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闇の聖女は夜輝く  作者: 尾久沖ちひろ
第Ⅱ章 暗黒に生まれし者達 ~Out of Heaven~

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【第Ⅰ章の振り返り】

「あなたは……照朝(テルサ)……!?」

「輝夜(カグヤ)……な、何でここに……!?」



 日本在住の双子姉妹、明智輝夜(あけちカグヤ)と明智照朝(あけちテルサ)はウルヴァルゼ帝国と栄耀教会によって異世界へと召喚された。



「お初にお目に掛かります。私は栄耀教会(えいようきょうかい)の教皇、ラモン・エルハ・ズンダルクと申します。──失礼ですが、どちらが『聖女』様でいらっしゃいますかな……?」



 ウルヴァルゼ帝国では約五十年前から、莫大な瘴気が引き起こす厄災『邪神の息吹』に見舞われ、深刻な被害を出していた。

 事態を打開するためにウルヴァルゼ帝国は、栄耀教会が秘匿していた秘術『招聖の儀』によって、厄災を鎮める力を持つ乙女──『聖女』の召喚を決行したのだ。



 三百年前の王国時代に史上初の『儀式』が行われ、その時もニッポンから初代『聖女』が召喚された。

 彼女が持つ光の極大魔力によって国内の瘴気は浄化され、当時の『邪神の息吹』は終息、ウルヴァルゼ王国は帝国へと発展して、以後は厄災の無い安定した時代が二百五十年も続いていた。



 そうした成功の歴史から、今回の『邪神の息吹』でも『聖女』を召喚することが決定、史上二度目となる『招聖の儀』が行われた訳だが──



「御覧の通り、召喚されたのはお二人。これは全く想定外の結果です」



 どちらが『聖女』か確かめるため、カグヤとテルサの魔力鑑定が行われた結果、



「す、素晴らしい……! これはまさに、三百年前の初代『聖女』様と同じ御力! 太陽と見紛(みまご)うほどの光の魔力! あなた様こそ、サウル神の加護と祝福を賜(たまわ)りし当代の『聖女』に違いありませぬ!」



 初代『聖女』と同じ光の極大魔力が、テルサに宿っていることが判明した。



 しかし、一方のカグヤに対しては、



「これは……鑑定水晶の故障か?」



 鑑定水晶は何の反応も示さない、すなわち魔力が皆無という結果が出された。



 生物なら多寡(たか)に関わらず必ず保有しているはずの魔力がカグヤには無い。

 不可解な鑑定結果に首を傾げながらも、誰もがテルサこそが当代の『聖女』と認めたのだった。



「大逆の罪人カグヤ・アケチ、お命頂戴仕(つかまつ)る」



 その夜、ゼルレーク聖騎士団長とその息子ラウル、ラモン教皇の孫ザッキスら聖騎士団の部隊がカグヤを襲撃した。



「──抹殺して下さい、カグヤを」



 彼らを差し向けたのはラモン教皇の意志であり、それを依頼したのはテルサ。



 カグヤは異世界に召喚される直前まで、両親と、一家が世話になっていた教主の計三人を殺害した罪で逮捕、拘置所に収容されていた。



 そんな彼女への殺意からテルサは栄耀教会に復讐の代行を依頼、テルサの機嫌を損ねては今後の活動に支障を来(きた)すと考えたラモン教皇は、ゼルレーク聖騎士団長にカグヤ暗殺を命じたのだった。



 恐怖と絶望のまま暴力を振るわれ、為す術無く止(とど)めを刺されようとするその瞬間、突如としてカグヤの身は聖騎士団の元を離れ、地下に建造された『冥獄墓所(めいごくぼしょ)』へ転移した。



「渇く……!」



 理解の及ばない事態は続く。

 突然の襲撃と不可解な転移に混乱するカグヤの前に、墓所に葬られていた罪人の一人が、ヴァンパイアと化して復活して現れた。



「あの、あなたは、どなたですか……?」

「ダスク、だ。カルディス王弟殿下に仕える騎士、だった……」



 異世界から召喚されたばかりのカグヤと、三百年後の世界に蘇ったばかりのダスク。

 次々に起こる出来事に戸惑いながらも、二人は協力してサウレス=サンジョーレ曙光島からの脱出を試みる。



「──滅せよ、悪しきヴァンパイア」



 しかし脱出の道中、ゼルレーク聖騎士団長たちと再度遭遇、交戦したダスクが深手を負ってしまう。



 窮地の中、自らの力を自覚し始めたカグヤが念じると、二人は聖騎士団から逃れて大聖堂の外へ転移、警備を突破してサウレス=サンジョーレ曙光島からの脱出にも成功した。



〈正解だよ。僕の名はジェフ。そしてこの子はセレナーデ。宜しくね〉



 サウレス=サンジョーレ曙光島から帝都エルザンパール本土へ逃れたカグヤとダスクの前に、黒猫セレナーデを通じてジェフ・デルク・フェンデリンと名乗る調教術師(テイマー)が接触してきた。



 警戒しながらもジェフの案内に従って地下水路を通り、案内された先は魔術師一族と名高いフェンデリン家の館の地下室。



「如何にも。ジェフの祖父、宮廷魔術団総帥オズガルド・デルク・フェンデリンだ」



 ジェフが使役するトカゲを通じて、『招聖の儀』と魔力鑑定の様子を盗み見ていたオズガルドは、栄耀教会との政治闘争を有利に進めるため、そしてカグヤが秘める謎の魔力への興味から、二人の身柄の保護を申し出てきた。



「分かりました。まだあなた方のことを完全に信用した訳ではありませんが、ご厚意に甘えさせて頂きます」



 異世界から召喚された、謎多き力を宿すカグヤ。

 処刑され、三百年を経て蘇ったダスク。



 闇夜を行く二人の物語がここから始まる──。

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