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エドガー・マクラーレンと言う男

「ちょっと待て! なにを怒ってんだお前!!」


 ヘルメスはすっげぇ機嫌が悪かった。信じられないくらい悪かった。


「はうぁ!?」

 

 執事のじいさんが胸を抑えてうずくまる。やばい!


『マナ!』


 咄嗟に心の中で叫んでヘルメスの手を握る。漆黒の髪が白銀へと変わる。



「き、きさま!」


 何人かいるうちの側近らしき男が剣の柄に手をかける。


「うごくな!!」


 だがそれを制したのは領主の男だった。

 立ち上がって左手をかばうように向ける。 


「手を出すな……全員死ぬぞ……」


 そう言って領主の男は冷や汗をかいた顔で不敵にニヤリと笑った。





 落ち着いたことで、少女の気配が戻っている事に場にいた全員が気づいたのだろう。


「すまないがカーターを医務室に連れて行ってくれるか」


 別の側近の男がじいさんに肩をかして部屋から連れ出す。


 やべぇ…………やっちまった…………

 サイコロの目は6どころか完全に10以上に振り切れていた。

 だがかろうじて交渉が継続しているのは、領主の懐がそれ以上に大きかったってだけの話。

 ……危なかった。汗がどっと噴き出る。


「1つ……訂正させてもらおう。お前達を執務室に直接呼んだのはいつでも始末出来ると思っての事ではない。

 当然、何かあればすぐに取り押さえるつもりなのは通常通りだが、戦闘になる可能性はほとんど考えていなかった。

 ウーノの書状にお前達の事が書いてあったからだ」


 え、マジで? 領主と知り合いとかあの救援に来てくれた冒険者のおっさん達何者なんだ。


「お知り合いでしたか?」


「あれで結構な古株でな。今はギルドのお抱えをやっているが元は銀級の冒険者だ。直接の依頼を出した事も一度や二度ではない。

 書状は間違いなくヤツの字だった。お前の事を見どころのあるヤツだと。子供たちのためにも力になってやって欲しいとも、な」


 なんだよ……先に言っといてくれたらもうちょいすんなり入れたのにさ。




 ちょっと一旦仕切り直し。領主の勧めでお茶なんていただいてしまう。


 ふ~、と領主のおっさんは腕を組んで椅子に深く腰掛け、天井を向いてとても大きな息を吐いた。



「……………わかった。お前達がいれば銀狼団もうかつには手を出さんだろう。だが直接はやりあうな。防衛に徹して使いの者を出せ、すぐに救援に向かう」


 ……おぉ!? これは!? これはもしかするともしかするのか!?


「6人出そう。出向中はお前の指示に従うように通達しておくから、土木でも農耕でも好きに使ってくれて構わない。」

 

 やったぁぁぁぁああ!! サイコロの出目は最悪だったけどこのおっさんマジでおやっさんだわ!


「ありがとうございます! 必ず報いてみせましょう。では詳細につきましては後ほど担当の方に伺わせていただきますね。今晩は鳥鳥亭にて宿をとっておりますので、こちらが連絡先となります」


「待て」


 ちょっと興奮して礼儀作法もとっちらかして飛び出していってしまいそうになるのを呼び止められる。


「メシぐらい食っていけ。明日の出立についての説明や、渡しておく書類もあるしな。頼んだぞ。村長」


「…………村長?」


 俺がキョトンとした顔で彼の顔を見つめると

 

「お前しかおらんだろうが」


 彼はふっと笑ってそう言う。




「なぁ」


 領主の男は俺のところまで歩いてくると尋ねた。


「1つ聞いていいか? なんで村のためにそこまでするんだ? 別にアケレイ村の出身じゃないんだろ?」


 痛いところを突かれてとても情けない顔になる。だがまぁ今更構わんだろう。


「いやぁ……娘にせがまれちゃいましてねぇ。これがまた理屈じゃ満点がとれんのですわ……」


 そう言って後頭部をぽりぽりかくと、おやっさんは一瞬目を丸くしたあとで


「ふ……はは………アーッハッハッハ!! そうかそうか!

 全く、娘の扱いってやつはどこの家でも苦労するのは一緒だなぁ」



 そう言って俺の背中をバンバン叩いてくる手は大きくて、力強くて。

 横を振り向けば先ほどと同じ人物とは思えないほど穏やかな顔をしていている。

 多分きっともともとはこっちが彼の素なんだろう。


「言い忘れてたが馬も1頭つけてやる。荷台も好きに使っていい」


「…………すみません……」


 領主の提案に少し驚いて返事をすると、彼は首を横に振った。


「謝るなよ……謝っても誰も手加減などしてくれない。私も、世界もだ。引き受けたなら完遂しろ。絶対に完遂するんだ。これからはそういう立場になるぞ」


「ありがとう……ございます……」


 彼が言うと重みが違う。

 途中はどうなる事かと思ったけどここに来てよかった。

 きっと度々相談に来させてもらう事になるだろう。 


 こうして俺はアケレイ村の、正式な村長になったのだった…… 

ここまでお読みいただきましてまことにありがとうございます。


第1章「例えそれが行きずりの自己満足だったとしても」完結。

次回より第2章「アケレイ村の新村長」が始まります。


ブクマ、評価の方いただけると励みになります。

それでは今後ともどうぞよろしくお願いします。


4/9

ちょっと手直しやらなんやらで更新遅れます。もう少々お待ちください。


評価点、ブックマークの方ありがとうございます。少しでもクオリティを上げれるように頑張ります!

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