第一話 やり直し令嬢の復讐
「——よって、これよりミレーゼ・アルデリアの死刑を執行する!」
「死刑囚ミレーゼ・アルデリアはアンデス第二皇子との婚約破棄をきっかけにその父であるラードン皇帝陛下を暗殺した。」
あぁぁ、私は一体、どこで道を踏みはずしたんだろう……。私はやっていない、なんて言っても今更私の話なんて誰も聞いてくれないわね…。
「お義姉様…うっ、どうしてあんなことっ…!」
結局最後も、こんな私をずっと慕い続けてくれていたローラにも迷惑をかけてしまったわ。
「アンデス殿下!どうかっ、どうか!最後にもう一度だけっ……お義姉様と話す機会をいただけませんかっ…!気持ちにっ、ケリをつけたいのです…」
「…っ!ローラ!!君はなんて優しいんだ!君もあんな姉のせいで色々と大変だっただろうにっ…。もちろん良いだろう!」
ローラが死刑台へ近付いてくる…。ローラ、貴方は最後までっ…!あぁ…私の唯一の誇りだわ。
「うぅっ…お義姉様っ…」
「ローラっ……」
「うふふっ、惨めで可哀想なお義姉様っ…」
ローラが耳元で囁く。
「……ローラ…?」
「あははっ!本っ当に面白い!ねぇお義姉様…?この際だから教えてあげる。皇帝を殺したのは…わ・た・し♡」
「なっ!?ローラっ…!どういうことっ……!」
「えぇ?ふっ、だから言ってるじゃない。皇帝は私が殺したんだってば。……でもねぇ…?私は可愛くて明るくて、皆に求められてる存在。それに比べてお義姉様は?ふっ、優秀だけど愛想がなくて男みたいだしぃ、おまけに今はアンデス殿下に婚約破棄された惨めな女…でしょ?あは!お姉様ったら本当に可哀想…!」
「どういうことっ…?何がっ、言いたいの…!」
「だぁかぁらぁ〜私がお義姉様に濡れ衣を着せたの。」
「私に罪をなすりつけたのっ……」
「なすりつけただなんて人聞きが悪いわ。私はこの国の未来の第二皇子妃として不純物を排除してあげただけ♡この世界をより美しく潔白にしたのよ」
「……っ!貴方まさかアンデス殿下と婚約を…!」
「あら?ふふっ、言ってなかったかしら?私の第二皇子との婚約。その祝いにお義姉様は死んでくださらない?あぁ、お義姉様に拒否権なんか無かったわね。」
は…?ローラが殺した?…皇帝陛下を?その上私に罪をっ…!
「どうしてっ…!」
「み〜んな邪魔だったのよ。お義姉様も皇帝陛下も。だからこの世界から消してあげたの。次はお義姉様の番…。ふふっ、バイバイ…お義姉様」
「ローラ……!!」
ローラがアンデス殿下の隣に戻る。
「うっ…お義姉様。今までっ、ありがとう…!アンデス殿下っ…!」
「大丈夫だ。……縄を切れ!」
ズサッ……!!
「………はっ…!」
何、これ…?あぁそうだ。私ローラに騙されて…。ここは?………っ、私の部屋?!どうしてっ!まさかっ…夢?!でも首を切られた感触はあった…。
どういうこと…?
ガチャッ…(ドアが開く)
「おはようございます。ミレーゼお嬢様。…あら、もう起きていたんですね。」
「……え?あぁ、おはよう」
彼女はシャール。私の専属メイド…なんだけど…。
「起きているのならぼけっとしていないで早く準備をして下さい。今日はお嬢様も待ちに臨んでいた日でしょう。」
…威圧的な視線に強い口調。それもそうね、私はこの家じゃ邪魔者だもの…。
「お嬢様!聞いておいでなのですか!!」
「はい?!えっと………?」
「はぁ…今日はミレーゼお嬢様の高校の入学式でしょう!しっかりして下さい!」
「え…?!今日が私の、高校の入学式…?!……ちょっとまってシャール、ということは今日は……え!十年前?!」
「はぁ…何を言ってらっしゃるのです…遅れますよ!」
改めてカレンダーを確認する。やっぱり、帝国歴726年の4月7日…。
私が処刑されたあの日が帝国歴736年だもの。十年前に戻ってきたんだわ…!でも…どうしてっ…?
「お嬢様、食事の準備が整いました。旦那様がお呼びです。」
「そう…。分かったわ。」
軽く髪を整えて事前に渡されていた高校の制服に着替える。
はぁ、ずっと前からそうだけど、私には専属メイドがいながら私の世話をするメイドは一人もいない。
「お待たせ致しました、お父様」
「遅い!!呼ばれたのだから早く来なさい」
「……申し訳ございません」
後からローラが入ってくる。さすがローラ…。華やかな格好に派手なアクセサリー。侍女までこの場に送りに来るとは…。
「お父様!遅れてしまいましたわぁ。申し訳ございません…」
「大丈夫だ、ローラ。今皆んなそろったところだからな。」
「はぁ…!それなら良かったです〜!」
…本っ当に対応が違う。実の娘は私だというのに。いや、今となってはこの人の愛情などどうでもいい。
私は幼い頃に母親を亡くしている。お父様が今のお義母様と結婚した時の連れ子がローラだ。
ローラは血の繋がっていない私のことも家族と思い仲良くしてくれている、そう思っていたけれど、それもきっと全部嘘ね…。
朝食を食べ終わると、私は一人で学校へ向かう。もちろん周りを歩く新入生徒たちは両親や侍女と一緒。
別に保護者の同伴は学校側で指定されているわけではないが、毎年ほとんどのご両親が入学式の日には学校まで送っていく。
そういえば、もし本当に十年前に戻ってきたのだとしたら……やり直せる!!このまま一度目の人生のように理不尽に処刑されてたまるものか。
私を無能と、家の恥だと言った家族やメイド達も…私を「悪女」と呼んで処刑したこの世界も…そしてなにより、私を利用し続け、最後には不純物と吐き捨てたローラも……。まるごと変えてあげる。もう誰にも「空っぽの無能」だなんて呼ばせないわ。
ふっ、今は悪女になってもいい気分ね…。
ねぇローラ、お父様、お母様、いや世界中のよく調べもせずにローラに騙されて私を罵った者たち…。そんなに「悪女」と呼びたいなら呼ばせてあげるわ。
貴方達には、私が味わったものよりも地獄を見てもらいましょう。




