表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
完璧すぎて断罪された悪役令嬢、間違えることにしたら人が助かりました 〜完璧だった私が、間違いを選んだ理由〜  作者: はねださら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/20

第11話 悪役令嬢の選択

 静寂が、落ちた。


 先ほどまで確かに存在していたざわめきは、完全に消えている。


 誰もが、言葉を失っていた。


 当然だ。


 この場は、“抗うこと”を前提に作られている。


 否定し、弁明し、証明し、そして裁かれる。


 それが、この儀式の流れ。


 なのに。


 私は、それをしなかった。


 ――だから、止まる。


 すべてが、一瞬だけ。


「……リリアーナ」


 王太子の声が響く。


 低く。


 抑えられているが、明らかに動揺が混じっている。


「今の発言は――」


「そのままの意味です」


 私は、言葉を重ねる。


 隙を与えないように。


「すべて、私の責任です」


 はっきりと。


 迷いなく。


 その言葉に、空気がわずかに揺れる。


 ――戻ろうとする。


 いつもの流れに。


 いつもの結論に。


 だが。


 それでは終わらない。


「違います!」


 セラフィナの声が、再び響いた。


 今度は、先ほどよりも強く。


 必死に。


「彼女は……彼女は、確かに厳しい行動を取りました。でも、それは――」


「セラフィナ」


 王太子が制する。


 だが。


 今度は、少しだけ遅い。


「彼女は秩序を守ろうとしただけです! それを、すべて罪として扱うのは――」


「もういい」


 低く、はっきりと。


 今度は、完全に止める。


 セラフィナは、息を詰まらせた。


 言葉が、続かない。


「……なぜだ」


 王太子が、私を見る。


 その視線は、先ほどとは違う。


 明確な疑問。


 そして――


 わずかな、苛立ち。


「なぜ、抗わない」


 その問いは。


 この場にいる全員が抱いているものだった。


 私は、ほんの一瞬だけ考える。


 答えは、いくつもある。


 だが。


 ここで言うべきものは、一つだけ。


「……抗う必要がないからです」


 静かに答える。


「必要がない?」


「ええ」


 私は頷く。


「この結論は、すでに決まっている」


 ざわめき。


 小さく。


 だが、確実に。


「証拠も、証言も、配置も」


 私は続ける。


「すべてが、この結果に向かって整えられている」


 視線を巡らせる。


 観客。


 貴族。


 教師。


 すべて。


「ここで私が何を言っても、変わらない」


 事実を、ただ述べる。


「……それは」


 王太子が、言葉を選ぶ。


「君の推測だ」


「いいえ」


 私は、即座に否定する。


「確認済みです」


 その一言で。


 空気が、再び変わる。


「……何を確認した」


「構造を」


 はっきりと言う。


「この儀式の」


 沈黙。


 誰も、すぐには反応できない。


 当然だ。


 それは。


 “見てはいけないもの”だから。


「……リリアーナ」


 王太子の声が、わずかに低くなる。


「言葉を選べ」


「選んでいます」


 私は微笑む。


 完璧に。


「だからこそ、こう言っているのです」


 一歩。


 前に出る。


 視線が、さらに集まる。


「これは、裁きではない」


 はっきりと。


「“維持”です」


 その言葉が。


 場に落ちる。


 重く。


 確実に。


「……維持?」


 誰かが、呟く。


「ええ」


 私は続ける。


「秩序の。均衡の。そして――」


 ほんの一瞬だけ、言葉を区切る。


「責任の所在の」


 沈黙。


 その意味が。


 ゆっくりと、広がる。


「……つまり」


 カインが、ぽつりと呟く。


「誰か一人に押し付けるための、装置ってことか」


 私は、答えない。


 だが。


 それで十分だった。


 空気が、ざわめく。


 今度は、抑えきれない。


「……ありえない」


「そんな……」


「だが……」


 疑念が、広がる。


 ほんの少しだけ。


 だが、確実に。


「……リリアーナ」


 王太子の声。


 今度は、はっきりと揺れていた。


「それを、今ここで言う意味は何だ」


 良い問いだ。


 私は、ほんのわずかに笑った。


「簡単です」


 そして。


 はっきりと。


「利用するためです」


 沈黙。


 完全な沈黙。


「……何を」


 王太子が、低く問う。


「この流れを」


 私は答える。


「この構造を。この儀式を」


 一歩。


 さらに前へ。


「すべて、そのまま使う」


 視線が、集まる。


 逃げ場はない。


 最初から。


 だからこそ。


「ここで抗えば、この構造は維持される」


 私は言う。


「“問題はなかった”として、また繰り返される」


 沈黙。


「でも」


 ほんのわずかに。


 口元が緩む。


「受け入れれば、違う」


 その意味を。


 誰も、まだ理解していない。


「責任は、私に集中する」


 私は続ける。


「そして、その責任は――」


 一瞬。


 王太子を見る。


「“一つでは足りなくなる”」


 ――。


 その言葉の意味が。


 ゆっくりと。


 広がる。


「……お前は」


 王太子の声が、低く震える。


「何をするつもりだ」


 私は。


 答えない。


 ただ。


 静かに。


 微笑んだ。


 完璧に。


 ――そして。


 ほんの少しだけ。


 崩して。


「決まっています」


 そう言った。


「この舞台を、壊すのです」


 沈黙。


 誰も、動けない。


 誰も、言葉を持たない。


 ただ一人。


 セラフィナだけが。


 震える声で、言った。


「……そんなことをしたら」


 私は、彼女を見る。


 真っ直ぐに。


「分かっています」


 静かに。


「すべて、崩れます」


 それでも。


「だからこそ」


 私は、目を閉じる。


 そして。


 開く。


「意味がある」


 その瞬間。


 すべてが。


 確定した。


 もう、戻らない。


 戻れない。


 この先は。


 ただ。


 進むだけだ。

第11話まで読んでいただきありがとうございます。


ここで主人公の「受け入れる理由」が初めて明確になりました。

ただの諦めではなく、“構造を壊すための選択”です。


王太子・聖女・周囲の人間、それぞれの価値観がここで大きく揺れ始めています。


次はいよいよ第1章のラストです。

ここまでのすべてが繋がり、「なぜこの選択が必要だったのか」が一つの形になります。


ここまで読んで少しでも気になると思っていただけたら、ブックマークしていただけると嬉しいです。

最後まで一気に行きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ