去る者 来る者
「みんなー!」
「おねぇちゃぁん!」
村に戻ると子供たちがマナに駆け寄ってきた。
「みんな聞いて聞いて! この人たちが来てくれたからみんな一緒にいられるんだよ。お引越ししなくていいの!」
「ホントに!?」
「いいの!? ここにいていいの!?」
「いいんだよ!」
「やったぁ!」
幼児が足はガニ股、両手もカニみたいに上に突き上げてピョンピョン飛び跳ねながらまわりだす。
「滞りなく進んだようですな……」
村に滞在してくれていた冒険者達が声をかけてくる。
そうだ、今回この人達のおかげで助かったんだ。下手したら逮捕されていた。
ついでに言うとケイルさんの馬は足が遅いのでシグリスに戻る時この人達の馬を借りていた。
「えぇ、おかげ様で。領主様とお知り合いとは驚きでした」
「大した事ではありませんよ」
と、言ったところで冒険者の男は視線を切った。
「さて……事の顛末を見届けたくはありますが、我々もそろそろ帰還せねばなりませぬ」
「はい。勿論です」
「遺体の埋葬の件ですが……残念ながら森の遺体を全てこちらに運ぶ事は無理だと判断しました。現地にて火葬し、持ち帰れたのは遺灰の一部だけです」
十分だ。と、言うかそこまでやってくれていた事に驚いた。
「大部分は現地でまとめて穴に埋めました。そしてあちらが……持ち帰った遺灰を祀っている共同墓地になります」
「おぉ……」
そこには簡素なものではあるが、風化せぬようしっかりと石造りで作られたお墓がたっていた。
「ありがとうございます。何から何まで。なんと感謝申し上げてよいのやら」
「いえいえ。……さて、幸い日もまだ高い。我々はこれでお暇させていただきますね。ご健闘を」
がっちりと握手をして彼らを見送る。大したものだ。これが元銀級の冒険者か。
「すいません。お待たせしました。彼らが派遣されてきた衛兵達です」
村に滞在してくれていた商人に小隊の連中を紹介するとアレン達が挨拶をかわした。
「初めまして。ケイルと申します。いやぁ、ゲオルグさん、無事に交渉を成功させてきたんですね。大したものです」
「はは、まぁ無事……えぇ、無事に……平和的に……ははは……」
まぁ、無事と言えば無事。結果的には無事だったよ。
「っと、まぁそのことは置いといて。我々が留守の間、村人達の食事の世話やらなんやらをありがとうございました」
「いえいえ、そのくらいしか出来ませんから。それで、あの、すいませんが例の件は……」
出立前に彼が俺に要求してきた案件は二つ。が、その前に彼の抱えていた問題について話さなければならない。
彼はここで食料や生活用品の売買を行って次の村に向かう予定だった。
だがその売買が不成立となってしまった場合、彼は予定よりも多くの重たい在庫を抱えたまま行商を行う事になり、次の村での買い付け金にも影響する。
また、ここで時間を潰してしまった事で既に通常の行商ルートから変更せざるを得なくなっていた。
そこで彼から依頼されたのが。ルートを変更していくつかの村に立ち寄らなくなる旨を、街に立ち寄った際に彼の所属する商会に連絡し、代わりの商人を派遣してもらうよう依頼する事。
そしてルートを省略し、いくつかの村に立ち寄らなくなった分、ここで多めに物資を買い取って欲しいとの事だった。
「大丈夫です。魔物討伐の件で報奨金が出ました」
革袋を見せると彼が安堵の笑顔を見せる。行商をしていれば一度や二度は巻き込まれるトラブルだが、彼らにとっては死活問題だ。
「あぁ、良かった……感謝します」
「いえいえ、こちらも助けられていますから。それでは細かい話はあとにして今日は一旦休まさせていただきますね」
やるべきことは山ほどある。だが今は休もう。俺はアレン達をそれぞれ宿舎に案内して、食事をとって床についた。
そして次の日~




