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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.11 裏戸のスキッド
148/195

第148話 地下工場の夢 〜3年前の出来事(6)




 地下〝工場〟の奥。


 「すごい」


 ミルは、息を飲む。


 特大のエアカー、というより、ちょっとした(ハウス)である。10人、いや、15人は乗れる。


 エキュール。トップブランドの超高級エアカー。贅を尽くした外観と内装。それをクーゴが腕によりをかけて、修理し磨き上げ、丁寧に整備してある。


 スキッドが、後部の扉を開ける。


 覗き込むミル。


 「わあ」


 広いスペース。キングサイズのベッドがあった。一流ホテル並みの豪華さ。スクラップの積まれた地下〝工場〟に、全く似つかわしくない光景。


 「さ、入って」


 スキッドに促されて、ミルはエキュールの中へ。



 ◇



 2人は、ベッドに並んで腰を下ろした。


 こんな立派な空間は、いつぶりだろう。いや、初めてかもしれない。ミルは、思った。そして隣にいるのは、流れるような銀髪を逆立たせた燃えるように赤い瞳の美少年。少女の頬が、ピンクに染まる。


 「ここが、あなたの寝ぐらなの?」

 

 「寝ぐらの1つだ」


 スキッドは言う。


 「俺は、あちこちに寝ぐらを持っている。こういう稼業だからな。いつでも潜り込める場所が必要だ。多けりゃ多い方がいい。今日は、1番上等なところにお前を案内した」


 「ありがとう」


 心を浮き立たせたミル、にっこりとする。

 

 「地下の工場が、極上のホテルだなんてね。びっくりした。でも、潜り込めるところって? 追われることも、あるの?」


 「ああ。そりゃそうだ。この(アンダーグラウンド)じゃ、いつ何が起きるか分からないんだ。不意打ちを食うなんて、当たり前さ。やばくなったときのことを、先に考えておく。それが大事だ。だけど、みんな調子のいい事しか考えない。うまくいっている。もっとやってやろう。それしか考えない。それがダメなんだ」


 「へえ」


 ミルは、感心する。


 「スキッド、あなた、しっかりしてるのね。同じ歳なのに」


 「そうでもないさ」


 スキッドは、肩をすくめる。


 「俺はまだ、ただの用心棒だからな。これから一家(ファミリー)に貢献して、出世しなきゃ」


 誰かに責任を持てる。そういう人間になる。スキッドは、初めて考えていた。


 「ねえ」


 ミルは、瞳を輝かせている。


 「これで外を走れないの? これで一緒にドライブできたら、すごく素敵」


 「それは、ダメ」


 と、スキッド。


 「これは売り物だからな。表には出せない。それに外を走って ちょっとでも疵つけたら、クーゴの奴、本気でブチ切れるぜ。あいつにとっちゃ、自分が手入れした機械(メカ)は、自分の兄弟みたいなものだからな。雑な扱いには、我慢ならねえんだ」


 「あらら」


 ミル、慌てて座り直す。


 「じゃあ、綺麗に使わなきゃね」


 盗難車横流し品である。こんな目立つエアカーで、外を飛ばすことは、絶対にできない。


 でも、いつか。


 スキッドは思った。


 本当に自分のエキュールを持って、ミルと、思いっきり外を飛びたい。街の誰をも見下ろしながら。


 ミルも同じだった。


 クーゴが丹念に手入れした高級エアカーのベッドで、スキッドと2人で外をドライブする夢を見ながら、眠りに落ちたのだった。


 ミルのすぐ側には、ずっと微笑んでいるスキッドが、いるのだった。



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