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私、ただの料理人なんですけど、どうやら世界を救ってしまったらしいです  作者: 時雨
第一部:能ある料理人は爪を隠したいけど隠せない
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第五話:ドラゴンのステーキ

 依頼をこなし、順調に実績を重ねていく日々。ある日の昼食時、コノハがふと呟いた。

「ドラゴンの肉って、美味しいのでしょうか?」

 その一言に、レオンは飲んでいた水を噴き出しそうになった。


「コノハさん、何を言い出すんですか……。ドラゴンの牙や内臓は高価な素材や薬になると聞きますが、肉を食べたという話は聞いたことがありません」

「そういえば、ドラゴンって言やあ、強い魔獣の代表だよな!戦ってみてえ!」

 ガルムは目を輝かせ、全く話が噛み合わない。


「ちなみに、ドラゴンはドワーフ王国の、さらに北の山奥に生息しているという噂ですね。」

 レオンが呆れつつ知識を披露すると、コノハの目はきらりと光った。

「行きましょう!ドワーフ王国へ!」

「えっ?本当に行くのですか?!」

「未知なる食材が私を呼んでます!善は急げですよ!!」

 こうして、一行の次なる目的地は、ドラゴンの味を確かめるという、前代未聞の目的のために決まった。



 輝石のドワーフ王国。名前の通り、ドワーフ族が住んでおり、ドワーフ製の武器や貴金属はすごく出来が良く、高価に取引されている。

 その入口は、巨大な岩山をくり抜いた壮大な門構えだった。屈強なドワーフの門兵が、一行を呼び止める。

「止まれ。訪問理由はなんだ?」


コノハは満面の笑みで答えた。

「ちょっと、ドラゴンの味見をしようと思いまして!」

門兵達は一瞬驚いた表情をし、その後怪訝そうな顔で一行を見た。

「彼女の発言は冗談です!我々はギルドの依頼で、ドラゴンに関する調査に参りました!」

レオンが慌てて訂正し、なんとか通行許可を得ることができた。


宿屋の一室で、レオンはコノハを軽く窘めた。

「コノハさん、いくらなんでも正直すぎますよ!」

「すいません。つい本音が……」

てへ、と舌を出すコノハの愛らしい笑顔に、レオンは深いため息をつくしかなかった。


「結果オーライだ、いいじゃねえか!」

とガルムが大笑いしている。



 翌日、レオンの提案で、一行は武器のメンテナンスのために鍛冶屋を探すことにした。街の一角にある、古びたが腕は確かそうな鍛冶屋の扉を開ける。頑固そうな壮年のドワーフに武器の手入れを頼むと、彼はガルムのハルバードとレオンの剣を手際よく手入れしてくれた。

 最後にコノハが腰の短刀を差し出すと、ドワーフの表情が一変した。

「お、嬢ちゃん……その短刀は……。まさか、コズエ嬢ちゃんの妹か?」

「コズエは姉ではなくて、私の母です。母をご存知なのですか?」

コノハが驚いて尋ねると、ドワーフは相好を崩し、嬉々として語り始めた。


 昔、この街が魔獣の被害で困っていた時、颯爽と現れて問題を解決してくれたのが、コズエという黒髪の冒険者だったこと。そして、この短刀はその礼として、彼が最高の素材と技術で打ち上げた一品であることを。

「お母さんが……」

コノハは、知らなかった母の活躍を誇らしく思った。一方、レオンとガルムは「やはり血は争えないのか」「やれやれ、親子揃ってか」と小声で囁き合っていた。

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