不思議な妖精(?)
『むかし、むかし、あるところに浦島太郎という心やさしい漁師が住んでいました……』
日本人なら誰もが知っている童話、浦島太郎。
簡単に言えば、漁師の浦島太郎がいじめられていた亀を助けて竜宮城へ行き、乙姫様となんやかんやするお話である。
『浦島太郎はさっそく亀のこうらに乗ると海の中に入っていきました…』
ある1人の青年が、この浦島太郎の物語を読んでいた。いや、正確には読み聞かせをしていた。彼の名前は浦月結、高校1年生である。彼は今日、自治体が主催するボランティア活動で、図書館で地元の保育園や幼稚園の園児に本の読み聞かせをしていた。別に、子供が好きだとか、ボランティアに興味があるだとか、そういう理由があるわけではなかった。高1の夏休み、課題も片付け、やることがない。何か暇つぶしになるものはないか、そういえばこの前学校で夏休みのボランティア活動のチラシをもらった。せっかくならやってみようかな…。彼にとってはそんな程度だった。
この時、彼はまだ知らなかった。このなんとなくの気持ちが、彼の夏を大きくかえるナニカとの出会いにつながることに…。
読み聞かせの片付けを終え、図書館を出る頃にはあたりはもう暗くなっていた。人通りの少ない暗い道を歩いてゆく。そして、あと5分ほどで家に着く。そんな時だった。道の真ん中にナニカが落ちている。見た目はぬいぐるみのようでも、少女アニメに出てくる妖精のようでもある。両手の平を合わせたくらいサイズで、持ってみるとふわふわしていた。
「なにこれ、ぬいぐるみ…?」
「俺はぬいぐるみじゃなぁい!」
「…!?、しゃべった!!??」
驚いた拍子にぬいぐるみを離してしまった。しかし、それはその場にとどまったまま、地面に落ちなかった。まるで浮いているかのように。というか、浮いている。
「突然離すなよ。落ちるところだったじゃないか」
「ちょっと待って、え?ゑ???は?」
「まぁ、驚くのも無理はないか…」
「は、何?人?じゃないか。ロボット?誰?何者?どこからきた?触っていいやつ?」
「待て待て、質問は1つずつ…、うっ……」
突然、それは力を失ったかのように地面に落ちた。
「え、どうした??何が起きた???」
「すまん、腹が減った…なにか食べ物をくれないか……」
同時にそれのお腹から大きな音が鳴る。
「とりあえず、うちくる…?」
「すまない…」
結はそれを抱え、再び家路を歩き出した。ここから、結とそれの短い夏の大冒険が幕を開けた。




