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1.魔王国への提案

本日から連載再開です。引き続きよろしくお願いいたします。

1.魔王国への提案


 そんなこんなで季節はもう冬……冬の到来を待たずに6月と7月(元の世界では9月と10月)に、それぞれ男の子と女の子が生まれた……というか生まれていた。これで俺も20にして早4人の子持ちとなった。


 選挙戦の真っただ中であったことと、当選してからも元老院化のために忙しく動き回っていたので帰っている暇がなく、年末になり元老院の議会の閉会中にスーパー堤防の住居ビルへ帰省し、半年近く待ってようやく対面できた。元気に2人の子が生まれたことは手紙で知っていたが、やはり対面できると感動もひとしお。


 そうしてついに昨年北の山脈の診療所にお願いした、消毒を強化してからの開腹術の結果が送られてきた。世が世なら……お正月の3が日明けの4日のことだ……。ハルシューさんも議員活動で後半は忙しくはなったが、それでも年間10件ほどの頻度のため、都度帰省しながら開腹手術を行っていたのだ。


 最終結果が分かるまでは公表は避けたいと、議会で会っても途中経過を教えてくれていなかったので、ここでようやく1年間の試行結果が明確となる。


「えーと……なになに……おおっ……凄いぞ……。」


「何がすごいのですか?」

 事務長が届いた手紙の内容を黙読し、驚嘆の声を上げる。どうした?口調から言うと、吉報のようだが……。


「ああ……やはり消毒徹底の効果はあったようだな……生まれた子供も一旦沸騰させてから冷ました湯で体を洗ってやるようにして、施術後の病室も消毒を徹底した結果、開腹手術は昨年実績で8件あり、その8件全てで母子ともに健康体として無事退院したとあるぞ。


 こんなことは秘伝の術の継承の歴史上、初めてのことと書いてある。術式の失敗の多い夏場でも、術中の術者の汗を介助役の介護士が徹底してふき取るという、新たな見識も生まれたとある。


 消毒を徹底することによる効果があったと、認めても構わないだろうと書いてあるぞ。


 既に王都から交代要員の3組の産婆と治療師が送られているようだな……こちらから派遣した産婆と治療師も既に帰途についているようで、恐らく明日か明後日には帰着予定のようだ。


 今度は西域の都市や南方の都市と旧国境の町からの産婆や治療師の修業を、1年間依頼する予定という事だ。どうやら成功率が高いのであれば、万一の際の開腹術を全国展開するよう、法整備を元老院に提出するようだ。これで出産に対する不安感や恐れと言ったものが解消されるといいのだが……。」


「へえ……やりましたねえ……修業した産婆さんや治療師が、このスーパー堤防の町でも、難産の場合は開腹術を行うという事ですね?だったら本格的な診療所というか、病院も作りたいですよね。」


「ああ……そうだな……現状出産時は妊婦の家へ産婆や治療師が赴くという、いわゆる訪問出産が主体だが、開腹術を行うとなると専用の手術室や入院施設が必要となるからな。現状産婆や治療師が待機していて妊娠初期の診断を行う、待機小屋では不向きだろう……すぐに施設の建設に乗り出すとしよう。」


 王都とも連絡を取り、共に開腹術と入院用の病院を建設することに決まった。ログハウスならすぐにできるのだが、隙間風が多く菌の侵入を防ぎにくいという理由から、3階建ての鉄筋コンクリートで建設することに決まった。


 建設期間が長い事から、暫定的に入居者が少ない新築の住居ビル1階の売店を食堂の中に移設して、売店の場所に仮の診療所を設置することとした。売店は食堂の利用者が少ないことから今の所は問題なし。

 これで逆子などの難産の場合は、いつでも開腹手術が行える準備は整った。



 年が切り替わってすぐに、サッサーとアーミナの妊娠が判明した。特に避妊など行ってはいなかったのだが、3ヶ月と4ヶ月目なので2人を連れだって、王都の議員会館に宿泊していたころの子だよなあ。


 アーミナは逆子が心配されるのだが、万一の場合の開腹術という選択肢が増えたのは、大変に心強い。


 帝王切開手術は既に百例を超え……開腹術は前例がないため、どうしても仕方がない難産のみに行われているのだが、スーパー堤防の住居ビルは既に7万を超える入居者がおり、更に出産ブームであるために難産も一定の確率で発生するようだ。だが……その成功率は今の所百%と非常に喜ばしい状況だ。


 それもこれも重婚可能政策の成果……と言えそうなのだが実際は……重婚政策は終戦後1年経過して、スーパー堤防に住居ビルが完成してから本格的に始まったといえる。王都ではさらに住宅整備待ちで半年から1年ほど、新婚の同居が遅れて始まっている。


 それでも王都より西部地域では重婚者はすぐに同居を開始していたのだが、事務長の分析では重婚適応年齢以外の夫婦の出産率が戦後急速に増加したらしい。


 終戦の翌年は1万程度の通常と変わらぬ出産状況だったが、戦争の犠牲で出産可能な若者が激減したことを考慮すると非常に高く、2年目は2万、3年目以降は3万近い出産ペースなのだそうだ。2年目後半から3年目以降は主に重婚者たちの出産ブームの影響であろうが、それ以前は重婚者以外の出産と言う事のようだ。


 確かに……結婚適応年齢以外とはいっても、26歳以上と言うだけで……終戦後に結婚したカップルだって大勢いたはずだし、おかしな話ではないはずだ。


 日本だって第2次世界大戦後の数年間は出産ラッシュで、団塊の世代……と言われていたようだからな。もしかしたら戦争で多くの犠牲者が出た反動で、出生率が向上するということが起こりうるのかもしれない。


 術例が増えたことで、この地で修業して経験を積んだ新たな施術者も養成でき、産婦人科として開業した病院も見かけられるようになり、今後ますます開腹術が展開されていくと見込まれている。


 逆子で治療師がうまく回しても死産であった事例も少なくないようで、今後は積極的に開腹術に切り替えて行くことすら検討されているようだ。



 年が変わり今年も兵の交換が行われたのだが新兵は少なく、半分以上が1年目を終えて兵役が中断され、故郷に戻った実質2年目の兵士であり、少しは指導兵の負担が減るとハッカクさんもターレムさんも喜んでいた。


 スーパー堤防沿いを走るトロッコ列車路線も開通したために、穀倉地帯の北端と南端にも住居ビルが立ち並び始めている。当初住居ビルはスーパー堤防の中央部分のみで、長い流域には同じ高さの鉄筋コンクリートの塀が作られていたのだが、より強固に国境を監視するという事で、住居ビル建築が始まった。


 まあ……それだけ余裕が出来て来たともいえるのかな……戦後まもなくは、とりあえず疎開した人々を受け入れるだけの住居をまずは作り上げるという事に一生懸命だったからなあ。新たな国境線は住居ビルと高く頑丈な塀で、まかなおうとしていた。それから旧国境の町や王都の再建を開始し、続いて主要街道沿線の各都市を復旧させていったのだ。


 今では王国内は鉄道という高速輸送での連携が可能となり、飛躍的な発展が続いている。そうなると……国防の強化も議論されるのだろうなあ……なんせ魔王国とタッタルンの関係が疑われてきているからなあ。


 今の所は魔王国は非常に友好的なのだが、安心はできないという事なのだ。なんせタッタルンは怪しさ満点なのだが決して尻尾は出さず、疑わしいだけで排除するわけにもいかないのだからな……。


 いずれは人口数万くらいの衛星都市が大河流域のスーパー堤防上に幾つもできて行くのであろうが、それぞれの住居ビルに警護の兵士を常駐させる必要性があるために、ハッカクさんもターレムさんも気を抜けない日々が続いている様子だ。


 聞けば穀倉地帯西岸のスーパー堤防にも住居ビル建設が本格的に始まっているようで、中央部には既に2万人を超える町が出来ている。兵役の合間に1年ごとの就労期間がある為、両親とともに新穀倉地帯へ移住して農家へ転業する若者が増えているようだ。


 何せ一夫多妻制……1人の夫に2人か3人の妻がおり同時に出産すると、年ごとに人口は1.5倍から2倍となって行くのだ(女性は産前産後あわせて2年間は兵役免除)。このペースで進むと、穀倉地帯のスーパー堤防だけで数十万人が居住する、巨大団地が出来そうだ。



「なに?小鬼の産婆か治療師を呼んでほしいだと?そんな者いるのかなあ……小鬼たちは生まれる時に母親の腹を食い破って出てくるのであろう?産後の介抱などしても無駄だから、産婆という習慣などないのではないか?」


 そんなある日、ようやく手が空き始めた事務長にお願いしたのだが、怪訝そうに首をひねられた。


「出産した赤ん坊の世話は必要でしょうから、産婆さんはいるのではないですか?少なくとも回復術を使う僧兵なんかは必要と感じますけどね……生まれた子が未熟児だった場合などで……。


 それにそもそも妊娠の診断をする必要性があるわけでしょ?出産予定日とかだって、ある程度知りたいはずだし……だから助産師みたいな役割はいると思うのですけどね……呼び方は知らないけど。」


 名称はどうでもいいから、小鬼たちの出産に関わる者がいるだろうから、そいつを呼んでほしいのだと説明する。


「ふうん……呼んでどうするのだ?こちらと同じように、消毒の徹底でも教えてやるのか?だったら出産だけに限らず、全ての回復術に必要だろうから、回復系の僧を数人呼んだほうがいいのではないか?」

 俺の意図が分からない事務長は、未だに首を傾げたままだ。


「はあ……まあ回復系の治療でも、外傷の場合など消毒の徹底は必要でしょうから、回復魔法を扱う小鬼への教育も必要でしょうね。ですが……すぐに必要なのは、産婆というか治療師なのですよ。


 小鬼の出産……妊婦の腹を食い破って出てくるのでしょう?食い破る前に開腹術を使って、赤ん坊を取り出したらどうなると思います?」


「あっ……そうか……母体は助かるかもしれんな……。」

 ようやく俺の言っていることの意味が分かった事務長は、俯き気味の体制のまま満面の笑みを浮かべた。


「そうです……開腹術で小鬼たちの妊婦が助かれば、女性の減少も防げるでしょうし、人口だって増えて行くかも知れませんよ。現状のままだと小鬼たちの数を増やすには、人間の女性を襲って妊娠させるしか術はありません。ですがそれは……絶対にやってはいけない事なのです。


 妊婦が助かることで、より平和の礎が築けるのであれば……すぐにでも実行すべきと考えます。


 だけど……こちらから出向いて行って開腹術を行って、もし失敗でもしたなら大変ですよね?下手したらすぐに戦争です。


 そうならないように小鬼たちの産婆を呼んで、こちらでの開腹術を学ばせて、小鬼たち自身に開腹術での出産をさせたいのです。最初は失敗するかもしれませんが……なんせ体の機構が全て同じかどうか、分からないですよね?事前に死んだ小鬼の開腹を行って、内臓の位置など調べるようにアドバイスするのです。


 その上で開腹術を行えば、成功率は上がると思います。」

 帝王切開がこの世界でも存在すると聞いた時から、俺が描いていた構想を今こそ告げる。


「成程なあ……今なら事例も多いし、小鬼たちにここで術式を学ばせたうえで、後は自分たちで亡くなった母体の観察をじっくりと行い、相違点など注意した上で施術するようアドバイスすればいいわけだ。

 その上でのことであれば、彼らの責任だからな……国際問題にはならんだろう。


 これは……こちらから小鬼たちに直接指導するより、魔王を通して正式に通達したほうがいいだろうな。そのほうが魔王の株も上がるだろうし、何より友好関係がより強化されそうだ。


 ようし……直ちに文を作って、王様から親書を魔王あてに送っていただくとしよう。あたしは一応外務大臣ではあるが、やはり魔王国へは王様経由の方がいいだろう。


 うまくいけば……小鬼という民族の、革命ともいえる大きな出来事になるやもしれんぞ……これまでは、出産のたびに母体が失われていたわけだからな……これが実現したならば……。」

 事務長はわなわなと手を震わせ天井を見上げた後、少しして居間から早足で書斎へ向かった。



 それから2週間後、スーパー堤防中央の駅前広場に巨大な魔導船が降下してきた。勿論、この時だけは住居ビルに常時張ってある物理結界を解いて、魔導船にビル間の隙間を通過させたのだ。


 魔導船から2つの影が飛行術を使って甲板から地上へと降りてくる姿が見えたので、急いで広場の式典場で整列して待ち構える。以前見た魔導船とは異なり船底が真っ黒……「火矢対策で船底全面に鉄板を貼っているな……若しくは鋼鈑かな……」と事務長が一目見て呟いた。


 成程……同じ轍は踏まぬと……魔王国でも対応済みと見える……恐らく甲板もであろう……。


「ふあー……下等な人間どもの匂いが立ち込めていて、とても耐えられませんな……どうして魔王様は、こんな下等な人間の戯言にお付き合いなさるのか、不思議でなりません……。


 様々な言語も理解できずに翻訳魔法に頼るし、幼稚な……武器とか称すおもちゃを持って、我々を出迎えるのですからね……あんなもので我々の体を掠ることさえ許されぬと、気づきもしないような輩どもに……。」


「これこれギレージュ……失礼な言葉を発するではない。エルムグリムはこれまでに、我が国にあまたの恩恵をもたらしてくれた、恩人ともいえる国なのだぞ。食料支援はもとより、持続的な取り組みとして護岸工事に加え河川敷の農地開発に、林業や酪農などの技術支援まで行ってくれた。


 おかげで小鬼たちの食料危機を免れたばかりか、新たな産業迄生まれて少しずつ潤ってきているではないか。特に漁業支援は大きいと、魔王様も喜んでおられた。


 ここ何年かで、人間たちを見る目が変わってきているようだ。それは……我々にとっても同様なはずだぞ。」


 地上へと降り立ち歩き始めた途端に、彼ら同士の囁き……というよりも、わざと聞こえるようにしているのか大声でのつぶやきというよりも、喚き声が聞こえて来た。聞こえる言葉にいつもと違和感がないという事は……恐らくエルムグリム語を話して、そのイメージが俺に直接伝わっているのだと推察される。


 どうやら彼らはエルムグリム語を普通に話せるのであろうな……つまり、わざと聞こえるようにこちらの悪口を吹聴し、仕方なくもう一人が大声で取り繕っているのだ。どうしてまたこんな猿芝居を……と見ていたら、どうやら1人はなじみのある魔族の様子だ……ちいっ……どうしてあいつが……。


 正装の意味合いもあって、ステンレス製の強固な鎧兜に帯刀し、弓を持ちながら構えるものかどうか思案する。隊列の前列半分は弓兵で残りは槍兵だが、後列にはパチンコを全員に持たせている。勿論弾は陶器製を配備させているが、威力のある鋼鉄の弾も数発持たせている。


 今では国境警備の兵士全員がステンレス製の鎧兜を支給されているので、かなりの迫力があるはずなのだが……。


「これはこれは……わざわざ人間界迄お越しくださり……誠に恐縮至極でございます。


 たしか……ギレージュ親衛隊長殿……でしたな。もう一人の方は……お目通り願えたことはないように記憶しておりますが……。」


 すぐに事務長が彼らの下へと歩み寄り、慇懃無礼ともいえる言葉を発する。まあ……呟きの報復としてはいい加減であろう……。初めて見る魔族の男は、この世界では見上げるほどの高身長のギレージュよりもさらに背が高く……190以上あるのではないか?さらに体も一回りギレージュよりも大きく強そうだ。


「ああ……ギレージュは今は親衛隊長の任を解かれ、小隊の隊長となっております。私が後任の親衛隊長を任された、ダッフンバルト2世と申します。どうぞお見知りおきを……。」


 事務長が相対したギレージュはツンとして挨拶も交わさずに、となりの大柄な黒髪の魔族が代わりに応対して開いた右手を自分の胸に当て、上体を低くかがめてお辞儀した。


 なんと……ギレージュは親衛隊長の任を解かれたのか……まとまりかけた講和条約がひっくり返ったのも、再戦となって結局魔王軍が大敗を喫して穀倉地帯まで取られたのだって、あいつのしたことが発端だと言えないことはないからな。左遷であるならば、少しは溜飲が下がるというものだ。


 言うまでもなくメリアンちゃんの仇だからな……。


「本来ならばこの集会に出席するべきものではないのですが、此度は彼から皆様方にお詫びの言葉を述べるという事で、連れてまいりました。おいっ……申し上げることがあるのであろう?手早く述べよ。」


 黒髪の魔族は見た目自分よりも年上であろうギレージュをぞんざいに前に押し出し、自らの手で無理やりギレージュの頭を押さえつけて下げさせた。


「わわっ……分かりましたよ、王子……。ちいっ……」


 ギレージュは小さくつぶやくと、黒髪魔族の手を振りほどいてから、自分の軍服の襟を正した。以前見かけた時と同様、金綺羅金の装飾まみれの軍服だ……対する黒髪魔族の方は……恐らく仕立ては高級なのだろうな……体型にぴったりで上品さを醸し出している軍服は、ほぼ飾り気がなくボタンの金色以外光物はない。


 どう見てもギレージュの方が年上だし軍服の派手さから見ても上位者なのだが、2人の態度は真逆だ。ちらりと王子……とか呟いたので、もしかすると魔王の息子か?


「先般は私の勝手な指示により貴国に多大なる被害を与え、講和条約が中止となったこと、深くお詫び申し上げます。重ねて魔王様に貴国王都襲撃をそそのかし、貴国に多大なるご迷惑と、我が方に多大な犠牲を出したこと、誠に深く深く反省し、わが身の今後の生きざまにて償っていく所存であります。


 本当に申し訳ありませんでした。」


 ギレージュは懐から紙束を持ち出し広げると、棒読みのように読み上げてから頭を下げた。本当に反省しているのか?口だけじゃないのか?だが……やはりギレージュは先の戦争の失敗で、降格されたに違いない。


「講和条約締結の親書交換の際は、本当に申し訳ありませんでした。魔王様に他意はなく、あれはギレージュの一存で行われたものです。講和条約がご和算となってしまった後は戦争継続もやむなく、ギレージュの口車に乗せられて、王都襲撃で多大なる損失を受けました。


 本来ならばギレージュは戦犯として処刑されるべきものですが、王都襲撃の失敗は貴国の準備と作戦によるものであり、それまでの戦況からあのような大敗は予想できなかったと私が魔王様に進言し、ギレージュを預かることになりました。


 ここに彼を連れて参ったのは、貴国へのお詫びをさせるのと同時に、貴国にて彼を処罰したいとお考えであれば、彼を引き渡すこともやむなしと判断したからです。


 如何されますか?」


「如何って……ちょちょっと……王子様……聞いておりませんよ私は……エルムグリムに引き渡されるなんてこと……知っていたらこの場に来るわけが……。」


「そうであろう……だから私は言わなかった。だがこのことは既に魔王様が了承されたことだ。エルムグリム王国との今後も友好な関係を続けるためにも、憂いのある部分は残してはならない。


 いつまでも知らぬふりを続けるわけにもいかん……招待されて訪問に至った今回がいい機会なのだ……。」

 なんと……戦犯ともいえるギレージュを、エルムグリムに引き渡してくれるというのか?その為に奴を連れてきてくれたというのか?メリアンちゃんの仇を……。


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