ep-018 腹ごしらえをしてました
大遅刻&まともに進まないお話すみません
「はいよ、出来たぞ」
最後に盾の留め具の長さを調整した店主は、それをイブに手渡した。
「ありがとうっす」
「それとそっちの嬢ちゃん。頼まれたメイスだが、いい手入れしてるな、特に問題はなかったぞ」
「ありがとうございます」
礼をしつつ受けとるキュヒール。
「今後とも贔屓してくれな」
「そうさせていただきます」
「これから旅に出るから、暫く顔を見せることは出来ないが、戻ったら直ぐに知らせにいくさ」
「おぉ、そうか。美人が来なくなるってのは寂しくなるな」
「世辞はいいさ。また来るからな」
「世辞じゃねぇんだがなぁ。ま、身体には気を付けろよ」
そう言うと、店主はまたカウンターの奥に座って剣を拭きだした。
「イブ、キュヒール。行こう」
「それじゃっす」
「お邪魔しました」
「おう」
ぞろぞろと店を出る。
空は青く澄んでいて日はまだ天頂にも達しておらず、昼ご飯には少し早めの時間だった。
「それで、次はどうするっすかね」
「私が考えているのは、この後旅に必要な食料品などを買ってから町で昼飯を食べて、覚醒の泉へ向けて出発するという流れなのだが」
「え、今日出発するっすか?」
「あぁ、ひとまず覚醒の泉でイブの力を引き出してから色々な事を始めていった方がいいと思うんだ」
「このサーベルの使い方の練習とかもしなくていいんすか?」
「覚醒の泉の力で筋力が上がったりするらしいからな。筋力がない時の状態で剣に慣れても、急に筋力が上がってしまったら、それを直すのにまた剣に慣れるのと似たような時間がかかるとすると、先に覚醒の泉に行ってしまった方が、時間がかからなくてすむんだ」
「確かに、覚醒の泉までは往復一日半しかかかりませんし、そうした方が手間にならずにいいとは思いますね」
「なるほどっす」
「その覚醒の泉に行くのってそんなに危なくない感じなのかな」
「ゴブリン位しか確認されてないな」
「うーん、それなら大丈夫かな」
「ということは、次は食料を買うっすか」
「あぁ、それも馴染みの店があるからそこで買っていっていいか?」
「それでいいっすよ」
「じゃあ早速行こう」
▽ ▽ ▽
食料品を買い込んだイブ達は、近くにあった食堂で昼食をとっていた。
「なんか、緊張してきたっすね」
「防具まで着けてると、本当に旅するんだって感じがするしね」
「そこまで気負う必要はないさ。どんなことでも私が何とかしよう」
「頼もしいっす。ソールが仲間になってくれて良かったっすよ」
「誉めてくれなくていいさ」
「ソールは謙虚ですよね。謙虚すぎるくらいに」
「そうか?」
「頑張ってくれるのは良いことですけどね」
そう言うと、キュヒールは一杯水を飲んだ。
そこで会話が一旦終わり、イブ達の間に沈黙が流れた。
「じゃあ、そろそろ行くっすか」
イブがすっと立ち上がる。
「よし、出発だ!」
「あぁ!」
「わかりました」
イブの言葉に零が元気のいい声を上げる。
それを横から聞いていた他のお客達は、零の分の声一人分が多かった事に首を傾げていたのだった。