23.ダンョンの出来高
しっかりと食事をとった後は、寝ていた間のことを聞いた。
イェータが側近の再選定に入り、多少の混乱はあるものの、比較的情勢は安定していること。
捜索に出ていたルチアーノが無事救助したこと。
各地の捜索も進みだし、人口は増え続けていること。
「ですので、食料事情を早々に解決していき、他国との交渉に入りたいと思っています」
他国に自ら働きに出ている者、捕虜となっている者、その人たちが安全に戻れるようにすることは重要な課題だ。その為に、最低限の飢えを無くすこと。
飢えは人を狂わせる。それこそ、たった一食の食事の為に犯罪を起こすことになるほどに。
もぐもぐとお腹を満たすと、体の隅々に栄養が行きわたる気がする。
指先を動かしてみれば、血が流れ出し、温かくなっていく。
足先も同じようにストレッチをすれば、ちゃんと動く。これなら午後から動いても問題なさそう。
「午後からダンジョンを見に行こう。スター乗せって」
『勿論です』
「小夜子様、無理をなさってはいけません」
「大丈夫だよ。このもふもふスターの乗り心地はいいし、体力は使わない。それよりもダンジョンの調整をした方がいい。第一弾の食料確保に行きたいから、沢山のマジックバッグを用意して。夕方には配給できるようにしていこう。市役所で名簿を用意してもらって、受け渡しに漏れがないようにチェックする文官も手配して。分量はダンジョンに行ってみないと分からないからそれからで」
「承知しました」
「あらかた配給が終わったら、ダンジョン前に入場チェックが出来るように人員の配置もしていきましょう。他の町にもどれぐらい食料が不足なのか把握する必要があるから、取りあえずの食料を持って行ける人の人選も同時に」
指示を出してから小夜子は我に返った。
あれ?私ってこんな感じで指示出していいんだっけ?
「私、いらないこといいましね」
「いいえ!的確な指示をして頂いてありがとうございます。一先ずはダンジョンの状況を見てから人員の人数を決めるということで宜しいでしょうか?」
「そうですね。それでお願いします。私もダンジョンを造ったものの、体力がなくて倒れちゃったし気になるので」
小夜子はイェータの言葉にホッとしたものの、自分の言葉遣いもまた仕事モードに切り替わっていることに気が付いた。
流石にこれだけ大きなことをするのには、色々と対策が必要だと思う。細かいことは正直分からない。新プロジェクト立ち上げのような気持ちになりながらも、まずは食糧確保だと気合を入れた。
このままいきなりレベル4になって他国との交流が始まってしまっては、混乱が広がる。今はまだ自分たちが目覚めたことで喜びが大きいが、安堵した途端に色んなことが不安になるのは当たり前。やがて不安は不満になる。折角皆が前に進む時が来た。暴動だけは起こって欲しくない。
その為に、まず食事!!
食事をして十分に休憩をとったら、動きやすい服に着替えて行く準備をする。
歩いてもそこまで遠くない場所だ。準備をしてからここを出るにしても、そこまで時間はかからない。ならば先に言って様子を見ておくことだ大事だと、自分のマジックバッグを身に着けスターに乗った。
この屋敷の門番をしてくれている兵士の人に「先に行くから後で追いかけてきて」と無理やり伝言を任せるようにスターと共に駆け抜けていった。
「お待ちください、小夜子様――――――ぁ」という声は、聞こえたような聞こえない振りのような。
歩けば40分はかかったであろう場所には、その十分の1ぐらいで着いた。
近場なだけに、誰かが先に入り込んでいるかもしれないと懸念し、入口で地図を見ながら確認したが、国民は自分たちのことで精一杯でいるお陰で、まだ人影一つなかった。
「良かった。ここが知られていたら、住民が押し寄せてきて、秩序も何もなかった」
『現在ここは小夜子以外には見えないようになってます』
「そうなの?」
『はい。小夜子が大丈夫と許可を出さない限り、誰がここを通っても、ただの小さな穴の開いた洞窟にしか見えません』
森への入口から少しばかり横に逸れた場所にある、洞窟の穴。入口は大きく馬車で入ることが出来程に高さも幅もしっかりある。これが他の人には大人が一人雨宿りに入れるかどうかに見えるということだ。相変わらず、ファンタジー。
「そっか。じゃあ、入ってみよう」
一歩踏み込めば、ダンジョンという洞窟だから明かりがつくのかも思えば、外と変わらない青空と太陽が燦燦と輝いて、昼間の眩しさを模しているかのようだった。
「うっわぁ、眩しいし、意外に暑い」
『野菜の育成を促すためにダンジョン設定がそうなっているのでしょう。設定を変える場合は、守護者が見ることが出来る画面で変えることが出来ます』
「ほーほー」
目が慣れてきて全体を見渡せば、辺り一面畑が広がっている。そしてそれらにはすべて実が付いている。
手前の畑はジャガイモ。次の列が支柱に蔦が巻き付いたカボチャ。つぎにトウモロコシ、サツマイモ、キュウリと数多く実を付ける野菜が所狭しと成っていた。
「凄いね」
更に奥に行くと、葉物といわれる野菜たち。小松菜、キャベツ、ホウレン草と青々としたものが、しかもどれもビックサイズで、虫が食い散らかした様子もない。
地図と共に画面を見れば、何処に何がどれぐらい出来ているのかが一目瞭然にわかった。その上、画面の右端には一週間で考えるなら、国全体なら3% 首都ビーブリッグだけなら、10%と出る。
取りあえずこれらを10回取り終えたら、ビーブリッグは大丈夫ということだ。1つ1つが大きいとはいえ、意外に足りない。
国全体に行きわたるまで、どれだけ必要となるのか。
「やるしかないね」
小夜子は気合を入れた。
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転移した婆様が子狼を拾って孫として育てたら、孫がもふもふ勇者となりました。
書き始めました。




