17話~1%の可能性~
どこまで話したか………
爽がいなくなって、タイムトラベルで遭難者が続いた事で、かなり大問題になった。
爽の足取りはいくら調べてもわからなかった。それと同時に、遭難者の女性のマシンの燃料が切れたのか。コンタクトが取れなくなった。
ふたりを捜索するには手がかりが無さすぎた。
それに、今の現状から見ても2000年前と現在のルートに何かしらの歪みがあるに違いない。
それを踏まえてタイムトラベルは無期延期。実質再開はされない動きになっていった。
その流れの中で私は焦った。
またマシンで向かった先へ捜索に行っても
遭難する可能性の方が高いのは頭で理解出来た。
タイムトラベルの再開は、もしあったとしても
かなり先になるだろう。
それだともう救出すら出来なくなる。
いや違う、もう2度と爽には会えなくなる。
それは……困るな………
私の生きる時代に、爽がいないのは困る……
気づくと私は、荷造りを始めていた。
用意出来たケースを左手に持ち、爽のブランケットを右手で抱きしめる様に持つと、マシンの発着場に向かっていた。
躊躇いはなかった。
恐らく時空の歪みで、このマシンも遭難の道を辿るかもしれない。でも逆に、爽に会える方法はもはやこれしかない。
1%の可能性がもしあるなら……
それにかけたい………
マシンに乗り込んだ私は、ゆっくりと2000年前の着地点を入力して、それから静かにスイッチを押した。
「そして、3世紀のこの国に?」
Jが、端末を操作しながら女王に尋ねた。
「あぁ。でも、私のマシンは遭難せず無事にたどり着いたんだ、不思議な事に。」
「なるほど。これで全てわかりました。」
Jはデータを見ながら、納得した口調で語りだした。
「ヒメコ様が過去にタイムトラベルして
到着した場所には、最初の個人旅行の遭難女性がいた。
遭難女性の乗っていたマシンは大破していた。
ヒメコ様は後世に残さないように、干渉が
起こらないように、その場で存在を消し去った。
そして、自分が乗ってきたマシンに
遭難した女性を乗せて、未来へと返した。
これで、概ねあってますか?」
「あぁ、その通りだ。」
「記録には、遭難女性の帰還の記録があります。
でも、ヒメコ様と爽さんは行方不明で処理されてますね。それがあってトラベルは更に禁止の流れに向かったようです。」
「私も遭難者と未来へ戻る道も確かにあった。
今思うと、戻り足掻いた方がよい展開を生んだのかもしれない。
でも、当時の私にはそんな選択は思い浮かびもしなかった。」
「爽って奴が、そこにいなかったから?」
海人が、真剣な顔つきでそう尋ねた。
「あぁ、爽に会いたい、それしか考えられなくて、気づいたらマシンごと遭難者を返していて。
そうしたら、爽の気持ちを軽く出来る。それしか考えれなくて。
干渉とか、歴史が変わるとか、もうそれすらどうでもよくなった。
私は爽にあわせてくださいと願いながら、それからずっと探し続けているのさ。」
「わかるよ。俺も一緒だもん。わかる…。」
海人は、ボロボロ流れ出る涙を右袖で拭った。
「ヒメコさんさぁ、爽を探そうよ?俺手伝うからさ。ね?探そう?」
すると、女王は困ったような笑顔を浮かべて
「海人有り難う。でも、爽は既に見つけておるのだよ。」
「え?それってどういう事ですか??」
Jも驚きを隠せず、女王にそう尋ねた。
では、今に至るまでの話をもう少しだけ、おまえ達に聞いてもらうとしようか。
女王はそう言うと、また語りはじめた。




