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双棍のトラベラー  作者: コルミ
影の放浪者
201/201

生への執着

 その後、サニアはガルシアの魔法についてはなるべく触れないように雑談を続けた。

 ガルシアも雑談しながら慎重に壁を上り続け、ついに地の割れ目から脱出した。


「サニア!」「サニアさん! 無事で良かった!」「ピー!」


 カルドラとアイーシャとソラが同時に声を掛ける。


「ご心配お掛けしました。ガルシアさんのおかげで助かりました」

「ガルシアさん…! 本当にありがとうございます…! 貴方も無事で良かったです…!」


 ガルシアの手を取り泣きそうになりながら感謝を口にするアイーシャ。

 しかしガルシアは素っ気なく返事を返す。


「…できることをしただけだよ。運が良かった」

「そうなんですね! 尚のこと良かったです!」


 ガルシアの軽い返事をもろともせずアイーシャが握った手をぶんぶん振る。

 それに対しガルシアは無表情だ。


(あれは…どういう感情なんだ…?)


 その不思議な光景にカルドラは首を傾げる。しかしその平和(?)な空気を遮るようにソラ突然が慌て出した。


「ピ!? ピ! ピピー!」


 ソラはビュンっとガルシアの頭に乗るとすぐに魔力を流し始めた。


「ソラ? どうしたんだ? ……ってガルシア!? めちゃくちゃ顔色悪いぞ!? 大丈夫か!?」


 無表情でソラに魔力を流されているガルシアは良く見ると今にも倒れそうなほど顔が真っ白だった。


「…!!! もしかして…!!!」


 何かに気づいたサニアが魔力視でガルシアを視る。すると彼の魔力はほとんど残っていなかった。

 そう。"死ぬ寸前"だったのだ。


「ガルシアさん!!! 貴方なんて無茶を…!!!」


 そう言ってサニアもガルシアに魔力を流し始めた。

 そんな、慌ただしく動く3人を見ながらガルシアは思う。


(まだ…、先があるのか…)


 そしてガルシアの意識は闇に飲まれていった。




 昏睡したガルシアを休ませるべく、近くで野営の準備を整えた3人。ある程度魔力を貰ったガルシアの顔色は随分良くなっていた。

 そんな彼の近くで焚火を囲み一息つき、ガルシアについて話し合う。


「倒れる直前まで平然と立ってたけど、実際どんな状態だったんだ? 辛いって話は良く聞くけど、おれ魔力欠乏は経験が無いからどんな感じかわからないんだ」


 ソラを撫でながらカルドラが尋ねる。カルドラは魔力核に展開された魔法陣の影響で使用魔力に制限が掛かっているため、魔力欠乏とは縁遠い存在なのだ。


「んー…、表現が難しいですね…。身体に力が入らなくなる、平衡感覚が曖昧になる、意識が朦朧とする。挙げるとこんな感じですけど、これを意志の力でねじ伏せて立ち続けるのは普通はできません。もちろん私もできません」

「魔力欠乏って意識が勝手にどこかへ飛んでいくような感じなんですよ。何かに集中してれば意識は保てますけど、さっきのガルシアさんみたいに平然と立って歩いて会話してなんて、私もできません」

「アイーシャがそう言うってことは相当なんだな…」


 基本的にメンタルが強く我慢強いアイーシャ。そんな彼女でも魔力欠乏の症状は耐え難いもののようだ。

 しかしガルシアはその状態で平然と行動していた。ソラがいなければあのまま死んでいただろう。


「地割れの中でガルシアさんといろいろ話しましたけど、彼は周りに誤解を与えやすい性格をしてるみたいです。私は最初、ガルシアさんは人と関わるのが嫌いな方なのかと思ったのですが、どうもそういうわけではないらしくて…。こちらも表現が難しいですね…」


 ガルシアと会話してわかったことを2人に共有しようと試みるが、どうにも言語化が難しく悩むサニア。


「人が嫌いなわけじゃないってことだろ? 良いことじゃないか」


 カルドラがざっくりまとめるとサニアが首を横に振る。


「でも距離を取ろうとするんですよ。まるで何かに怯えているように。そして生きる意思が希薄な感じがします。そのくせ他人のことは無茶してでも守るんですよ? 私にはよくわかりません…」


 地割れの中で彼が言った「覚悟を保てない」や「諦めてしまう」という言葉を使わないように彼の心境の代弁を試みるがやはり難しい。今まで全力で生きてきたサニアには、彼の生への執着の無さは理解不能だった。


「……生きる意思が弱いからこそ無茶ができてしまう…とも考えられますね。自己破壊的とでも言うのでしょうか…」

「うーん…、無茶はダメだよなぁ…」

「「カルさん???」」


 カルドラの発言に2人が同時に突っ込みを入れる。

 無茶の申し子のようなカルドラが言ったのでは説得力の欠片も無い。


「いや、おれは死ぬ覚悟はしてるが死ぬつもりは毛頭無いぞ? 常に生き残ることを最優先に物事を組み立ててる。皆ともっと旅を続けたいからな」


 自信満々で言い切るカルドラの言葉を聞き、アイーシャとサニアは顔を見合わせる。そして呆れたように微笑み合うのだった。

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