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44. 影に覆われた城

 


 城が影に呑まれ、上空には暗雲が立ち込める。


 これまでトライバルが城を襲わなかったことが不思議なくらいだが、まさかいきなり城を攻め落とされるとは。


「さて、影に覆われた城にどうやって乗り込むか……」

「やっぱりお城に乗り込むなら空からデショ!」


 カーマインは勢いよく天を指刺した。


「悪い奴は高い所にいるヨ! きっと!」

「まあよくあるゲームとかだとそうかもしれないけどな……」

「だってだって! よく影を見てヨ! 何だかお城の天辺の方を守っているように見えない?」


 言われてみれば城の上の方が影が多く集まっているように見える。


「……オネット様の部屋の方だ」

「何だと!? おいおい早く助けに行かねえとやばいじゃねえかよ! カーマイン、行けるか!?」

「まっかせといてヨ! よーし、それじゃあコーイチは私の頭に掴まって! みんなは私の背中に乗ってネ!」

「ちょっ、え!?」


 いやいやいや、こいつ、何言ってんの? 頭に掴まれって? 何でだよ!?


「影はコーイチの力で消して貰って突っ込むのが一番効率がいいデショ?」

「え、あ、まあ、そうか?」

「考えてる時間は無いって! 頭から突っ込んで行くしかないヨ!」

「わ、わかった! が、頑張る!」


 勢いに任せて言ってしまった。だが、正直すぐに後悔した。


「コーイチ、大丈夫っすか?」

「だ、大丈夫じゃねえよ! 普通に怖いわ!!」


 ドラゴンの姿になったカーマインの頭に俺はしがみつき、背にはセイヴとエペ、それからメモリー?とシカバが乗っている。


「コーイチ、パンツ見えてるっすよ!」

「うるせえ! こっちはそんなこと気にしている場合じゃねえんだよ!」

「よーし! じゃあ、行くヨー!」


 カーマインが空へと舞い上がる。


「うばばばばば!!!」


 振り落とされないように必死にしがみ付くが背中に乗るよりもずっと不安定で目が回る。

 凄いスピードで城の上空へと移動し、一度空中で静止した。


「影が来るヨ。コーイチの力が無いと、私達皆んな地上に落とされちゃうからネ。コーイチ、頼んだヨ」

「お、おおおう!」


 目は回るし、体も震えている。だが、俺がしっかりしねえと。影相手に力を相殺する必要はない。全力で行く!


「行っくヨー!」


 影に覆われた城に向けて真紅のドラゴンが急降下して行く。影はドラゴンに触れることも出来ずに消えていくが、消したところで次から次へと影は襲って来る。


「うおおおおおおお!!!」


 城のベランダに勢いよく振り落とされた。エペとメモリーが一緒に転がり落ちて来るのが見えた。メモリーの腕にはシカバが抱かれている。


「セイヴ! カーマイン!」

「俺達はオネット様の救助に行く! トライバルを探してくれ!」

「セイヴだけなら空中で戦える。私達のことは大丈夫ダヨ!」


 カーマインが口から炎を吐いて影を殲滅する。ドラゴンは影を避けながらオネットの部屋の方へ飛び去った。


「コーイチ、中に入るっす!」

「あ、ああ」


 ベランダから続く廊下の中はがらんとして静まり返っていた。おかしい。城の中に人が居ないなんてことあり得ない。


「みんな、どこに行ったんだ……」


 外で影が暴れているなんて嘘のように何の物音もしない。無音の空間では声も自然と囁くものになる。


「城の地下に集められています」

「わかるのか?」

「はい。私はこの世界の全てを見れます。見ようと思えば、ですけど」

「……それってトライバルの居場所もわかるってことだよな?」

「はい。ですが、彼の居場所は教えません。貴女はこれから廊下の奥の部屋へと行って貰います」


 脱力した。この娘が考えていることがわからない。協力してくれると言いつつ、肝心なことを教えてくれない。


「何を考えている?」

「ハッピーエンドです」

「ジンノ、行きましょう。ここで話していても拉致があかないわ」

「ああ」


 信用すると言ったからには、彼女を疑いたくはない。だが、何だか嫌な予感がする。


 廊下の奥、巨大な二枚扉を開けるとそこには巨大な狼の魔物、ムスリクがいた。彼の目の前には一人の男が虚な瞳で立っていた。


「ムスリク!」


 ムスリクの目が俺に向けられる。彼は目の前の男を前脚で壁に突き飛ばしてから俺に向かって牙を剥き出しにして突進して来た。


「ぐっ!」


 突然のことに力を上手く使えず俺はその巨体に吹き飛ばされた。


「コーイチ!」


 回復魔法を使う間もなく俺に向かって再びムスリクが駆け出す。 


「ジンノ!」


 ムスリクと俺の間にエペが飛び出し、彼女は剣で彼の牙を受け止めた。


「ジンノ、大丈夫!?」

「あ、ああ」


 何とか動ける程度に体を回復させて立ち上がった。


「メモリー、どうすればいい!?」

「先ずは動きを止めて下さい」

「動きを止めるったってな……」

「女神バリア改っす!」

「え」

「女神バリア改をしながら隊長の体を押さえつけるっす!」

「わ、わかった!」


 エペとやり合うムスリクの背後に回り込んでその後脚に抱きついた。すぐに俺の存在に気がついたムスリクが後脚にしがみ付いた俺を振り落とそうと暴れる。


「全っ然、抑えられねえ!!」

「何やってるっすか! コーイチ! 遊んでる場合っすか!?」

「遊んでねえ! こちとら真剣だ!」


 こんな暴れまくってる相手に力の相殺なんて出来ねえ! 限界まで力を弱めてしがみ付いているのがやっとだ。


 獰猛な巨体を持つ狼は地を震わせるような咆哮をする。エペの体が扉を突き破って吹き飛ばされた。


「エペ!」


 エペに気を取られた一瞬の隙をつかれた。俺は脚から振り落とされた。そして、倒れる俺にムクリクの前脚が振り下ろされ、なかった。


「が、ぐががが……」


 ムスリクの巨体がゆっくりと横に倒れた。衝撃で部屋が揺れる。


「あ……」


 エペがムスリクの脇腹に剣を突き刺していた。


「ごめん。ムスリク」


 剣を引き抜き、唸り声を上げるムスリクにエペは再び剣を振り上げる。


「ま、待て!」

「ジンノ、また彼は暴れるわ」

「だけど!」


 瞬間、ムスリクが起き上がり、エペに襲い掛かった。だが、彼の牙がエペに届く前に彼女の剣が彼の首を切り落としていた。











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