応するレーダーって使い方によっては危険だから、普通の人は入手できないからね。 裏ルートなら流れてるのかもしれないけど。 でも、これはそもそも有効範囲が10mぐらいの発信機だから、これで監視とか、さすがに無理だと思うよ。 あと、これ壊れてるしね。」


 シャドウがプッと噴出す。


「で、さらに試作品っていうのは、表にでることはないんだよ。 つまり誰か関係者が法力研究所から持ち出さない限りは。」


「つまり、関係者が宵の口とかいう暗殺集団とつながっている?」


 シャドウが真顔になる。


「いや、さすがにそれはないかな。 むしろ無いと信じたいね。 どちらかというと、マンユ教団っていう邪神教団とつながってるって噂は以前からあるんだけど。」


「シャドウさん、ちなみにね、例呪い姫の件もマンユ教団がらみなのよね。」


「なんだか、嫌なつながり方してますね。」


 シャドウが苦笑する。


「あの、すまないが、その首輪は呪いとは関係がなく、私もシャドウ殿も大丈夫ということでよろしいのだろうか。」


 ベリーは、涙でにじんだ目をこすっていた。


「ええ、それは私が保証するわ。」


 シャルがベリーに微笑みかける。


「んじゃ、俺もベリーに狙われる必要がなくなったってことか。」


「そうかなあ、僕はそうは思わないけどね。」


 ルルがニヤニヤしている。


「というと?」


「命は狙われないけど、違うものを狙ってる……」


 ベリーがルルの口を、あわてて塞ぐ。


「ええ、困ったものですね。」


 ガビーもベリーに苦笑してみせる。


「ん? なに? 何を狙ってるの? ひょっとして俺の貯金とか?」


「じゃあ、シャドウさん、いえシャドウ君。 その辺の話はゆっくり飲みながらでも話しましょうか。」


 にやにやするシャルがシャドウの首に手を回した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ