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「もっとお姉ちゃんの事を知ってもらおう作戦」

~翌日~


 俺達は例の訓練場に集まっていた。

 木箱で作った簡素なステージ(?)の上に顔を真っ赤に染めたヘルメスが立っている。


「あ、あの。本当にやるんでしょうか……?」


 ヘルメスが唇に手を当てて、チラチラとこちらを見てくる。


「……やってくれ」


 ゴクリと唾を飲み込む。アレン達も緊張した面持ちだ。


 マナの提案。通称「もっとお姉ちゃんの事を知ってもらおう作戦」の第一弾は特に犠牲者も出なかったが進展もなかった。

 お話会と言う名の会合を開いたのだが、人見知り以前にあまりにも話題の乏しいヘルメス相手に誰も話を膨らませる事が出来なかった。

 まぁ、基本的にいっつも俺の中で休眠状態なんだからしょうがないっちゃしょうがなかったんだが……


 そして第二弾。それはヘルメスにソロステージで歌を歌ってもらって、みんなにそれを耐えてもらうと言うもの。

 


「で、では……」


 最高に緊張した状態でヘルメスが開始の合図を始める。予想以上に緊張している。「これまずいんじゃないか」と言う嫌な予感が急速に膨れ上がる。




「い~つも~。 か~げの~よぅに~ あ~なひゃ~ の…………………   うしろ~ を ついてく~」


 あ、いきなり噛んだ。


「ほ んと~ は~ と~なり~ にぃて~ 手をつな~ぎたい け~ ど~」



 噛んだ事で一瞬頭が真っ白になったんだろう。その瞬間凄まじい瘴気がアレン達を襲い、「うっ!」とか言いながらうめきだした。

 何人か下を向いてガタガタと貧乏ゆすりが始まる。


「あ~かる~く~ わらいあう~ あ~のこ~が~ う~らゃましくて~ こっち む~いて~よ~ だぁりん~ あなたし~か~ い~な~い~ から~」


 なんとか立て直したけど。自信がなくなってしまったのか、声がかすれてどんどん小さくなっていく。

 なんとなく考えなしに始めてしまったこの作戦。

 彼女の名誉のために言うが、別に歌自体は絵みたいに特徴的と言う訳では決してない。

 だが、伴奏もなしにお互いこんなガチガチに緊張した状態でソロステージとか、拷問に近いんじゃないだろうかと言う気がしてくる。


「だーりん つながれ~た~ て~のひ……ら……」


「すたぁぁぁぁぁっぷ! そこまでぇっ!!」




 コニーがちょっと呼吸がおかしくなってきたのだ。たまらずストップする。


「コニー! 大丈夫か! 俺の目を見ろ! しっかり、ゆっくり息を吐いて!」


 コニーを抱きかかえて呼吸のリズムを誘導する。


 他の連中も立ち上がれない。ヘルメスはステージの上で両手で顔を覆ってしくしくと泣いていた。




 そして事件は起きた。


 俺がもっとみんなの。特にヘルメスの様子に注意を払ってやっていれば気がつけたはずだったんだ。

 自分の歌を聞いてもだえ苦しむ男達を見て、ヘルメスはショックを受けていた。

 朝食の時間や訓練前の様子など、振り返ればヒントはいくつもあったのに。

 それに気づかず、翌日の訓練を始めてしまったのは本当に愚かだったとしか言いようがない。


 心に傷を負ったヘルメスに、そのまま訓練を再開させたのは間違いだった。

 あまりにも想定外過ぎる。あまりに強大な瘴気が。


 小隊を襲ってしまったんだ…… 

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