トルミ⑥
「あははっ⭐︎あたしをいくら斬っても意味ないことを理解しなよ⭐︎」
俺は怒りに任せて何度もアンデラを斬り続ける。しかし、殺しても殺しても笑顔で蘇り、俺を嘲笑っている。
「レノン様!冷静になってください!怒りに囚われてはいけません!」
何かフレンが言っているようだが聞こえない。
「あーあ、つまんないよまおうさま。ガラデ平原でギーラを圧倒していた時の強さとは違う。怒りに任せて剣を振るうだけなんて、まるで初めての戦場で大事な人を殺された新米兵士のようだね。本当につまらない。あてが外れたかな。」
今までのアイドル口調から、落胆した口調へと変わった。俺が新米兵士だと。俺は魔王を倒して、国を救った英雄だぞ!
「フレンちゃんの声すら聞こえてないみたいだし。まぁいいや。カリウスちゃん、フレンちゃんの相手をしてあげて」
「……ふん」
今まで虚ろな目でただ立ち尽くしていたカリウスが動き始めた。
「よそ見する余裕があるのか!」
「はいはい、よそ見ね。別によそ見してようとまおうさまに殺される未来は来ないから。いい加減、怒りを抑えてみたら?って敵から冷静になれって言われてる時点で君の負けだって分からないの?」
「ぬかせ!!」
アンデラは俺の剣を一切避ける事はない。ましてや攻撃もしてこない。ただつまらなそうに、殺されては蘇るをくり返す。何度も斬りつけているうちに息が上がり、俺は肩で息をするようになった。
「いい加減諦めた?優しいアン様はまおうさまが冷静になるまで待ってあげるけど。あと何時間でも何日でも何年でも」
ひたすらに剣を振るっていたからか、少し俺は冷静さを取り戻しつつあった。俺の剣ではアンデラを殺すことは出来ない。それが理解できるくらいには。
「……すまない、俺が冷静でなかった。」
「本来なら、フレンちゃんが何かして、まおうさまが目を覚ます展開が欲しいところだけど、今の状態じゃ無理そうだね。あまりにもつまらないし、仕方ないから許してあげる。」
「しかしアンデラ。お前を殺す事は諦めるつもりはない。」
「いいね、諦めの悪いところはあたし好みだよ⭐︎さっきも言ったけど、あたしは死なないから無限に時間があるし⭐︎長い時間を一緒に過ごそ⭐︎そして、まおうさまが死んだ時には、あたしのメンバーの一員にしてあげるから⭐︎」
アンデラの顔に笑顔が戻った。悔しいが今の俺には、アンデラを殺す方法は思い浮かんでいない。死なない敵を殺す方法なんてあるのか。冷静になって周囲を見渡すと、兵士アンデッドや住民アンデッドの動きがおかしいことに気がついた。
今まで俺たちに向けて飛びかかっていた彼らだったが、なぜか止まっているのだ。
「アンデラ、なぜアンデッドを動かさない?」
「……いざという時に備えてるんだよ⭐︎」
どうも歯切れが悪い。明らかに様子がおかしい。
「まさかとは思うが、動かせないのか?」
「そ、そ、そんな訳ないじゃん⭐︎証拠にほらっ⭐︎」
地面にいるアンデッドの1人が飛んだ。たった1人だけ。しかも目の前のアンデラから一瞬魂が抜けたかのように見えた。
「……いや、明らかにおかしいよね?」
「……もん」
「あ?なんだって?」
「だって、メガホン壊れちゃったんだもん!」
あー、なるほど。合点がいった。俺はアンデラが使っていたメガホンのことをアンデッドを強化するための媒介だと思っていたが、あれで指揮もしていたのだ。だからメガホンがない以上アンデラにアンデッド集団を動かすことが出来ない。ただ地面を唸りながら歩いているだけの低能アンデッドになってしまっている。が、1つおかしい点がある。
「なぜ、カリウスは動かせているんだ?」
メガホンがない状態のアンデラはアンデッドを動かせない。しかし、カリウスは動き、フレンと戦っている。しかも、文官だったカリウスからは想像の出来ない力を発揮しているように見える。
「それは、アンデッドの作り方に差があるからだよ⭐︎」
「アンデッドの作り方?」
「そう!アンデッドは2種類作り方があって、一つ目は死者を媒介に作ること、そしてもう一つは生者を媒介に作ることだよ⭐︎カリウスは後者だね⭐︎」
「生者をアンデッドに…?」
「あー、そんなことできるのって思ったでしょ?アンデラは嘘つかないんですけどー。ま、生者アンデッドを作成する機会は少ないからあまり知られていないけどね⭐︎」
もし、アンデラが言うことが本当だとして、生者アンデッドが普通のアンデッドよりも強い理由はなんだ。
「考えてるところ悪いけど答えはね、生者はまだ成長の余地が残っているからなんだよ⭐︎死体に成長を求めるのは、無理な話でしょ?だけど生者は、成長出来るだけじゃなくて、意識しても発揮できていない全力をあたしなら発揮させてあげられるの⭐︎だからカリウスはフレンちゃんにも勝るくらいの力を手に入れているんだよ⭐︎」
先ほどから明らかに防戦一方のフレンを見れば、アンデラが言っている事は嘘ではないと分かる。本来、戦闘においてカリウスがフレンに勝てる要素はなかったはずだ。それなのに、フレンは明らかに防戦一方になっている。カリウスがそれほどの力を手に入れたということだろう。
「なるほど。ならばなぜ生者アンデッドを多く作成しない?その方が、効率よく兵士を増やせるのではないか?」
俺の言葉にアンデラは舌を出した。
「それができたら苦労はしないよーだ。生者アンデッドは、成功率が低いし、あたしの生命力を多く持っていくんだ⭐︎だから、良質な個体が手に入らない限り、生者アンデッドは作らないんだ⭐︎」
「アンデッドに生命力?死んでいるのに?」
「アンデッドにも活動するためには生命力が必要なんだよ⭐︎だから、あたしの様な上位アンデッドは、身体を変える事で生命力の維持をするんだ⭐︎」
「……生命力を維持出来るんなら、生命力をもっていかれる事は大して問題じゃないだろ」
「あ、そっか⭐︎」
進化個体とはいえ、さすがアンデッド。まさかそんなことに気づいていないとは…
「ま、でも失敗する方が多いし、非効率的だからあんまりしないのには変わりないね⭐︎それに、生者アンデッドの連続作成は、最悪消滅の危険も伴うからね⭐︎でも、カリウスのように成功したら…ほら、そろそろ決着がつくよ⭐︎」
その言葉と同時に、爆発音の様な音がした。そして、衣服がボロボロになったフレンが、地面へと落ちていく。
「フレーーン!!」
俺は、急ぎフレンの元へ飛んだ。




