43話~真っ白な部屋~
光の渦の中に飛び込んだふたりは、足が地に触れる感覚を感じ、ゆっくりと目を開いた。
そこはただただ、真っ白な空間だった。
「え?何ここ。」
ふたりは辺りを見回し、警戒をした。
「想像を越える事の連続で、驚かなくなっている自分がいます。」
Jか苦笑いしながら、海人に話しかけた。
「思えばお互い、弥生時代を旅立つ時の格好のままだもんね。もう今があれから何時間経ってるとかの感覚すら麻痺してる。」
「僕はてっきり鏡面反射の光に乗った事で、いわば時空間に飛べたと思ったんですが。読みが完全に外れました。」
「いや、実際そうかもしれないよ?とりあえず、古墳の上空に現在俺達はいないわけなんだから。とりあえず、ここが何処かを知りたいよね。」
「実はここは時空の歪みで、永遠にこのままって事も。」
Jの言葉に、ふたりは顔を見合わせて黙りこんだ。
数秒の沈黙の時間が流れた後、海人がいきなり笑いだした。
「ど、どうしたんです海人さん?」
Jは気でも触れたのかと、心配な顔で海人を見た。
「いや……俺さ、今……死にたくない!!ってまず思っちゃったんだよJ。
笑っちゃうよね。。
言葉では柊の為とか語っている癖してさ。
ヒメコさんや爽さんを、元の世界に還したヒーロー気取りでさ。
殺された男王の事はあっさり見捨てて
別に普通な生活を送れたかもしれないイヨに重責を負わせて……
挙げ句の果てには、前世の額田さんに過去の記録を消してもらう様、お願いをするだけしてさ。
額田さんが、今から離縁させられるって聞いておきながら、あ、そうなんだみたいな反応しちゃって。
大海人皇子と添い遂げる、そんな道に変える事も出来たかもしれないのに、俺は何もしなかった。
いつも俺は、まず、自分…自分、自分!!
自分が第一だった……
最低すぎ………
そして、ここにきて死にたくないとかさ。
本当に自分の最低さに呆れる。。」
海人は、その場に崩れ落ちる様に座り込んだ。
「そう仕向けたのは僕です。それを言うなら僕の方が罪は重い。
死にたくない気持ちは、柊さんの事があるからだとも言えます。だから、そんなに責めないで下さい海人さん。」
Jはそう言いながら、海人の肩に手を置いた。
するとその瞬間、
『その気持ちを、いかなる時も忘れてはいけない。』
と、ホワイトの声が真っ白な空間に響き渡ったかと思うと、いきなり目の前にスクリーンが現れたかのような、映像がひろがった。
「な、何これ……。」
海人が呆然と見上げると、そのスクリーンの中には、猫と遊ぶ女性がいた。
「これ、弥生時代でも飛鳥時代とかでもないですよね。21世紀辺りかな。」
Jが、服装等の情報から時代を予想した。
『ご名答。2019年の日本。21世紀のこの女性は、海人お前の前世になる。正確には、お前の直近の前世。』
ホワイトがそう言うと、空間に扉が現れた。
『柊を助けたいか?海人。』
ホワイトが、海人に静かに問いかけた。
「助けたい。俺は最低の自己中かもしれないけど、柊の笑顔をみたい気持ちに嘘はないんだ。」
『では、力を貸そう。その扉を開くといい。
2019年10月13日午後5時の、お前の前世の部屋に通じる扉だ。
ただひとつ約束をして欲しい。彼女はかなり扱いが難しい。声のかけ方は私の指示に従ってほしい。』
「扉開いたら21世紀って……。でも、俺、今、女装だよ?21世紀にこの格好、大丈夫なの??」
『その辺りは任せる。』
「いや、やっぱり上層部って、こんな事色々出来る癖してさ、色々楽しんでんでしょ!?俺も最低だけど、もっと最低だよな!」
『早く行かなければ、扉が消えるぞ、海人。』
「あぁもうわかったよ!行ってくるよ!行けばいいんだろ!!!」
海人は取っ手を掴むと、力強くその扉を開いた。




