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40. 推しの幸せ?

 


「こんにちは」

「こ、こんにちは」


 落ちて来た少女は地面にぶつかる直前にふわりと止まり、何事もなかったかのように俺達に挨拶をした。

 彼女の顔には何処かで見覚えがある気がする。何処だったかな。


「メモリー!? 何でここにいるっすか!?」


 シカバは驚いた様子で彼女を凝視している。


「メモリーは図書館に居る筈なのに」

「図書館……」


 ああ、思い出した。そう言えば図書館に行ったとき会った眼鏡の少女だ。眼鏡が無かったから気がつかなかった。


「君、メモリーって名前なんだな。以前君に紹介して貰った本、凄く役にたったよ。ありがとうな」

「コーイチ! 何普通に会話してるっすか! メモリーが外に居るなんて異常事態っす!」

「そうなのか?」


 尋ねると少女は「さあ?」と、首を竦めた。


「貴方達は私を探していたでしょう?」

「え、じゃあ時計塔の魔女がメモリーなんすか?」

「時計塔の魔女は知らないですけど、貴方達の仲間を救うことは出来ます。彼の未来を、今を消すことで」

「どう言うことだ?」

「魔物化したと言う現実を消すんです。残念ながら時と言うものには干渉出来ません。時は進んで行くことしか出来ませんから。戻ることなど出来ないのです。ですが、進んだ分を消すことは出来ます」

「何言ってるかよくわからねえけど、ムスリクを元に戻せるなら何だっていい。メモリー、力を貸してくれ」


 メモリーは無言で頷いた。


「力を貸してくれるのはありがたいっすけど、メモリーは図書館に戻らなくていいっすか?」


 シカバの問いに彼女は首を横に振る。


「図書館にいる個体と私は違いますから。彼女は私の記録媒体です。私が観測、編集し、彼女に記録する。人間には彼女を貸し与えているだけ。彼女のメインユーザーは私です」

「……よくわからないっす」

「安心しろ。俺もだ。そもそも結局図書館のメモリーってのは何なんだよ?」


 正直、彼女の話はちっとも理解出来ないし、彼女が何者なのかもわからない。


「世界のいろんな情報を持っている機械人形、だと俺は聞いていたし思っていたっす。この子とまったく同じ容姿をしているっすけど、この子ではないってことっすよね」


 少女を見つめていると彼女はにっこりと笑った。


「君は何者なんだ?」

「私はそうですね。()()()、とでも言っておきます」

「観測者……」


 こういう得体の知れない奴に俺は心当たりがあるぞ。俺をこの世界に送った奴も自分のことを()()()()()とか言っていた。この子から奴と同じ匂いを感じる。


「状況を上手く咀嚼出来ないんだが、メモリーは、俺達の味方……なんだな?」


 セイヴがおずおずと言う。彼が疑うのも無理はない。突然、時計塔から落ちて来た少女の話を信用しろだなんて難しいに決まっている。


「私は、推しの幸せを願っています」

「はい?」


 推しってあれか。アイドルとかキャラクターとかで好きな奴を応援するとかそう言うのの推しか?


「私の推しは、どうにも幸せになれない星に生まれているみたいです。ですが、私は推しに幸せになって欲しい」

「その気持ちはわかるけど、それが俺達に何か関係あるのか?」


 俺が尋ねると、彼女はびしりと俺を指差した。振り返るが俺の背後には何も無い。いるのはまばらな通行人のみ。


「俺?」

「そうです」

「メモリーって、コーイチのファンだったっすか!」

「まじ? 俺いつの間にそんな大人気になってたんだ?」

「私は、貴女の魂のファンです」


 大人気じゃねえだろっとつっこまれることもなく、彼女は淡々と述べる。


「魂ね。魂……壮大な話だな」


 まさかそんなことを言われるとは思わなかったのだ。


「自分の世界で推しが死んで行く苦しみは、もう味わいたくないです。このままでは、また私の推しが酷い目に合う。だから、推しの為に協力します」


 メモリーの目は真剣だ。彼女は嘘や適当なことを言っているわけではないのだろう。


「あー……わかった。君を信じる」


 そう言うしかないだろ。よくわかんねえけど。


「ありがとう。でも、貴女は何もわかっていません。貴女ではこの状況を改善出来ない」

「随分とはっきり言うな」


 自分でも俺が何も出来ないことくらいわかっている。しかも、この少女の話もよく理解出来ていない。だが、言葉にされると地味に傷つく。

 彼女はしょげる俺の腰に腕を回した。


「記録のリプレイをしませんか?」

「何?」

「過去に戻るわけではないので干渉は出来ません。観賞するだけです」

「上手いこと言うな」

「あんまり面白くないっすよ?」

「馬鹿、シカバ。 ここは持ち上げておくところだろ」

「あ、失言っす!」


 シカバは慌てて口を塞いだ。


「私が観測した人物の記録を貴女に見せます。そこから、解決の糸口を見つけられるはずです」


 シカバの言葉など聞こえていなかったようにメモリーは無感情に話を進める。


「私はハッピーエンドが見たいです。だから、貴女には頑張って欲しいです」

「えっと、じゃあまあ、お手柔らかに頼むわ?」


 記録のリプレイでなにがわかるのかはわからない。だがまあ知らないよりは知っておいた方がいいだろ? ……たぶん。








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