起
怨霊蔓延る貴族の時代。
浅葱に白の狩衣…烏帽子をした成人男性は、口に小さく呪の言葉を乗せ、二本の指を立てた。
「ー…宿動飛空っ!」
言葉と共に空を切った一枚の紙は光を帯び、その形を白い鳥へと変える。放った者の上を旋回し、そして真っ直ぐと目的へと飛んで行く。
「……」
いつものように四方八方を見回り、結界の解れが無いかを見て回る。人が出向くよりよっぽど効率的で、よっぽど早い。そして今日はそれに加え、もう一つの役割を与えていた。
「主様、頼光様がお越しです。」
式を飛ばしてから空に意識を飛ばした人物は単衣に身を包んだ濡羽の黒髪の女に声を掛けられ、ややあって首を傾げる。
「頼光が?……さて、約束をしていたかな?」
「いえ。しかし、何やら急ぎの用向きとか…。」
「急ぎ?…やれやれ……摂政関白殿に続き、我が友までとは…都人は何を生き急いでいるのか……」
言葉の途中からどすどすと足音が近づき、光を入れるために上げられた御簾を潜り男が一人現れた。刀を差し、黒の束帯のその姿は貴族を守る武士のもの。目元涼しくも日に焼けたその顔は、意志の強い目も手伝い締まって見える。武士団に属するこの男は、『源頼光』。この邸の主の数少ない友人である。
「晴明、邪魔するぞ。」
「構わん。丁度酒を飲もうと思っていたところだ。お前もどうだ?」
「貰おう。」
頷きと共に返ってきた言葉に笑むと、すぐに先ほど頼光の来訪を伝えた女が酒を持って現れる。
「ありがとう、氷華。」
「他にもご用あらばお申し付けを。」
「いや。それより、先の件を頼むよ。」
言うなり二本の指が空を切ると、女はふわりと漂う光へと姿を変えた。それを目で追った後、頼光が茣蓙へと座る。
「飲みながら話をしても?」
「性急だな、頼光。余程の急ぎか?」
「ああ、民たちにとってな。」
頼光の言葉に僅かに眉を寄せる。
「お前もか。」
「お前も?」
「いや、いい。気にするな。話せ…」
訝しみつつも、頼光は酒で一口口を湿らせ話し始めた。
今まで読み専だったのですが…勢いって大事ですね…。
本当は2月21日に間に合わせたかったのですが(晴明誕生日)間に合わなかったので、新年度に新しいことを、と思い開始しました。
宜しくお願いします!
とか書いてから、二年以上放置してました。二年放置した作品を続けるのは無謀でしょうか?(笑)
こんな作者と同じでまったりお付き合いくださる方よろしくお願いします。




