妖精“浦島”②
「俺の名前は浦島太郎だ」
「浦島太郎…。あの浦島太郎……?」
その妖精から聞いた話をまとめると、彼が今ここにある理由はこうだ。ある日浜辺で子供達にいじめられていた亀を助け、そのお礼に竜宮城へ招待された。そこで、乙姫様や海の生き物たちと楽しい時間を過ごしたが、母のことを案じて家に帰ることにする。亀に乗って陸へ上がったが、帰ってきたのは太郎のいた時代から遠い未来、つまり現代で、乙姫様から「困ったら開けなさい」と言われ渡された箱を開けると今の妖精のような姿になっていた。たぶん、結やこれを読んでいる皆さんがイメージしているあの昔話の浦島太郎であっているのだろう。太郎は、ひと月ほど前にこの時代にやってきたらしい。見るもの聞くもの全てが新しく、この時代に慣れるまで大変だったという。
「それで、俺は今、元の時代に帰る方法を探してるんだ…」
「元の時代に帰る方法か…。うーん……」
(タイムマシンつくるか?それともこの世界のどっかに元の時代に帰るための装置的なのがあるのか…?)
考えても、今のところ答えは出そうにない。
『コーン、コーン』
リビングの振り子時計の鐘の音が聞こえた。
「もう日付またいじゃったし、今日はもう寝るか、太郎も僕の布団でいい?」
「寝床まで…。ほんとにいいのか…?すまない…」
風呂や歯磨き、寝るための準備を済ませ布団に入る。
(まぁ、明日また考えればいっか……)
結の目が覚めたのは、本来であればまだ外は暗い時間だった。隣ではまだ太郎が寝ている。カーテンの隙間から強い光が差し込む。だが、それは気持ちの良い朝日ではなかった。
「まだ朝じゃないよね…、なんでこんな明るいの?」
結はカーテンを開けて外を見る。すると、正面に見える雲の上に人影のようなものがあった。
「なに…、あれ……?」
すると、それはすぐに消えてしまった。
「見間違い…、夢でも見てたのかな……」
しかし、それは夢でも見間違いでもなかった。
突然、部屋の床におおきなまほうし大きな魔法陣のようなものが出現する。そしてそこから、何人かの人が出てきた。いや、人ではない何かが。頭が魚のような形をしていた。手には槍のようなものを持っている。
「誰…?え…?……………」
驚きと恐怖でうまく声が出せない。
状況が飲み込めないでいる結に向かって突然、それらは襲いかかってきた。




