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11.蝙蝠の羽と黄金虫

次に出てきたのは、洞窟のお約束蝙蝠。

超音波で平衡感覚を奪う攻撃をしてきたが、敵にあらず。ルディが光の球で目くらましを仕掛けて、一気に叩ききっていた。

そこに残ったものは羽1つと魔石だった。


「珍しいものが出たな」

「蝙蝠の羽、珍しいの?」

「ああ、これを身に着ければ、魔力が続く限り地面から30㎝ほど浮きながら歩ける」

「へぇー。微妙だけど、あったらいいもんだね」


激しい山道とか、もっとゴツゴツした洞窟とか、みんなの足手纏いになりそうな私には良いんではなかろうか。元の体でも体力がある方ではなかったけれど、今は更にないからね。

小夜子はいざという時の為に蝙蝠の羽を貰い、ポシェットに入れた。出来れば背中のリュックに入れたいところだけど、いざという時にすぐに使えないのはダメだと思ったからだ。


それからも蜘蛛とか、ムカデとか、あまりうれしくないモノたちが現れるが、敵ではない。たまに蜘蛛の巣に繭があって、開けたらお宝発見というものもあった。


「金!」

「ここに他から誰かがやってくることはないから、この奥に金鉱があるか、黄金虫がいるかだな」

黄金虫って本当に黄金だったりするのだろうか。気になる。気になるけど、時間は大丈夫なのだろうか。

洞窟の中に入って体感時間1時間程。そろそろ引き返さなければ夜営になる可能性も出てくる時間だが、このダンジョンの最奥は近い。

「どちらにしても見つかれば、他国との貿易に役に立ちます。小夜子様は大丈夫ですか?」

「大丈夫」

「では、もう少し奥へ行ってみましょう」


マークの一言でもう少し先に進むことが決定した。

小夜子もそれなりに疲れてはいるが、帰りはあの羽を付けて帰ればいいかと思ったし、何より途中で戻るというのが性に合わない。この洞窟の地図も仕上げたい。


そして最奥と思われる今までは違う、広場みたいな場所に到達した。

「以前より広くなっているな」

「そうですな。ダンジョンが広がっているのでしょう」

「警戒を怠るな?」


みんなが警戒しながらあちらこちらを調べている間、小夜子は画面に現れたダンジョン地図とダンジョン内を照らし合わせながら、違和感を覚えていた。

なんだろう。

何かが違うんだよね。

そう、何かが隠されている、そんな感じ。


ダンジョン地図だけを見ていると、なんでここが空洞?って場所か何カ所かある。ダンジョンなんだし、そんな作りと言われてればそれまでだが、隠し部屋とかテンション上がる言葉も浮かぶ。取りあえず、気にあるところを見てみようと1つ目の違和感がある場所に小夜子は向かった。

壁を叩いてみようかと思ったが、手に怪我をしそうだ。蹴ってみようかと思ったが、流石に大人がすることじゃない。ポーチの中から杖を取り出した。

振り回しても軽いが、剣や槍で叩かれても壊れない不壊の杖。PRGで初期の攻撃力の弱い、だけど壊れないこん棒みたいなもんだ。

この壁とどっちが堅い?

そんなことを競うつもりはないが、興味はある。

小夜子は思いっきり叩いてみた。


あ、うん。どっちも壊れないけど、自分の手が壊れそう。

小夜子の手は痺れた

そんなテロップが流れてきそうだ。


「小夜子?!」

「小夜子様?!」


みんなが小夜子の行動に驚き集まってきた。

「あ、ごめんね。この奥に不自然に空洞があるから、気になって叩いてみたの」

「空洞?」

「今までそんな情報はなかったな。今まで見つけられてなかったのか、現れたのか」

「どっちにしても、調べてみましょう」


ルチアーノとマークは小夜子が示した場所をハンマー見たいなもので叩き始めた。

洞窟内に岩を叩く音が響き渡る。その音を聞き、やっぱり何かあると感じた。間違いなく空洞がある。

こういう時にあるお約束は、開けるためのボタンがあるとか、合言葉とか、ボスがやってくるとか…?


「何か来る!!」

マークの焦った声が響いたと同時に、やってきました黄金の山。

そうボーリングの球のような黄金球が、大量に転がってきたのだ。

「大量の黄金虫か!」


えッ。

これがこの世界の黄金虫?!

ダンゴムシと呼んでたあの虫見たいに丸まって転がってるんですけど?!

穴という穴からこの広場に向かってきている。

広場に到達した黄金虫からみんな倒し始めた。

小夜子は足手纏いだと逃げるか隠れることを選ぶが、どこにもそんな場所はなさそうだった。


「小夜子、蝙蝠の羽を付けろ!」

ルチアーノの声に弾かれたように、ウエストポーチから出した。

何処につけるか迷っていると、ルディが小夜子の手から羽を抜き取り、背中にくっつけた。

すると、フワッと体が持ち上がった。

足場が悪い場所や帰り道、楽に歩けるかも。

そう思った自分を叱咤したい。

足元がおぼつかない場所を歩くとか、練習しないで出来るわけがなかったのだ。初めて泳いで溺れるような感覚でアワアワとするだけしか出来ない。それでも広場中に広がる黄金虫に塗れることが逃れただけでも、良かったと思うことにした。

みんなの戦いを見ていると、少しだけ落ち着いてきた。

黄金虫は足元に群がってぶつかって行くだけで、液体を出したり、魔法で切り込んできたりすることもない。ぶつけられて痣が出来る程の衝撃があるぐらいだ。それでも子供の小夜子ならば、その衝撃でコケ、コケたすきにぶつけられて、更に全身痣だらけという最悪な事態になっただろうという想像は容易にできた。だから、みんなの邪魔をしないで、浮いていることが貢献になる。

さて、黄金虫が居なくなったらあの空洞のところが空くのだろうか?と先ほどまで叩いていた場所をよく見た。少しだけ壁伝いに歩いて行けば、少しだけ飛び出している岩がある。小夜子の子供のお尻なら何とか座れるほどの大きさだ。


浮いているのも疲れる。

ならばそこに腰かけて待っていようと、壁を蹴るように上がっていった。

よし、ここで待っていよう。

小夜子はよっこらせと岩に座った。座り心地はあまり良くないが、一息つけた。

広場中が黄金に染まっていく様子は、圧巻だった。


『黄金虫の黄金』

混ざり物のない、純金。マジックバッグの材料の一つ

高額取引される。

おお!!!!!



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