13話~女王ヒメコ~
集落の長の家だろうか。他の住居とは、明らかに違う少し立派な住居に、2人は案内をされた。
「少しここでお待ち下さい」
男は、2人にそう告げると、白色の薄い布が、室内をふたつに仕切っている向こう側の空間へと入っていった。
その中は、灯火の明かりがゆらゆらして影を映し、誰かがいるのだけはわかった。
「とりあえず、座りましょうか」
Jは海人にそう声をかけた。
床には、大人が二人寝転がれる位の大きさの茶色い蓆が敷かれていた。その上に、海人とJは靴を脱いで正座をして無言で待ち続けた。
すると、白い布をまくりあげ、男が中へ入る様に無言で手招きをしてきた。
海人とJは、顔を強張らせながら、おそるおそる導かれた中へと入っていった。
明かりで照らされたその空間の床には、大きな甁がいくつか置かれていて、中には水が張られているようだった。
そして、その前には白い衣を着た成人女性が座っていた。
「ヒメコ様、お告げにあった使者の方々です。」
男はそう、その女性に告げたあと、海人とJには、前に敷かれた蓆に座る様促し、自分もその横へと座った。
「私はこのあたり一帯のムラを守る王。よくまいられた。ここで暫くゆっくり過ごすとよい。」
「ねぇ、俺達の事怪しいとか思わないの?」
海人は、ざっくばらんな口調で女王に尋ねた。
Jが慌てて、海人を右肘で小突くと、海人もそれを受けて少しあたふたしながら
「いえ、有り難うございます。でも、いきなり現れた人間に、優しすぎると思ったからさ、いや、思ったので。」
と、精一杯の言い直しをして、さらに問い直した。
女王は、そんな事は気にしない素振りで静かにこう答えた。
「おてんとうさまから聞いていたからさ。石から現れる2人が、今宵ここにやってくるとね。」
「おてんとうさま……?」
海人とJが呆気に取られていると、女王は水瓶に木の葉を一枚浮かべると手を合わせ拝みはじめた。
「ハヒコ、この者たちを休ませてあげなさい。」
男の名はハヒコと言うらしく、女王に向かって軽く一礼すると、立ち上がった。
「ではこちらに。」
ハヒコは、海人とJに声をかけた。
すると、今まで黙っていたJが、いきなり女王に近づいたと思うと、目の前でしゃがんだ格好になり
今度は、顔と顔を思い切り近づけはじめた。
「J、いきなり何だよ…俺よりそれは失礼だって!」
海人は慌てて、Jが女王から離れる様に左手を掴み引っ張った。
「海人さん、僕わかったかもしれません。」
Jは何かを悟ったような顔で海人を振り返った。
海人は訳がわからないまま、Jの左手を握り続けた。
女王は全く動じず、拝む体勢を崩さないまま、
Jを直視し続けている。
Jも怯む事なく、女王と至近距離で顔を付き合わせながら、こう尋ねた。
「貴女は、何処から来たんです?」
すると女王はニヤリと微笑むと、ゆっくり静かにこう言った。
「お前たちと同じ所さ」




