地下の解剖室
「・・・・・・で、仏さんは?」
「えー・・・身元は不明。三十代、男性、死因は轢死・・・・・・ですが」
暗く冷たい地下に二人の男性の声が響く。
「まあ、いい。とりあえず、警部はなんて?」
「ええ。報告書はいつものように書いてくれ。“真実は靴箱の下に”と」
「また、もみ消せばいいわけだな」
ハッという乾いた笑いに混じってカツンカツンと石階段を下る音がした。
声から察するに、この二人の男性というのは、若い男と年配の男である。ただ、姿は見えない。この部屋が暗すぎるのだ。
「・・・・・・ええ、まあ、そういう」
若い男の声。そしてその後にカツンカツンという足音が止まった・・・・・・と、突然。
バチンッ。
スイッチを入れたような音と共に辺りが途端に明るくなって、姿を現わしたのは手術室のような機材とモノの部屋。そして白衣に身を包んだ若い男と年配の解剖医だった。
そして、その部屋の中央に位置するライトに眩しく照らされた手術台の上には亡骸となった男性が横たわっていて・・・・・・
あれ? 太郎さん?
「・・・・・・?」
「ん? 何かあったか?」
年配の医師の言葉に「ああ、いえ、何でも無いです」と若い助手は答えた。
トラックにはねられた太郎さんは、その後、警察に預けられ、どういうわけか、今ここに来て手術台の上に置かれていたのである。そして、半壊した無惨な姿のまま動かない。
太郎さんは死んだのか? ・・・・・・・・・・・・いいや、そんなことはない。
なぜなら、彼は世界ではじめてゾンビになってしまったのだ。




