にーにーのばーか
「にーにーのばーか」
「バルム…!」
「もう知らない!」
ぷいっと顔を背けると、にーにーは悲しそうに目を伏せた。
「バルムとの約束を反故にしたのは謝るよ。ただちょっと急用ができて…」
「綺麗な女の人とお食事に行ってただけでしょ!」
「いやそれはその」
にーにーはこともあろうに、今日僕とのデートの約束をすっぽかして女性とデートしていたのだ。
信じられない!
「どうしてそんなことしたの?」
「いやその…あの人は皇族からの使者で…断れなくて」
「皇族からの使者?」
なんでまたリュキア教ではなくミノス教に皇族からの使者が来たのだろう?
にーにーは嘘をついてる様子でもないし。
「なんのご用だったの?」
「最近リュキア教の神の愛し子探しが加速しててね。国教だからと皇族も一緒になって探しているらしい。心当たりはないかと聞かれたけど、とりあえず誤魔化して帰らせようとしたらデートに付き合ってくれたら帰ると言い出してね」
「ああ…」
にーにーはイケメンだから、その女の人もついついそう言ってしまったのだろう。
「じゃあその女の人とは何もないの」
「ないよ」
きっぱりと言い切るにーにーに、ちょっと安心した。
「そういうことなら許してあげる」
「バルム!ありがとう!」
ぎゅうぎゅうと僕を抱きしめるにーにー。
「バルムに嫌われたら生きていけないよ」
「ふふ、大袈裟だなぁ」
「いや、本当に」
そう言うにーにーはどこか苦しそうで。
ちょっと言いすぎたかな?
「ごめんね、にーにー。意地悪して」
「いいよ、気にしないで。嫌われてないならそれでいいから」
「大好きだよ、にーにー」
「俺こそ愛してるよ、バルム」
お詫びに頬にキスをすると、にーにーは僕の顔中にキスをする。
「ふふ。にーにー、くすぐったい」
「愛してるよ」
「僕もだよ」
お返しに今度はにーにーの鼻先にキスをする。
にーにーは言った。
「俺、今本当に幸せ」
「僕もだよ」
まだ若干にーにーを連れ回した女性への嫉妬はあるけど。
にーにーにこんなに愛されているのは僕だけだからね!
「にーにー」
ぎゅっと抱きついて今度は唇にキスをした。
「我慢が効かなくなりそう」
「僕はまだ子供なんだからだめだよ」
「わかってるよ…生殺しだ」
真面目な顔でそんなことを言うにーにーに笑う。
にーにーは本当に可愛いなぁ。
 




