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12.開かずの扉と前異世界人守護者

広場が黄金に染まった。足の踏み場もないほどの黄金。

いざ戦闘が終わるとアドレナリンがでなくなったのか、現実味がなさ過ぎて、はしゃぐのも忘れていた。

小夜子は場が落ち着いたことを確認し、みんなのところへ戻ろうと岩から腰を浮かせた。

ガタっ。


もしかして岩、崩れる?

そう思った時には、小夜子は落下していた。

ひゃぁぁぁぁ――――――っ。


お尻痛くない。

無意識に瞑っていた目を開ければ、地面から浮いていた。

そうだった。私、羽つけているんだった。

そのことを思い出して小夜子は思わず赤面するが、それはすぐに引っ込んだ。

空洞だと思われ、叩いていた岩が静かに開き始めていた。


え、まさかあの岩を押すことがスイッチ?

んな、馬鹿な。

でもそうだとしか思えない。

「小夜子、大丈夫だったか?」


小夜子は軽く頷いた。それよりも気になるのは、この扉。

先ほどまでいた岩を見れば、岩は少しずれたと分かる感じで止まっていた。

ルチアーノたちは扉となった岩の前で警戒態勢をとる。


「小夜子様、扉から離れてください」

「あ、はい」


岩を見ていた小夜子に、マークから警戒を促される。

だけど小夜子はこの中は危なくないと感じていた。それよりも小夜子を待っていたと歓迎されている気分になっていた。

なんだろう。この感じ。

懐かしい?

わくわく?

寂しい?

扉の中は見えていないのに、何故か色んな感情が溢れていく。

それは間違いではなかったと、中が光で映し出された時に小夜子は思った。


「こ、これは…」

ルチアーノが驚いた声を上げるが、小夜子はそれどころじゃない。

その風景に釘付けだ。

きっと小夜子のように猫に誘われて、日本から来た者がいたに違いない。

こちらの世界では見ることのできない風景がそこに広がっていた。

まるで部屋一式こちらに転移されてきたような。


床の上には畳が敷かれ、その上にはこたつ。そのこたつの上には何故か書類を入れるような収納ボックスとノートパソコンとスマホがあって、座る場所には大きなビーズクッション。

すぐ近くにはミニキッチンがあり、冷蔵庫があった。ベッドを置くスペースはないから、地球に置かれたままだったのか知れない。

この部屋の住民はどんな人物だったのだろうか。見たところシンプルな部屋だし、男性っぽいけれども。


小夜子が中に入ると、パソコンの上に手紙らしきものが置かれていた。

『地球からこの世界に守護者として呼ばれた人へ』


この手紙を読んでいる人がいるということは、私はもうこの世界にはいないということだ。

それはとても残念なことだが、永遠を生きることは出来ないのだから、致し方ない。

ただこれだけは言える。

この世界に来れたことを、光栄に思っていると。

幸せだった。

番のロゼリーと共に、この世界を守護者として生きてきたことは、とても誉なことだ。

だが、老いには勝てない。

この部屋に来る体力もなくなった。

ここに来るのは、今日で最後だろう。

ここを見つけた守護者へ、これをすべて譲る。

一人になりたい時にここに来てもいい。必要な物だけ家に持ち帰ってもいい。

あと、この部屋に出入りできるブレスレットを同封しておく。無くさないように、必ず身につけておいて欲しい。


最後に、この世界を愛しんでくれとは言わない。

ただ守護者として、この世界を楽しんでほしい。

あなたの幸せを願っている。


幸太郎


1枚目にはここを見つけた守護者宛。

そして2枚目は、このパソコンとスマホのこと。

地球でいう2011年までの情報を詰め込んであるデーターが、収納ボックスにあるUSBにあることが書かれてあった。収納ボックスの引き出しには、色んなジャンルのシールが書かれたUSBとそれを幾つか印刷したと思われるA4用紙の束。

A4用紙を何枚か捲ると、まるで転移することが分かっていたかのような内容だ。

多岐にわたる料理のレシピに、地球でいうところのハーブや薬草で作るお手軽なサプリや薬。

酒の作り方、そして何故か色んな野菜や果物の種。その中にもみ殻がついたままの米まであった。


これはかなり嬉しい。

そして守護者レベルが上がれば、このパソコンを使いこなすことが出来るだろうと書かれてある。

その為に魔力を安定させ、まずは守護者レベル3になることだとあった。

どうやらそれまでは電源も入らないらしい。

試しにスイッチをいれるが、うんともすんともいわない。電源などというものがこの世界にないのだから、書かれている言葉を信じるしかない。

小夜子は無くさないようにすぐにブレスレットを身に着けた。

何かが体の中から抜かれたような感覚があった。

魔力登録いたしましたと画面が出た。

電源は入らないけれど、どうやらこれで小夜子が使用可能になったようだ。


よし!と思ったところで、小夜子は我に返った。

テンションが上がっていて、ルチアーノたちの存在をすっかり忘れていた。

「大丈夫だ。他の者は皆、ドロップ品を拾っている」


部屋の外を見れば、ルチアーノ以外は転がっている黄金をマジックバッグに入れていた。確かにアレを拾うとなると時間がかかるだろう。小学校の運動場ぐらいの広場が、全て金で埋まっているのだ。嬉しいを通り越して、まだあるのかと思いたくなりそうな量だ。

きっと薬師のルディが湿布を作ってくれるよ。頑張れ――――!


「小夜子、ここはどういう場所だ?」

ルチアーノの言葉で小夜子はそうかと気づいた。書かれている内容は日本語。きっとルチアーノが想像していることで会っていると思うが、答え合わせをする必要がある。

「ここはね。前異世界の守護者がいた地球での部屋、らしいよ」



読んで頂きありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 偶然好きそうな作品を見つけました。これからも応援しています!頑張ってください!!!! また時間のある時に、ちゃんと読んで感想を送らせていただきます!!!
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