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8.帰還不能

8.帰還不能

「ええっ……俺は戻れないって?」


 翌朝、昨日のスクワットの影響か、ふくらはぎが吊ると言って痛がるメリアンちゃんの体を支えながら、昨日の戦果の報告とともに、大魔導士が召喚された後でも俺は戻らずにこの地に居ていいか尋ねたら、速攻で魔導士レルムが戻れないのだと一瞥した。


「召喚魔法というのはあくまでも招くのみ……一方通行なのですよ。戻す魔法というのは存在致しません。


 仮に多田羅さんの世界に召喚魔法が存在したならば……向こうから召喚いただける可能性が無きにしも非ず……ですが……魔法の存在しない世界なのでしょう?卓越した技術力で、異世界から人を呼び寄せますか?」


 なんと……俺は戻りたくても戻れないという事を今初めて知った。許されることならば……元居たあの断崖絶壁に戻って、遺書やらなにやらすべて廃棄してから、もう一度この世界に戻していただきたい……なんて都合がいいことを考えていたのだが……まあいいさ……戻れないなら仕方がない。


 異世界での恥はかき捨て……だ……。人道上問題有り……とも言うべきことを残してきてしまっているわけだが……まあ、仕方がない……仕方がない……


「まっ……まあ……戻れないという事は、俺はこの世界の住人として、魔王軍との戦争が終わった後でも暮らしていていいという事ですね?だったらよかった……俺としては全く問題ありません。」

 事態はどちらかと言えば好転と言えるので、問題なし。後は大魔導士にバトンを手渡すのみ……。


「で?正規の世界から大魔導士様は、いつ召喚されるのでしょうか?その方が来たなら俺はお役御免で、納屋にでも寝泊まりしながら工房の掃除とか後片付けでも……毎日手伝って過ごしますよ……。」


 美人事務長だって、俺の手伝いを拒むことはしないだろう。手当は毎日食べて行けるだけで十分だし、早くも楽隠居と言ったところだが、まあ……美女に囲まれて過ごせるのだから、楽園と言えるか……。


「いえいえ……召喚魔法は一つの世界で一時に一人にしか使えないのです。あなた様がいる限り、代わりの大魔導士様は召喚できないという事になります。そういえば、ご説明しておりませんでしたね……。」

 魔導士レルムが、全く悪びれずに答えた。


「えっ……じゃあ……俺は邪魔者として……消されてしまうのでしょうか?これ以上活躍できなければお役御免で、すぐさま処刑されてしまいますか?」


 まずいぞ……まずい……だったら美人事務長にリクエストされたときに、もう少し武器について考えておくのだった……あれはそういった布石だったのか……俺が次々と有力な武器を発案していればよし……なくなれば不要として殺してしまおうと……ひえー……まずい!


「どうしてですか?文美雄様は投石器やボウガンに落とし穴など……色々とお考えを示され、どれも魔王軍に対して有効な武器となっております。おかげでここ数日、何とか持ちこたえたのですよ!そんな方を……正規の大魔導士を召喚するために殺してしまうのですか?それはあまりに勝手すぎます!」


 メリアンちゃんも悲痛に声を荒げて、俺を殺さないよう嘆願してくれている。だがなあ……俺たちが頼み込んだところで……何も変わりはしない……庶民が何を言ったところで……。


「ああ……一度召喚したものは、それが気に食わんからと勝手に殺したりは出来ないそうだ。そんなことをしたなら、その世界では2度と召喚魔法が使えなくなるらしい。下手をすると魔法全てもな……召喚魔法を操る精霊たちに嫌われてしまうらしい。そうでなかったとしても……多田羅殿をどうこうするつもりは全くない。


 自殺されても同様という事なので、突然異世界に召喚されて、しかもその世界が魔王軍に滅ぼされようとしている窮地という最悪の状況……これを悲観して自殺でもされては大変と、多田羅殿の提案を何でも聞き入れ色々と作ってみて、生きる面白みを味わっていただこうとしていたのだ。


 だがそれが……予想外に過分に役立ち、今や我が国の方が優勢となっておる。今の我が国にとっては、多田羅殿が大魔導士様なのだ。本当にありがとう……心から礼を言いますぞ。」

 豪華な椅子に腰かけていた王さまが立ち上がり、腰を折って頭を下げた。


 なんと……大魔導士に間違われて俺が召喚されてしまったがために、これで召喚は打ち切り……本当の大魔導士は召喚できなくなってしまったのか……間違えた俺を殺してでも……とはできないというのは俺にとってはラッキーだが、この世界にとっては最悪だ。


 だったら俺が……なんとしてでもこの世界を救うのだ……幸いにも俺のつたない発案が思いもかけずに大きな効果をもたらしているようだし……だがこれ以上の効果をもたらすような武器か……どうしよう……。


「ももも勿体ない……俺でよければいくらでも……何でもさせていただきます。ですがその……大魔導士様が召喚されないというのは……ちょっとショックでした。


 俺は大魔導士様がやってきて現状分析を終えて戦場に立つまで……1週間程度の時間稼ぎのつもりでいたので……魔王軍を完全にこの国から追い返せなければ勝利とは言えないわけですよね?


 ううむ……ちょっとこの後……工房の事務長さんも含めて作戦会議できませんか?」


 まずいな……俺の発案した武器程度では、魔王軍の進行を食い止めるのがせいぜいで、追い払えるようなわけにはいかない。せいぜい大きな車輪がついた投石器を持ち出し、更に魔王軍を後退させる程度が関の山だ。


 敵に大打撃を与えられるような、兵器なり作戦なりが必要となりそうだ……ううむ……思い出せ……戦国時代の武将を……彼らはこのような窮地にどうしただろうか?


 歴史書は……特に日本の歴史書は……姉が買い与えられていた漫画で解説していた日本の歴史書は、おさがりで与えられてからは、ボロボロになる迄何度も何度も読み込んだはずだった……。


「ボウガン50丁完成したので、取り敢えず工房の班長にボウガンを持たせて2人城壁の上にあげ、照準を手旗で知らせるよう指示しておいた。それで投石器の方は何とかなるだろう。まっ昨日の戦況から見て、今日1日は平気だろう。問題ない。


 だが……坊主が大魔導士ではない事にも驚いたが、肝心の大魔導士とやらが来ないんだって?まずいな……今のこちらの戦力では籠城して攻めてくるのを追い払うことは出来ても、敵軍を全滅させたりすることは不可能だ。


 そうなると……いつまでも泥沼の攻城戦が続くだけだ……やはり他にも武器が必要だな……。」


 暫くすると、美人事務長が王様の謁見室へやって来た。腕を組んで神妙な面持ちで思案し始めた。なんと……銀色に輝く真新しい鎧と兜を身につけ、腰にはチェーンでボウガンを下げているではないか……。


「鎧兜……出来たのですか?」


「ああ……坊主の分とメリアンの分もすでにできているぞ……だがまだ人数分は出来ていない。決戦はもう少し後だな……それに……ボウガンと移動式の投石器だけでは、魔王軍を追い詰めることは出来ないぞ!」

 事務長が豪快に手で金属音を発し、鎧を叩きながら大声で答えた。


「そうなんですよね……ここ2,3日である程度打撃を与えることは出来たとしても、まだまだ魔王軍には戦える兵士は何十万人といるはずです。こちらが50人で飛び出していっても、なかなか戦果は上がらないでしょう。だから……もう少し武器と鎧兜の量は増やしましょう。


 剣だとかなり接近戦になるし、剣の技術も必要となるから、槍と薙刀を作りましょう。ボウガンよりは簡単に作れます。こっちも技術は必要だけど、最悪の場合ブンブン振り回すだけでも……力がある程度あれば敵を近づけさせないくらいは出来ます。戦うのが女性となると……薙刀がいいかな……。


 こんな形……刃をつけない木型も作って、素振りの練習を毎日するといいです……。」


 紙に槍と薙刀の絵を描いて、穂先と刀身部分を点線で示す。包丁やナタなどを作る技術があるのだから、これらは簡単に量産できるはずだ。まずは戦闘兵を増やしたい。何か行動を起こすにしても、まずは戦力だ。


「おお……槍という武器があれば……魔法兵士も戦えるかもしれんな……これも結界は通るはずだから、僧兵に結界を張らせておいて、結界内から突けばいいのであろう?」


 槍の絵を見て、兵士長が自分たちも戦えるかもしれないと言い出してきた。なんだなんだ……僧兵だけで魔法兵士は全滅だって前に言っていなかったか?


「魔法兵士はまだ残っているのですか?」


「ああ……城の近衛兵士が2千人ほど……だがあくまでもこの城と王様とお妃さまはじめ、王家ご家族の警護兵だからな……出せてもせいぜい百人ほどだぞ……。」


 ちいっ……隠していやがったか……


「わしらの警護など……どうでもいい。そんなこと言っている時ではないのだ。戦えるのであれば、出せるだけ出してくれ。それで魔王軍が追い払えれば、この国が助かるのだぞ!」


 兵士長は百人と言ったが、王様はもっと出せるだけ出せと命じてくれた。当たり前だ!魔法結界が破れて炎弾が城に降り注ぐようになれば、王家一族もろとも焼け死ぬだけなんだぞ!


「わかりました……それでもこの広い城内警護とご家族のご安全を考慮しますと……5百名が限度でございます。その代わり……極力精鋭を出すとお約束いたします。」


 兵士長が王さまに向かって敬礼しながら答えた。なんと……精鋭兵士5百……一気に増えた。仕方がない……これで良しとしておくか……精鋭だからな……。


「魔法兵士は既に甲冑を持っているから鎧兜は不要だな……僧兵は結界を張れるからこっちも不要。そうなると……槍だけ5百作ればいいのだな?」

 事務長が張り切りだした。


「槍は……最悪竹槍でもいいのです。手で握りやすい太さの竹をこう……先端を斜めに鋭く切れば、それだけで十分武器になります。突いた後は……また鉈などで斜めに斬り落とせば、短くなるけど使えます。槍が出来るまでは、それで代用できますよ。」


 太平洋戦争時は、本土決戦に備えて竹槍で武装したって……習ったからな……。


「成程……早速魔法兵5百を工房裏の竹林に向かわせ、ナタで竹を切って槍を作るよう指示致しましょう。

 1人2本ずつ持たせればいいでしょうな……。」

 兵士長が急いで謁見室を出て行った。やったー……一気に戦える兵が増えたぞ。


「こっちは薙刀を50丁と鎧兜を50追加だな……何とか明日の朝までには仕上げたいな……落とし穴はもう掘らなくてもいいだろ?」


「はい……今日は敵が逃げ出したらすぐに追撃して……ボウガンなどで痛めつけるつもりでしたが、竹槍が加わればなおいいです。それで……落とし穴は十分開いているから、また蓋をしておけばいいでしょう。」


「追撃するなら、私だけではなく結界を張れる僧兵も必要となりますね……動きながらでも結界を張れる精鋭たちに指示しておきましょう。1人で数人分はまかなえますから、百人いればいいですね?」

 魔導士レルムも精鋭の僧兵の手配してくれることになった。


「よし……これで魔王軍をある程度撃退できれば……勝利も見えてくるぞ……。」

 王さまも目を細めて喜んでいるみたいだ。これである程度は戦えそうだな……後は移動手段か……。


「ついでに……装甲車……なんて作れますか?」

「はあ?そうこう……なんだ?」


「装甲車……です。厚い鉄板で覆った箱に、車輪をつけて走れるようにした……中には座席を作ります。これだと魔法結界以外に、何か物を投げつけられても、中の人は安全です。」


 城の中に潜んで居れば……高い城壁が守ってくれているから、魔王軍だって魔法で炎弾を飛ばすくらいで、何か物をぶつけようとはしないだろう。だが外で戦うとなると……こちらが投石器を使っているのを見れば、向こうだってその辺の石を拾って投げるくらいはするだろう。


 正規の鎧兜が全員にいきわたればいいのだが、流石に無理だから……移動中だけでも安全に……。


「高速打撃魔法を唱えられる方は何人いらっしゃいますか?お忙しいでしょうが、その魔法でピストンを動かすことにより、車輪が回って車を走らせることができます。」


 並列に並べた金槌を連結して高速で何度も振り下ろし、包丁やナタなど工房で鍛錬していたからな……あの魔法を使えばエンジンなどなくても車輪を回せる……ピストンと車輪とその間を連結する2本のアームの図を描いて、事務長に見せてみる。蒸気機関車など大好きで、何度もビデオ見直したからな……。


「高速打撃魔法を使える魔法兵士……彼らは魔導士の部類に入るが……交代で工房を回しているので全部で10名ほどいる……だがこれだけのものとなると……製作に数日は必要となるな……。」


「はあ……魔王軍を国境まで追っていくには、必要となると思います。城の周辺で戦っている間は不要です。


 それとやはり弓矢を作っておいた方がいいと思います。下向きへの狙いだけではなく、ボウガンよりも連射はききそうなので……以前も言いましたが、こんな形で……」


 ついでに弓の絵と矢羽根部分も含めて、鉄の矢じりとか名称含め絵を描きながら説明した。さほど熟練を必要としないボウガンの方が優先されているように感じるので、ちょっとここで催促だ。


「そうか分かった……では失礼いたします。」

 美人事務長が会釈してから謁見室から出て行った。



「精鋭魔法兵士5百名に、それぞれ予備も含めて4本ずつ竹槍を作成させました。あまり長すぎてもいかぬのでしょうが……怖がりが多くて、大体人の背の倍程度の長槍となったようですな。」

 暫くして兵士長が3mを超える竹槍のサンプルを持って帰って来た。


「これも……殺傷力はあまり期待しておりません。ナタで何度も斬りなおす必要性がある為、最初はそれくらい長い方がいいと思います。


 それで……考えたのですが、魔王軍はここからどれくらいの地点に野営しているか分かっていますか?」


「おお……確か斥候の話によると数日前から王都から5里地点に野営しておるようです。城の防備が固く、それ以上進行しては来られないようですぞ。これもひとえに、多田羅殿のおかげ……ですな。」


 戻ってきた兵士長は、先に戻っていた魔導士レルムに空間に地図を投影させ、指で指して教えてくれた。


 最初は俺なんかの作戦は全て突っぱねていたのが、随分変わってくれたな……だがまあ……いいことにしよう。つたない俺の発案の理解者が一人でも増えてくれるのは、大変にありがたいことなのだ。


「もっとも……5里地点が魔王軍の中心というだけでして……何せ百万の大群ですからな……実は先頭は王都の旧城下町のすぐ手前まで迫っているようです。


 その為、毎朝早朝から魔王軍の攻撃が始まるのでしょうな……最後尾が何と王都から10里地点まで伸びているようです。こんな大軍……直接攻め込んでも、すぐに返り討ちですぞ……余程うまい作戦を立てねば……。」


 兵士長が地域地図の中に、広大な範囲を指先で囲って見せる……なんと……こんなに……早朝から最後尾が動き出し、ところてん方式に先陣が城壁へ迫って攻撃開始……と言ったところか。


「いくら何でも5百程度の兵力で、百万の魔王軍に突撃するつもりはありません。千や2千の兵を道連れにしたところで、向こうにとっては蚊に刺された程度でしょう。それよりも、兵糧を断つのです。」


 そう……決戦では城攻めとなり……そうして兵糧を断ち退路を断ち……降伏を促すという……無理に戦って兵を失わずに勝った事例が山ほどあったはずだ……。


「兵糧?だって……?兵士を直接攻撃するのではなく、食べ物を攻撃するというのか?それで……効果があるのか?2,3日なら空腹でも耐え忍んで、それこそ遮二無二攻めて来はせんか?」


 百万の兵を相手に、5,6百の兵でどう戦おうかずっと考えていて、この作戦に至ったのだが、王様は怪訝な表情で首をかしげて腕を組んだ。


「今この城には1万数千の兵や王族がいますね?食料の備蓄はどうなっています?」


「そ……それは……城の倉庫2棟に食料は備蓄されているが……何せ戦況は見えずいつまで続くかもわからぬから……民は疎開させ畑も潰し、調達のめどは全く立っておらぬため……。」

 兵士長が苦虫を噛み潰したような顔で答える。


「そうですね……一昨日は戦勝記念で鶏肉など出ましたが、普段は干し肉と乾パンとスープのみ……連絡係の子たちは、もっと少ない食事で我慢させられているようですよ。」


「たっ……多田羅殿は国賓扱いで……国王さまはじめ王族の方々と同じメニューで……他は兵士長の私以下すべて同じメニューなのですぞ……決して若い連絡係を虐げているわけでは……。


 今この城でまともな食事を支給されているのは常時魔法結界を張り続けている僧兵くらいで……彼らは日に米2号又は食パン一斤及び肉200gと野菜300g、季節の果物ひとつ及び角砂糖2個にバター一かけ、塩コショウ少々の食事が配給されておる。


 城では非常時に備えて僧兵1ヶ月分の食料は備蓄してあったので、我々はその中から分けてもらっているという立場なのだな……彼らがこの城の生命線であるのだからな……仕方がないのだ。」


 兵士長が焦って内情を説明してくれた。なんと……魔法結界を張っている僧兵以外は、まともに食べることも出来ていないのか?それでも俺は国賓で、王族と同じメニューにしてくれていた……なんという優遇措置……ううむ……なのに俺は……余計な一言を……だから嫌われるのだな。


 だが落ち込んではいられない……失礼は承知の上で俺の考えを伝えねば……


「そうだったのですか……すいません……訂正してお詫びさせていただきます。皆様のことを疑い、申し訳ありませんでした……加えて……俺の食事も……僧兵以外の皆さんと同じにしていただいて結構です。


 それで……決して食事を増やせといっているわけではなく……一万数千の人数だけでこれだけ困っているのです。それが百万になるとどうなると思いますか?しかも敵地に攻め込んでいるのですよ!


 恐らく毎日毎日大量の食糧を、国境超えてはるばる魔王国から運んできていると俺は思っています。その食料を襲うのです。しかも補給ルートを断つために、主要な道路にまたまた落とし穴を掘るわけです。


 そうして数日間でも全く食料が来なくなれば……流石の魔王軍も撤退せざるを得なくなるはずです。」

 まずは深々と頭を下げ、俺の誤解を謝り訂正しておき、それから肝心の作戦の趣旨を説明する。


「成程……徹底的な兵糧攻め……だな?

 名案かも知れませんね……百万の軍勢ではわずかな手勢で攻めたとしても、とても追い返せるものではありませんからね。兵士長殿……魔王軍の兵糧の輸送ルートは、見当がつきますか?」

 いつの間にか戻ってきていた、美人事務長が賛同してくれた。


「あっああ……恐らく国境から一直線のこの街道ルートが本線で……迂回するとすればこの街道とこの街道と言ったところだろうね……他は……相当なう回路となるから……物資の輸送には不向きだろう。」

 兵士長が空中の地図を指でなぞりながら、3本のルートを説明してくれる。


「うまく回り込めば、夜中のうちには迂回ルートに届きますね。2手に分かれて日の出前に落とし穴を掘ってしまいますか……その後合流して、本道の輸送隊を攻撃する……と言った手筈かな?」


 事務長が俺の方へと振り向いて、にやりと笑った。なんともまあ……賢くそして美しい……そして俺の一番の理解者と言える……。


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