14話~水の大切さ~
「それってどういう事……。」
海人が、女王とJのやり取りを見ながら、呆然と立ち尽くしていると
「ハヒコ、すまないがこの者達ともう少し話がある。お前は先にもう休んでいなさい。」
そう女王がハヒコに、席を外すよう促した。
ハヒコは一礼をすると、住居から出ていった。
女王は立ち上がり、茶色の土で造られた土器のような椀を何処からか持ってくると、水瓶から水を汲み、2人を蓆へ座らせ、目の前に置いた。
「ただの水だ。まぁまずはそれを飲むといい。」
Jがまず手にとり、訝しげに椀を確認しはじめた。
「毒など入ってはおらん。人は水で出来ている。まずは何よりも水だ。」
「いただきます!」
海人は一部分欠けた椀を豪快に掴むと、一気に水を飲み干した。
「その時その場所の水が馴染むまでは、身体が少し辛いかもしれない、でもいずれ慣れる。」
女王は海人か飲み干した椀を受け取り、もう一杯水を汲むと
海人の前へと置いた。
「それは、実体験からですか?」
Jはそう言うと、恐る恐る一口水を口にした。
「お前の名は何という?」
「僕はJです。こちらが海人。」
「ではJ、さっきお前は私の何処をみた。」
「目です。」
「なるほど、お前はこれがわかるのか。」
女王は右手で、自分の右目に触れる動作をした。
「その目に埋め込まれてるの、それチップですよね?白目の所に斑点がある。僕の生きている時代だとそれは旧式ですけど。」
「え?チップって目に埋め込むの?俺の時代は耳だったのに。」
話についていけない海人が、不満気にそう言った。
「海人さんの時代は耳でしたが、それから目に変わり、そして僕の生きる時代は右腕になっています。チップの変遷はそんな感じですね。
今のこの世界、おそらく2世紀から3世紀の弥生時代。その時代に、チップが埋め込まれてる人間がいるわけない。
なので、同じく未来から来た人間だと思ったんですが、違いますか?」
「それであっている。」
「チップが目に埋められていた時代って、俺の生まれた時代よりあとで、その100年後Jの時代よりは前って事なんでしょ?
だとしたら、まだタイムトラベル全盛期の頃で、
つまり、ヒメコさんはタイムトラベル遭難して帰れなくなった人って事?あぁ、頭こんがらがってきた!」
海人は両手で頭をかきむしると、その場に大の字で寝そべってしまった。
Jと女王は海人のそんな姿を見て、目を見合わせ笑った。
「ヒメコ様は、つまり、過去への旅行者だったんですか?」
Jは、手にしていた椀を傾け、残っていた水をゆっくり飲み干して言葉を続けた。
「確かにあの時代、過去への観光が人気で、毎日のように皆が旅に出ていた。安全で安定が当たり前だったある日、遭難者が出てしまった。」
「はい、その話は聞いた事があります。僕の生きる時代では、特別な時以外の、いわゆる過去への観光旅行は既に禁止になっています。」
「私は、旅行で遭難してはいない。」
「それじゃあ一体?」
「私は、時を彩る者。」
「彩る者………?」
海人とJが、意味を汲み取りかねる表情で、女王の次の言葉を待った。
「少し長くなるが、私の話を聞いてもらえるかい?」
女王はそう言って、自分の昔話をゆっくりと語り始めた。




