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27. 王都の魔物

 


「近頃、王都内で魔物が頻繁に出現している」

「この前そこの公園にも出たよな」

「ああ。この一週間で、わかっているだけでも十七件。魔物が稀に王都内に侵入してくることはあってもこれ程高頻度ではなかった」


 ここ最近ムスリクやエペが頻繁に駆り出されているのはこの件が関係しているのだろう。ムスリクのため息の数も増えている気がする。俺のせいが大半かもしれないが、それを除いても増えている気がする。



 ***



「何か手助けしてやりてえんだけどな」

「これも立派な手助けっすよ」


 俺はシカバを腕に抱いて王都内を巡回中だ。魔物なら倒せると豪語して王都内の警備を買って出たのだ。勿論、王都の兵士達も警備を強化している。俺がやっていることはただの気休め、自己満足かもしれないが、あいつらが仕事してるのに俺だけ何もしないのも癇に触るってもんだ。


「でも、エペもついて来てるんだもんな……」

「何? 私がついて来たら悪い?」

「悪かねえけどよ。お前結局俺のお守り役ってことだろ? 俺、仕事増やしてるだけじゃん」

「わかってるなら、じっとしていたらいいんじゃない?」

「それが出来たら苦労しねえよ」


 生憎何もせずにじっと隠れていられるような性分ではない。自分の不甲斐なさに思わずため息をついてしまう。


「今夜にはセイヴとカーマインも帰ってくるわ。そしたらまたセイヴが貴女の側につくから。それまでは、私で我慢しなさい」

「勘違いするなよ。別にエペと一緒にいるのが不満なわけじゃねえよ。俺はお前達のお荷物になるのが嫌なだけだ」

「そう? それならいいわ」

「わかってる癖に」


 エペは楽しそうに微笑む。


「誰も貴女をお荷物だなんて思っていないわよ」

「ならさ、もっと俺にいろいろ教えてくれたっていいだろ? ムスリクだってさ」

「いろいろって?」

「王都の魔物事件のこととかさ。トライバルの仕業なんだろ? そう言うの、教えてくれたっていいじゃねえか」

「ふふっ。不貞腐れているの?」

「違えよ! 隠し事されんのは腹立つって話だ! 報告、連絡、相談! これ、チームにとって一番大事なことな!」

「うん。そうね。でも、隠しているわけではないのよ? まだ確証が持てないだけ。ムスリクは、貴女に余計な不安を感じて欲しくないのよ」


 あいつ、俺を何だと思ってんだよ。餓鬼扱いするな。俺はお前より年上だぞ。と、本人がいたら言ってやりたい。


「前々から思ってたけど、あいつ俺に対して過保護すぎ」

「だって貴女は女神様だもの」

「そうだけど。あいつは元男だって知ってるのにさ」

「元が男だろうと今の貴女が女性で女神なのは事実でしょ?」

「そういうもんかね」

「ええ、たぶんね。彼の考えていることを正確には私もわからないけど」

「へー。俺、お前らはツーカーの仲かと思ってたけど」


 何かと二人でいるような気がしていたが、気のせいだったか。


「私達は魔王討伐の為に組んだパーティ。存在を知ってはいたけど、以前は話したことなんて殆ど無かったわ。不思議ね。全然関わりの無かった人のこと、今は大切な仲間だと思える」

「俺も?」

「そうよ」

「へへっ。サンキューな」


 自分で聞いておいて照れ臭くなった。


「俺はどうっすか?」

「シカバもね」

「へへへっす!」

「お前そんなにエペと話してるとこ見たことねえぞ」

「横槍禁止っす! 会話量が心の繋がりの強さじゃないっす!」

「へいへい……」


「魔物だあっ!!!」


 鋭い悲鳴と共に怒号する男の声がした。目の前のカフェテリアから人が飛び出して来る。エペが素早く人を避けて店内に飛び込んだ。


「ちょっ、エペ!」


 人をかき分けながら何とか後に続くと、中には人型だが、肌から粘液を出す緑色の魔物がいた。魔物は右手に客であろう女性の手首を掴んで佇んでいる。


「ジンノ、外に出てなさい!」

「嫌だ! 俺だって戦える!」

「戦ったら駄目!」

「え? でもあの人が」


 危ないんじゃ。そう言おうとしたとき、女性と目があった。彼女の目は不安に揺れている。だが、何か可笑しい。


「助けて……彼を、助けて」

「どういうことだよ」

「ジンノ、貴女は兎に角外に外に出て。貴女が触れたら、彼は一瞬で消えてしまうわ。話は後で説明する」


 エペの有無を言わさない強い口調に、俺は頷くしかなかった。



 ***



 暫く、店の中からは激しく暴れる音が続いた。そのうちに王都の兵士がやって来た。音がぴたりと止むと、彼らは一斉に突入して行った。


 それからすぐにエペが中から出て来た。顔に擦り傷が出来て、赤くなっている。


「エペ!」


 俺は彼女に駆け寄って頰に触れた。淡い光を放って彼女の傷は瞬く間に綺麗に消えた。


「ありがとう」

「何があったんだよ」


 エペが店の入り口に目をやると、中から先程の魔物がぐったりと拘束された状態で兵士達に引き摺られて出てきた。その後を女性客が泣きながら出て来る。魔物は小型トラックに押し込まれて何処かへ連れて行かれた。


「最近、王都で頻繁に現れる魔物達、半数が人型なの」


 エペはじっと俺の目を見る。


「その現場には、必ず魔物の身内を名乗る人がいる」

「それって」

「人が、魔物化している」





『魔物化した人間はもう人間ではないのだろうか』





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