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24.さらなる明日へ

24.さらなる明日へ


「それでその……タッタルンの今後に関して……王政を廃止して議会制民主主義へ移行するという方針でしたが……あれは前助役であるサーベリアンの提案でしたよね?全ての責任を前タッタルン王に押し付け、自分たちはのうのうとタッタルンで栄華を極めようと……その為には王家は邪魔でしたでしょうからね。


 バンターレ商会ごとサーベリアン親子も訴追され、その悪事が公になりつつありますが、方針に変更はありませんか?バンターレ商会の悪行を追求していけばいくほど、前タッタルン王は被害者であった可能性すら伺えると事務長さんも言っていました。


 もしそうであれば王政を廃止しなくても……流石に前タッタルン王の復権は無理でも、お世継ぎのハーゲル王子が暫定を外して正式に王家を継がれたなら王政継続も可能ではないかと……如何いたします?」


 そうして今後のタッタルン復興に大きく関わる……実際には政策拠点が変わるだけで、議会制民主主義に移行したところでハーゲル暫定王だって議員に立候補可能だし、立候補すれば当選は確実であろう。そうなれば政治を担うメンツはエルムグリム同様、大きく変わらない可能性だってあると事務長が予想していた。


「おお……それはそうですねえ……ハーゲル暫定王は庶民派で国民に人気がありますし……如何いたします?議会制民主主義は撤廃して、暫定を外してしまいましょうか?もし不安な点があるのであれば、それこそ国民審査にかけてもよろしいのでは?王政継続かもしくは議会制民主主義への移行かをかけて……。」


 俺の問いかけに対してすぐさまテルナティが食いついて来た……成程……国民審査なんて方法もあるのだな……流石……国民の大部分が王政継続を望んでいるのであれば、ハーゲル暫定王だって笑顔で暫定を取り外せるな……


「いやあ……私は幼いころ……とはいっても途中からではあるのだが……父であるタッタルン王の日常を見ていて……如何に一つの国を動かしていくのが大変なのか……それがどれほどの重圧であるのかをまざまざと見せられて来た。


 勿論その対価として国民の笑顔や豊かな生活……それらで解消されるのであろうし、何より当時の障壁となっていた大部分は恐らくバンターレ商会がらみの悪事にまつわることであったのだろうと、今では考えている。だから大変であるからやりたくはない……とは言わぬが……やめておく……。


 父はやはり罪人であり、その息子である私が……一切内容を知らされていなかったとはいえ、父を止めることもせず安閑と20年を王子として送って来た。その間エルムグリムはじめ妖精国や獣人国、魔王国までもがタッタルン一国に騙され搾取され続け……最終的には戦争までさせられてしまったのだ。


 父は戦火が起こる前に大魔導士が召喚されて、双方被害なく終わるつもりでいたようだが……実際には多大な犠牲者を出してしまい、物的損害も膨大なものとなってしまった。その責任は、王家の財産全てを投げ出したとしても、およそ見合うものではないと私も理解している。


 父は戦争犯罪人としてエルムグリムで幽閉されているが、父の代にてタッタルン王家は滅亡したのだと私は承知している。だから……今は議会制民主主義にするための移行期間として、仕方なく暫定王の肩書を頂いてはいるが、議会制民主主義へ移行次第私は一民間人として生きていくつもりだ。」


 かなりつらい胸の内を打ち明けてはいるものの、暫定王の表情は明るい……心根から納得しているのであろうな……だったら仕方がないか……


「ハーゲル暫定王さまのお考え……拝聴し理解いたしました。その上で……お願いがございます。」


「うん?願い……ですか?私で出来ることであれば、何なりと……?タッタルンの……今後のために行うべきこと……なのですよね?」


「議会制民主主義に移行するにあたって……初代議員に立候補してください。}

「はあ……???私が……?議員に……?立候補……?………………………………………………嫌です!」


「どどっ……どうして……ですか?」

 予定通りに議員への立候補をお願いしたら、やや間があったが……はっきり断られてしまった。


「だから私は……タッタルンを導いていく資格がないのです!父が犯罪者なのですよ!その影響でタッタルンの経済は今……火が消えたようになっております。国民に斯様な迷惑をかけて……


 仮にそうでなければ……王政を廃止せずに……議会制民主主義には移行せずに、私が王家を継いでおります!」

 ううむ……頑なな気持ちは……予想されたことではあるのだが……


「でもハーゲル暫定王さまは……前タッタルン王の悪事には一切関与していなかったわけですよね?外交交渉で、エルムグリムを訪問することはあっても、用件のみ伝えられていただけで、その背景など一切明かされていなかったと聞いております。その為に……あのような応対になったのだと後で分かりましたけど……。


 戦争犯罪人はあくまでも前タッタルン王であり、しかもその罪は既に裁かれております……さすれば、ハーゲル暫定王さまとは無関係かと……私は考えておりますけどね……。」


 取り敢えず事務長からしつこく説明された……息子だからと言って父親の罪を背負って生きる必要性はないのだと、強く説明しておく。


「そうは参りません……そのような勝手なこと……国民が許すはずもありません。」

 それでもかたくなに拒否をする……


「そうでしょうか?だったら……やはり全国民にお伺いを立ててみてはいかがでしょうか?」


「はあ?どうやって……でしょうか?まさか一戸一戸……全家庭を回って、謝り続けるのでしょうか?仮にそれが出来るのであれば……働きもせずに日がな一日、タッタルン中の各家庭を回ってひたすら頭を下げ続ける……宿泊は野宿としても……その間の食事代や移動費など面倒を見て頂ければ、私はやりたいですよ!」


「全国行脚ではありません……もし国民が許さなければ選挙に落ちてしまいますよ。立候補するときに支払う保証金と言うのがあって……これが結構な金額なのです。面白がって我も我もとおふざけで、雨後の筍のように立候補させないための歯止めとして保証金と言う制度があるのです。


 ハーゲル暫定王さまが国民から不人気で最低獲得票数に達しなければ、その保証金は没収されてしまいます。


 そうして国民から信任を受けて獲得票数が他の立候補者よりも勝れば、議員として当選するわけです。つまりそれは……全国民から許されていることになりませんか?議員として国政を委ねるという、国民からの意思表示とはなりえませんか?」


 至極当たり前の……そうして簡単な……全国民からのご意見を頂く方法を提案して見せる。


「ぐっ……むう……いやしかし……そのようなことせずとも、タッタルン国民の旧王家に向ける目は非常に厳しいものです。金銭的な支援はできぬので、私は養護院にあれからも何度も訪問して、雑用など引き受けておりますが、買い物の際に前タッタルン王に向けられる王都民らの声は、非常に厳しいものでした。


 建国以来、常に大陸内各国を主導し、その中心たる地位を盤石なものとなし、タッタルン王国は栄華を極めておりました。ところがその豊かさの原資が、全て他国を騙し不安を煽り争わせ、国際法上違法行為を積み重ねて築き上げたものだったと分かり、国民全員が失望いたしました。


 今や国民らの会話の中ににじみ出る前タッタルン王の評判は、稀代の詐欺師だの戦争犯罪人だの……果ては極悪非道な奴隷商人……とまで……酷いものです。


 ですがその全てが……ただの誹謗中傷ではなく、歴代タッタルン王含め前タッタルン王も在職中に常に関わってきた悪事によるものであり、紛れもない事実なのです。


 如何に前タッタルン王の所業を知らされていなかったとはいえ……その跡取り息子である私が、父親の罪は既に確定し罰せられているからと、議会制民主主義に移行する際に議員に立候補するなどとなったならどうなります?選挙演説でもしようものなら……石を投げつけられかねませんよ。


 まあ……それで国民らの気が治まるのであれば……敢えて受けても構いませんが……。」


 ハーゲル暫定王は現タッタルン国民らの前王に対する気持ちを代弁し、息子である自分に立候補の資格はないと告げる。


「いやあ……ですから……あくまでも前タッタルン王への批判ですよね?ハーゲル暫定王に対するものではない……何よりの証拠に、今は議会制民主主義への移行期間としてではありますが、暫定王として王位についているのでハーゲル暫定王に対して批判的な言葉は、街では聞いておりませんよ。


 それどころか……養護院への度重なる訪問など……庶民的で優しいハーゲル暫定王に対して好意的な評判が大多数だと俺は感じております。


 他国民の俺なんかがそう言ったところで……説得力なんてないのかも知れませんが……そうであるからこそ……立候補してみて……国民らの評判を伺ってみませんか?仮に前タッタルン王と同じく厳しいものであれば、無残にも落選……ですからね。国民らの失笑をかうことにより少しは溜飲も下がるのでは?」


 何とか言葉の限りを尽くして、ハーゲル暫定王に立候補を勧める……俺の推定では間違いなく当選する……しかもそれは、半分身内のような貴族らの応援によるものではなく、庶民からの票によってと信じている。


「はあ……あくまでも斯様な夢物語を……ふうむ……どうにも……タッタルンの国民感情を、ご理解いただけていないご様子……まあ……エルムグリムからいらして頂いて、日が浅いから仕方がないのかも知れませんが……よろしいですよ……。」


「えっ?如何いたしました?ちょっと……最後の方……聞き取りにくかったのですが……?」

「ですから……よろしいですよ!と……申し上げました!


 敢えて立候補して……高い保証金を支払い……一票も獲得できずに大恥をかき、保証金も没収される。


 国民らの笑いものになれば……よろしいわけですよね?それで……タッタルン国民の機嫌が少しでも良くなるのであれば……愚かなおバカは選挙に立候補しても、誰も見向きもして頂けないのだと……悪い手本となってやろうではありませんか……。」


 いつもは穏やかで笑顔を絶やすことはないハーゲル暫定王だったが、俺があまりにもしつこすぎたためか、あるいは前タッタルン王への気遣いがないことに苛立っているのか……苦虫をかみつぶしたような厳しい表情で、やや自嘲気味に立候補すると言い出した。


 まあ……ちょっとやり過ぎた感は否定できないが、それでも何とか……事務長とともにタッタルンの今後を担うメンツとして、想定している1人は確保できた……やった……。


「では……タッタルンの復興に対する政策がまとまりエルムグリムからの支援策が確定次第、支援案に調印頂き正式に復興支援が始まります。同時にタッタルン王宮は解体し、代わりに議会制民主主義へと移行するために議員らの立候補を募る選挙を行います。


 公正な選挙を実施するための選挙管理委員会の発足と、タッタルン国内の選挙区分け、及び選挙権と被選挙権の設定……更に全国民に対する選挙への参加の呼びかけ……この辺りまでですかね……ハーゲル暫定王さまに残されたお仕事は……よろしいでしょうか?


 おっと……忘れてはいけない……選挙の公示期間になったら、いの一番に立候補してくださいね?そうすれば……それを皮切りに、立候補をしようとする若者たちが、大勢集うはずです。」


 長々とした問答ではあったが、ようやく折れて頂いたので、これを反故にしないためにも一気にまくしたて、立候補をゆるぎないものとして、あたかも既定事項のように確定させておく。


「わ……分かりましたよ……一度首を縦に振った限りは……如何に恥をかくことが分かり切っていても、私から覆すことはございません。しっかりと国民らの厳しい審判を受ける所存です。」

 ハーゲル暫定王は、半ばあきらめたかのように少し息を吐きだしながら、ゆっくりと頷いた。


「ですがその……考えてみるに……私には一切の貯蓄がございません。暫定王としての手当ても全てお断りして、王宮の食堂で日々の食事だけ出して頂いている状況です。その……安くはない保証金とやらを……お支払いすることが難しいのですが……如何いたしましょうか?


 私の好みではない派手な衣装を売却する件は……勇者様に古着屋を紹介頂いてからとなりますが……その収益はやはり養護院に贈りたいと考えておりますもので……」


 そうしてから呟き気味にぽつりと……


「ああ……それでしたら私が……ご用立て致してもよろしいですよ。以前申し上げました通りに……スラム街住民らとともに起こした事業の蓄えが……そこそこございますからね。まあ……額にもよりましょうが……いかほどの金額になりそうなのでしょうか?」


 するとここでテルナティが、保証金を肩代わりしてくれると言い出した。


「そうですか……本来暫定王としての手当が支給されるはずなのに、それを断っているわけですからね。保証金はその手当の一部として代払いを求めればいいと考えていたのですが……保証金はエルムグリム同様、25歳男子の平均年収に相当する額にしようと考えております。


 かなりの高額ですけど、初めての民主化選挙という事もあり、訳も分からずというか……おふざけで立候補を乱立させないためにも必要な措置ではないかな……と、考えております。勿論……選挙を重ねるにつれ、様子を見ながら下げていって頂ければいいのです。」


 取り敢えずエルムグリムと同額で……まずは行きたい……


「ああ……その程度であるならば……保証金と言う名の通り、どうせ当選すれば戻ってくるのですよね?

 そうであれば問題ありません。あと数人分くらいは……私の方で肩代わりできますよ。」

 テルナティが笑顔で答える。


「では……ですね!王宮主幹事になったばかりのテルナティさん……あなたにも、立候補をお願い出来ませんか?それと……他にもタッタルンを担うべき方を、数名ほど紹介いただけるとありがたいのですが……。


 何せ俺はもとより、事務長さんも……タッタルンには知人もおりませんし……元政府の助役で、解任後はタッタルンのスラム街住民の復帰支援をなさっていたのですよね?


 そのような立派な思想をお持ちの方であるなら、ぜひ……御願いしたいと……。」

 ついでと言っては申し訳ないのだが……テルナティにも当然ながら立候補をお願いしておく。


「いえいえ……私には……王宮主幹事としての職務がございますからね……折角役職にありついたというのに……立候補は無理と考えます。」


「えっ?でも……王政廃止とともに王宮もなくなるわけでしょ?旧エルムグリム同様、王様は国家の象徴として政治とは関係なしに存続させるという考え方も出来ますけど……ハーゲル暫定王さまは議員に立候補なされるわけですからね……象徴たる御方がいなくなるのですよ。


 そもそも象徴として残ったとしても、政治色の強い主幹事という役職は……廃止されると思いますけどね。


 旧エルムグリムだって……国軍はあって……それとは独立した形で王宮を守る近衛兵団が存在し、隊長として兵士長さんがいて……さらに宮廷魔導士としてレルムさんがいました。


 魔王国軍侵攻に当たって王政復古を宣言し議会を解散した後は、お二人が主幹事のような参謀のような形で王様を補助していましたけど……今は王政に戻りましたが元老院制度化されたので、主幹事もおりませんしね……。


 だから……立候補をお願いいたします。ついでに……お知り合いに、議員に適任の方はいらっしゃいませんか?もしいるのであれば……その方たちにも立候補を勧めて頂きたいのですけど……。」


 なんとしてもあと数人程度は、立候補者を募りたいところだ……出来れば、過半数議席ぐらい押さえたい所なのだが……タッタルンは人口もエルグリムの倍くらい多く、人口比から想定する議員数は25人程度……流石に13人も候補者を揃えるのは無理だろうと、事務長も言っていた。


「おやおや……そうですか……私が議員に立候補ね……更に他にも議員候補を紹介して欲しいと……ふうむ……確かにスラム街には様々な経歴を持った者たちが、沢山いましたけどね……元軍人とか……医者とか……大学の教授……なんてのもいましたね……ですが皆……人生に疲れ世を捨てたものばかりで……私のように強制的に排除されたものは少なくて……。


 でもまあ……表面上は永く栄華を誇り豊かな国に見えていたにも拘らず、その内情は他の国から搾取を続けていたという……見せかけだけ豊かだったタッタルン自体が大きく変わるのですからね……今度こそ国を立て直すことに尽力したい……と考える奴がおるやもしれませんね……念のために何人か声をかけてみましょう。


 了解いたしました。」


 テルナティは笑顔で、少し会釈をした……ようし……今日だけで大きな成果を上げたぞ……この調子で議会制民主主義へ移行しても、今とさほど大きく変わらない主メンバーで政権運営していければ……いや……万一ハーゲル暫定王やテルナティさんが落選したとしても……それがタッタルン国民の意思であれば尊重せざるを得ないのだろう。


 どうであっても同じ大陸内に住む人間の国……いわゆる同胞なのだ……互いの意思を尊重し、協力し合っていかねばならない……よその大陸が……しかも火縄銃や大砲などという……さらに進んだ文明の国が存在することが判ったのだからな……。


 敵か味方か……と、いうよりも、共に歩んでいけそうなのか……実際のところ、人間の国であるかどうかすら分かっていないのだからな……だけど同じ星に暮らす人々……人種の違いはあれど話せばわかり合えるだろうし、協力し合って豊かな生活を目指す……と言ったことは可能なはずだ。


 まだ見ぬそれらの国とも互いに手を取り合って、豊かに平和に暮していきたいものだ……。



本当なら他の大陸との交流含めて、さらなる続編へ進展するつもりでしたが、ここまで書いて続きが全く浮かんでこず、ニケ月以上も放っておいてさすがに年越しはまずいと思い、とりあえず終われそうなので、ここ迄といたしました。

気が向けば続きも有りでしょうが……まあ、期待しないでください。

ここまで読み進めて頂き、ありがとうございました。

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