44話~しぶ子との初対面~
海人が力強く扉を開けると、スクリーンで見た女性が猫と戯れながらそこにいた。
海人はゆっくりと、背後に立った。
ホワイトに言われるがまま来たものの、そもそも自分の姿は誰にでも見えるのか?声だって届くのか?
それにこの前世の女性、扱いが難しいから、ホワイトの指示に従えって言ってたっけ。
すると、ホワイトの声が脳内に聞こえてきた。
『彼女は、難波しぶ子。
普段から幽霊を成仏させたりしている。他の人間にお前は認識出来ない様、此方で細工をしているが、彼女の眼なら認識は可能。
取り引きをしようと持ちかけるといいだろう。
その方が慣れていて驚かない、頼まれたら嫌と言えない性分。
あと、下手に混乱させない様にして欲しい、彼女は混乱すると、心を閉ざす、暴走をする。』
「難波…しぶ子?子がつくあたりが時代を感じるね。
今の状態は即ち、タイムリープのもっと発展したバージョンって事?このしぶ子が俺の前世ならさ、額田さんみたいに一気に察してくれるんじゃないの?」
『彼女はお前の前世の中で一番能力が強い。ただ、一番心が弱い。』
「ふーん、料理次第って事か。とりあえず、まずはコミュニケーションって事だよね。」
海人はゆっくりと、しぶ子の背後から正面に位置を変えた。
その気配に気づいたしぶ子が、ゆっくりと顔を上げると、ふたりの目があった。
「あなた誰??男??いや、おまけに女装……!??
何か、訳ありな幽霊……??私、きっと疲れてるんだわ。」
しぶ子は心の声を独り言で、駄々漏れにしながら目をそらすと、見なかった事にしはじめた。
本当に扱いが難しそうだと暫し考えた海人は、見た目との混乱をさせない様に女言葉で、わざと話しかける事にした。
「ねー、取引きしましょうよ?
悪い話じゃないと思うんだけど。」
「は?取り引き?じゃあ、やっぱり幽霊なの?
でもやっぱり怪しいし、やはり見なかった事に。」
「折角きたのにそんなの困るう!!ね?取引き
しましょー!早く早く~!」
「と、取引きは、な、何ですか?」
「じ・ょ・う・ぶ・つ♪」
海人は、にっこり笑いながら、警戒心を取るべく、おどけて幽霊アピールをしてみせた。
幽霊なら成仏させないといけない。そんなスイッチに切り替わったのか、しぶ子の態度が変わり、上から下まで、海人の事をまじまじと観察しはじめた。
「あなた幽霊っぽくないし、見た感じ明るいし、幽霊なら?自分で成仏できるタイプだと思う。私忙しいんで、さようなら。」
「何でそうなる……。」
ここまで拒絶されるとおもってなかった海人は途方に暮れた。
それに、この前世と関わって一体どうすればいいというのか、一体何になると言うのか。
すると、ホワイトの声が聞こえた。
『大丈夫、今一度食い下がりなさい。彼女は話を必ず聞いてくれる。そうしたら、彼女を連れて、さっきお前が入ってきた扉を戻り、今のお前の状態を時間をかけて、分かりやすく説明してほしい。』
説明とか言われてもどこから話せば、そう悩みながらも海人は、言われるがまま、しぶ子へ言葉を続けた。
「出来ないから頼んでるんじゃーん!!
あなたの助けがいるのー!ねーお願いだからー!」
「頭痛くなってきた。わ、わかりました!
やりますーっ!!!やればいいんでしょーっ!」
「ありがとうしぶ子ちゃん♪じゃあいこうか!ついてきてね♪」
海人はしぶ子を誘導し、自分がくぐってきた扉をくぐった。
しぶ子は後ろから、挙動不審になりながらついて行った。
扉をくぐると、真っ白な室内の四方八方がスクリーン状態になり
上空から大仙陵古墳を見るそんな映像が流れはじめた。
「ん?古墳がみえてきたんだけど。」
しぶ子は、いきなり目の前に現れた古墳の景色を食い入る様に見つめた。
「そう、古墳。古墳って何かしぶ子はちゃんと理解できてる?」
海人は、探りながら会話を続けた。
「え……お墓でしょ?昔の天皇とか?お墓……
あれ、違ったっけ、言われたらよく理解できてないかも………。」
打ち解けてきた空気を感じた海人は、少し間を置くと、しぶ子の目を見つめてこう告げた。
「古墳はお墓じゃないわよ。」




