16.スターの実力
凄く可愛い!
精霊ももふもふで可愛いとか、テンションが上がる!!
完全に豆柴の黒の子犬。
手足と胸、腹はクリームぽい色でとてもプリティ!!
なのに!しゃべり方はしっかりとしていて、丁寧。
一緒に山歩きして見つけられとか、最高!
『精霊が世界に誕生しました。守護者レベルが3になりました』
お?レベルアップした。
新しい命が誕生したから?
何はともあれ、レベルアップもショーユの実が見つかることも嬉しい。
折角だから、蜂蜜や砂糖も一緒に探さないと。
これで食の文化が一気に上がると小夜子は喜んだが、状況が分かっていない一緒に山の探索をしていた者は、いきなりの世界の声に驚いた。
「小夜子!」
「小夜子様!!」
「この子、精霊さんが来てくれたよ。名前はスター。星を意味するんだよ。宜しくね」
「精霊…」
「この世界に来られて数日で、レベル3とは…」
口々に色んな声が聞こえるけど、確かに数日だね。
腹は括ったし、これから頑張ると決めてからラッキーぐらいにしか思ってなかったけど、やっぱり凄いことなんだと小夜子は思った。
だけどこうも思う。
欲望に忠実だった結果だから、ありだよ。
ではでは、早速。
「スター。ショーユの実と蜂蜜またはそれに該当する物、砂糖とか。探して」
『了解しました。地図に掲載します』
ボンと画面が目の前に現れると、そこには色別で点在していた。
ショーユの実が緑
蜂蜜が黄色
砂糖が白
そして何故か、■の赤色が弾き飛ばされていた。
「ねえ、スター。この赤色が遠くに飛んで行ったのは、なに?」
『それはこの国の資材を搾取していた者が、結界の外に弾き飛ばされたのです』
「守護者レベルが上がったから、結界の位置が広くなったことだよね?」
『そうです。この国の者以外、許可なく入れませんから』
「じゃあ、残ったこの青色の■は?」
『他の国で労働に関わっていた者が、その場に残されたのでしょう』
スターのその言葉にルチアーノとマークがものすごい勢いで反応した。
「どこだ!どの場所だ!」
小夜子にそんな風に迫ったところで、土地に番地が掛かれているわけでもなく、守護者しか見えない画面をルチアーノに見せることは出来ない。それにその場所だけではない。あちらこちらに■の青は点在してるのだ。
掴みかかる勢いで小夜子に迫ってくるルチアーノを、スターは豆柴の成犬よりも二回り大きくなって、物理的に止めた。
『落ち着きなさい、王よ。そのような者は一人二人ではありません。集落で話し合って迎えに行くべきです』
静かに諭すようなスターの声と冷気を纏った圧は、皆に冷静さをもたらしたようで、その場にいた者から発せられた紅く燃え上がった焔のような圧が消えた。いや、消されたというのが正しい表現かもしれない。
「すまない」
『あなたが謝るのは私ではなりません。守護者である小夜子にです』
あ、うん。正直ちょっと怖かった。
ライオンが警戒心剥きだして襲ってくるかのような、迫力があったからね。精神耐性が付いてなかったら、漏らしていたかもしれない。
「本当に、すまなかった」
怒られてしょげた猫のように項垂れた頭が可愛いから、仕方ない。許してあげよう。
「本当に仕方ない人。私もいろいろ気になるから、一度戻りましょう」
子供の体の小夜子が歩ける距離だから、そこまで集落から離れていない。陽が落ちるまでにやれることをやらないと。
小夜子は採取したものを急いでリュックにつめ、帰る準備を整えた。
どこまで走れるかと思っていると、フワッと体がもちあげられた。気が付けば小夜子は大きくなったままのスターの背に乗っていた。
『結界を張って進みますので、小夜子が落ちることはありません』
「おお、技術がなくても乗れるって凄い」
『では、参りましょう』
「うん」
小夜子が何もしなくても落ちないというのならば、先ほどの画面を色々と確認しておこうと見ていたが、本当に結界って凄いのだというのがわかる結果になっている。
そこに壁があるかのように、赤色が綺麗に並ぶ。
その場にとどまっていた青は、赤色が入って来れないことを確認できたのか、止まることなく集落の方に向かっている。
ただ数人動く体力がないのか、物理的に囚われているのか、その場に止まったままだ。
「スター急いで」そう言おうと思ったら、既に目の前が集落だった。
あの場所に行くのに一時間かかったと思ったんだけど、帰りは10分。
スターが凄いのか、小夜子の足が遅いのか。
今はそんなことは後でいいんだよと、小夜子は気持ちを切り替えた。
集落も随分と趣を変えている。
色々と確認をしたいところだけど、まずはこの2カ所にお迎えをだすことを優先させようと決めた。




