37話~古事記を変えろ~
「トヨ様のお陰でクニがひとつにまとまりました。何とお礼を言ったらいいのか。」
女王の住居に移り住んだ海人とJの元へ、ハヒコが訪れ食事の支度をしていた。
「でもJ、次の皆既日食に私達……マシンで移動する予定なんでしょ?この状態をどうするつもりなの?」
皆を騙すにはまずは日頃の鍛練から!と、海人はJといる時ですら女性に成りきって過ごしていた。
そんな海人の問いに、Jが答えた。
「メイから毎日歴史のデータを送ってもらってるんです。僕なら未来の変化がわかる。弥生時代のいい所は、文献にあまり残らない所なので、今のこの状態ですら曖昧に出来ると考えていたのですが。」
「確かにそうよね、口伝えというか、そんなのは残るだろうけど、文字がそもそもここにはないんだものね。でも、何か問題が??」
「残らないと僕も思っていたので、クニの安泰を優先したわけなんですが、トヨさんの話がどうやら、もう少し先の文献に詳しく載ってしまってるようなのです。」
「先の文献って?」
「古事記です。このまま行くと、トヨである海人さんがいわば、天皇の祖として記録されてしまうです。」
「そんな、古事記は神話じゃないの?ファンタジーっていうかさ。あ、口調がすぐに戻っちゃうな……えっと……それで、それが何かまずいのかしら??」
海人が口調に四苦八苦しながら、疑問を投げかけた。
「それがわりとトヨさんの風貌から、ホログラムの事やらが詳細に記されていて、もはや神話じゃなくなってるんです。
それ自体で星レベルな干渉は無さそうなんですが、ヒメコさんと爽さんが戻った後も、柊さんに変化がないのはそのせいなのかもしれません。
なのでこの痕跡を変えたい、曖昧にしたい。
恐らくそんな小さな事が、海人さんの未来の一部分に響いてるはずなんです。」
「なるほどなぁ。。でもさ、そもそも古事記作ったのって一体誰なの?じゃあいっそ、こちらから少し説明してさ、書くのやめてもらいましょうよ!」
するとJが、その言葉にヒントを得たのか、雷に打たれたかの様な表情を浮かべた。
「そうですね……無茶苦茶なようですけど、古事記を作った本元、そこにお願いをするのが近道かもしれません。
ところで話が変わりますが、ハヒコさんには娘さんがいましたよね?」
「えぇ、最近は私の背と並ぶ程に成長し、手伝いをよくしてくれております。」
ハヒコが急に話を振られて、困惑しながら答えた。
「その娘さんと海人さんは、これからいつも一緒に行動してください。自分の後継者であると、民の皆に浸透させてください。」
「私の娘が??後継者に!?」
ハヒコが口をあんぐりとし驚いた。
「女王の傍にいたのはハヒコさんあなたです。あなたならきっとこのクニをはひとつにまとめる道筋を作れるはず。
ただこのクニは、暫くは女王を立てた方がよいようです。なので、娘さんに表向きに女王の跡を継いでもらい、裏であなたが王の役目を担うんです。」
ハヒコが、完全に固まってしまい不安気な表情を浮かべ、海人の顔をみた。
「なるほど俺が、いや、私が、この娘がトヨ2代目だから宜しくね!って触れ回ればいいのね?ハヒコさん大丈夫!私がちゃんとやってみせるから!」
「隣国の男王の時にこそ、もう少しその手順を踏むべきでした。同じ轍を踏むわけにはいきません。
あと、魏の軍師殿にも色々お願いをしておきましょう。いざとなった時に新しい女王の力になってもらえるように。そうすれば、僕と海人さんはここを安心して旅立てる。」
「じゃあ、諸々が整ったら、最初の目標の着地点に私達は飛ぶの?待ってよ、最初の話の古事記はどうすんのよ、古事記の話を出したのはJじゃない。」
「はい。なので新しい女王を見届けたあと、僕達は古事記にトヨの事を書くのをやめるよう、寄り道をして直接交渉にいきましょう。」
「え……?そんなの、何処に行くつもりだよ。。」
すっかり女性口調にするのを忘れた海人が、Jに問いかけた。
「古事記だから……飛鳥時代ですね。」
「飛鳥時代???」
「古事記は日本の一番古い歴史書で、それを作るよう命じたのは、天武天皇なんです。」
「天皇……。そんなのどうやって接触するんだよ。
魏の帝に謁見出来たのは、ヒメコさんが女王だったからじゃない。いくらなんでも、パイプ役がいないと無理だって。」
「大丈夫です。海人さん、あなたならパイプ役になれます。僕に任せてください。」
「Jの口癖は信じてるけど、流石に不安だなぁ……。」
海人は、先のみえない計画に不安感を募らせながら、自分の知識の引き出しから、飛鳥時代のパーツをひろいだす作業をはじめた。




