第二十六話:穢れの核、そして天からの光
地下深く。レオンたちは、ついに洞窟の最深部に到達した。
そこは巨大な空洞になっており、中央にはおぞましい存在が鎮座していた。
人間の心臓を何百倍にも膨れ上がらせたかのような、黒く脈打つ巨大な闇の結晶体。
それが、世界樹を蝕む『穢れの核』だった。核からは、絶えず穢れの粘液が溢れ出し、周囲にはこれまでで最も強力な魔物がうごめいている。
そして、核の前には一体の巨大な魔物が守護者のように立ちはだかっていた。いくつもの魔物を繋ぎ合わせたかのような、醜悪なキメラ型のモンスター、『アビス・ウォッチャー』だ。
「あれが……親玉か!」
「全員、最大火力でいくぞ!」
四人は最後の決戦に挑んだ。しかし、アビス・ウォッチャーは想像を絶する強敵だった。あらゆる魔法を吸収する闇のオーラをまとい、その巨体から繰り出す攻撃は、ガルムの防御さえも打ち破る。四人はたちまち苦戦を強いられた。
「くそっ、攻撃が通じねえ!」
「再生能力も高い。まずいな……」
クラウスの顔に焦りの色が浮かぶ。誰もが消耗し、万策尽きたかと思われた、その時だった。
突如、洞窟の天井、すなわち分厚い大地と世界樹の根を貫いて、一本の温かい光が差し込んできたのだ。
それは、地上でコノハたちが完成させた『生命のスープ』の光だった。ルミナが祈りの歌を捧げ、エルフの秘術によってスープが世界樹の根に注がれると、その浄化の力は、地下の最深部にまで到達したのだ。
光を浴びたアビス・ウォッチャーが、苦しげに身をよじる。穢れから生まれた彼にとって、生命力に満ちた光は猛毒だった。闇のオーラが、わずかに薄らぐ。
「――今だ!」
レオンはその好機を見逃さなかった。
「ガルム、突っ込め!」
「おうさ!」
ガルムが渾身の力で突撃し、ボスの体勢を崩す。
「アリア!」
アリアが浄化の魔力を込めた光の矢を放ち、ボスの動きをさらに鈍らせる。
「クラウス、一点集中だ!」
「分かっている!」
クラウスが詠唱を完了させ、巨大な氷の槍を創り出す。
そして、レオンは全身の魔力を剣に込め光の刃を形成した。
「これで、終わりだ!」
四人の力が一つになった最後の一撃が、アビス・ウォッチャーの心臓部を正確に貫いた。断末魔の咆哮を上げ、ボスモンスターは塵となって消滅した。
残るは『穢れの核』のみ。四人は残った力を振り絞り、脈打つ闇の結晶体を、完全に破壊した




