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『海人と柊』~女装男子~  作者: なにわしぶ子
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60話~大晦日~



「ただいま、メイ。」


「おかえりなさいあ。そこに座って。」


メイがワゴンから注射器を出そうとすると、Jは大丈夫自分で出来ると、手慣れた手つきで注射器を取り出すと、自分の身体に薬液の注入を終えた。


「メイは大丈夫?」


自分にも樹木化の兆候が出たという事は、このワームホールを訪れてしまったメイにも現れる可能性があるはず。

勿論、海人さんや僕と違って時空移動を重ねてない分、まだ先の話かもしれないけれど、油断は禁物だ。


「兆候が出てからで大丈夫よ、心配しないでJ。それに私のDNAはひょっとしたら猫になろうと暴走するかもしれないもの。それだと薬液の種類がきっと変わるわ。」


「猫か、DNAについて更に研究したくなったよ。」


Jはそう言うと、海人が眠る傍に行った。海人の風貌は更に変わりはじめていて、もはや元の姿はそこにはなかった。


Jが留守の間、海人は目覚めてメイを見ると驚いていた事。

あと、いくつか会話は出来たものの、やはりすぐに眠りについてしまったという話だった。


「メイが来た扉の向こう側は元々の未来の世界なんだよね、一度海人さんだけ戻したらどうかな?樹木化がそれで止まるかわからないけど、ここにいるよりましな気がする。」


すると、メイの顔が険しくなった。


「上からの許可が出ないの。私が来る事もかなり困難だった話はしたでしょ?

ヒメコと爽を還した功績を上は認めてるけど、兎に角何かしらの結果を出さなければ、それまでは恐らく無理ね。

扉はあっても、あちらから鍵がかけられているわ。こちらからあの鍵穴に差し込む鍵が必要なのよ。今はもう此方から突破が出来ない。」


「そんな……、ホワイトさんにお願いしても?」


「お願いの前にホワイトは既に動いているわ。最近ホワイトの姿を見ないでしょ?それは忙しく色々を駆け回ってくれているから、全てはしぶ子の為に。」


「しぶ子さんの?」


「Jあなた、何故ずっと海人と時間を共にしてきたの?」


「それは担当だったから、僕にとって初めて任された大がかりなこの実験の、目覚めの担当だったからだよ。」


「そうね、私は柊の担当。

そしてホワイトは、しぶ子のいわば担当なのよ。Jや私のそれとはまた意味が違う、大きな役目を持った担当だけど。

J、あなたが海人の為に色々尽くして来た様に、ホワイトはしぶ子の魂の為なら何でもする存在なの。

色々人間には厳しい上層部の中で、ホワイトは異色で、だからこそ私達人間の最大の味方なのよ。」


Jは、ゆっくりと空間を見渡し、ホワイトと出会ってからの、今までの時間を振り返った。


「上層部の事を、まだ僕は未だに理解出来ていないけど、ホワイトさんと目指している方向が同じなのはわかったよ。それなのに僕は目の前の事にいっぱいいっぱいで、全くわかってなかったんだね。」


Jはそう言うと、メイが入ってきた扉の前に立った。


ノブの下には鍵穴があり、未来の世界からの光が差し込んで、こちらの床を鍵穴型に照らしていた。


それはさながら、前方後円墳の様だった。








2019年12月14日


11月末から、海人からJにバトンタッチされた執筆作業は順調に進み、最初は真っ白だったフォルダには、かなりな文字数が蓄えられてきていた。


「今日からは清書って意味で、小説が公開が出来る投稿サイトに、順番に最初から投稿を始めて下さい。ホワイトさんからそう指示があったので。」


Jから告げられたしぶ子は、言われた通りにまず端末に指を走らせた。


「それは海人からも聞いていたから構わないけど、下書きでまずは物語を完結してから投稿した方がよくない?まだ途中の段階で清書だと、現在起きている事に物語が追い付いてしまうかもしれない。そうしたら困らないかなぁ。」


しぶ子は近い未来の起こりうる可能性を心配した。

でも、Jは何か考えがあるのか、それで大丈夫だとホワイトさんからの指示に従って欲しいと言ってきた。






その日の15:36-



1話目の投稿を終えたしぶ子は、とりあえずよくわからないまま、まずはそれを楽しむ事にした。


「これからはここに清書しながら、下書きで物語は今まで通りに書き溜めていけばいいのね?毎度わからないけど、頑張ってみる。」


しぶ子は、そう言いながら部屋のカレンダーを見た。


あと半月で年越しだし、今から忙しくなるのかな。

そう、漠然と思った。







参ったな………。


年越しまであと10日を切った頃、小説投稿サイトへの

投稿を進めながら、Jから聞いた物語を小説に起こす作業は、かなり難航をしていた。


丁度、弥生時代の爽や軍師の下りで、元々その歴史に疎かった事もあり、聞いてもすぐには理解が出来ず、色々を調べる作業にかなりな時間を取られた。


「Jから、なるべく早くって言われていたのに、このままだと全然進まない。」


しぶ子は焦ったものの、それでどうにかなるわけでもなく、半分諦めの境地だった。


すると突如目の前にホワイトが現れた。


「何だか久しぶりな気がする。最近ほったらかしじゃない?私の守護の癖に職務怠慢すぎだと思うんだけど。」


しぶ子は、長年の付き合いであるホワイトに、甘え全開の不平不満をぶちまけた。  


ホワイトは何も言わず、優しい眼で見つめてからしぶ子に指示を伝えた。


『今、目の前にあるそれが視えているだろう?』


「え?あぁなんか鼓みたいな形のトンネルでしょ?」

これが何なの?」 


しぶ子のシックスセンスの目で視ると、大きなトンネルがヴィジョンの中で拡がっていた。


『そこに手を入れて、向こう側にあるものを引っ張り出して欲しい。』


ホワイトからの無茶苦茶な要求に白目になりながら、しぶ子は言われた通り、そのトンネルに右手を突っ込んでみた。


手の先に何かしら触れるものの、掴めない。

これは何?そもそも掴めるものなの?


しぶ子はとりあえず言われた通り、手を必死で伸ばしては触れる何かをこちらに引き寄せようとした。


『お前なら出来るかもしれない。少し試みて欲しい。』


「わかった。意味は全くわからないけど、やってみるわ。」


その日から、色々な作業をこなす傍ら、しぶ子はそのトンネルの向こう側の何かを追い求めた。


しかし、何故だか掴めそうで掴めない。

それにこれが一体何になるのだろう?

そう、いつもホワイトも誰も、その理由を私には教えてはくれない、いつもいつも。


しぶ子はわからないまま、でも、毎日試し続けた。








2019年が終わる12月31日の大晦日-


2020年の年越しまで、あと数時間を迎えようとしていた。

Jに急かされたのに、物語はそこまで進展していなかった。まだまだ、予定の現在付近に追い付くには、あと半月はかかるだろう。


私はミスをしたのかもしれない。

しぶ子は不安感でいっぱいになった。 

私のせいで、海人や柊に何かあったらどうしよう。


ふと見ると大晦日のテレビでは、年末ジャンボ宝くじの当選結果を知らせていた。


事前に10枚購入していたしぶ子は、当選番号とにらめっこをした。結果は300円のみだった。


当選がよく出る売り場までわざわざ買いに行ったのにな。

第六感は本当、博打には全く作用しないんだから。


そんな不満を述べつつ、しぶ子は大晦日独特の

空気を肌で感じていた。



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