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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第三席 異世界編
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竜ー09 異常事態

 鎧王ガルム。

 今まで戦ってきた中で最強の相手。

 無論、手傷はこちらの方が余程多い。

 向こうの方が優勢なのは誰が見ても分かる。

 子供だって、この先の勝利がどっちに転ぶか想像が着くだろう。


 ただ、それでも。

 唯一『手数』だけにおいては、僕の方が奴より勝っていた。


「【……ッ、こ、の男ッ!】」

「どうした鎧! 手が止まってるぞ――ッ」


 ヤツが新しく取りだした二振りの刀。

 その内片方を刀で受止め、残る片方を腹に受けつつ、その横っ腹へと掌底を叩き込む。

 衝撃が鎧の内部まで響き渡り、ヘルムの下から鈍い悲鳴が聞こえた。


 そして、僅かに下がってきた顎先を、もう一発拳で叩き上げる。


「【が……】」

全性能(フルスペック)がこっちの劣勢。ただそれでも、精神面じゃ話は別だろ、生まれながらの最強一族」


 お前は眷属。

 最初から最強として生まれ落ちた。

 故に知らない。

 痛烈極まる敗北を。

 不甲斐なさと噛み締めた泥の味を。

 負けるかもしれない。

 そう思わずにはいられない接戦を。


 接戦最中の苦痛、激痛、苦悩、怒り。

 それらまとめて飲み込んで、笑って拳を握れるだけの、経験を。


 お前はきっと、何も知らない。


 刀で短刀を弾き上げ、空いた右手の刀を離し、拳を握る。

 そのままその顔面をぶん殴ると、ガルムは衝撃にたたらを踏み、数メートル後退る。

 その際に腹から刀が抜けて、血が滴る。

 されど、それもすぐに止まって消えた。

 ――アドレナリンの異常分泌による、強烈な止血効果と、痛覚麻痺。

 僕は大きく息を吐くと、再び刀を構えてガルムへと向き直る。


 その姿を……彼は疲労を隠すことなく見つめていた。


「【はぁ、はぁ……ッ。貴殿には……恐怖心というものは無いのか】」

「馬鹿か、あるに決まってんだろ」


 むしろ、あるからこそ努力する。

 死にたくないから前を向く。

 生きて為すべきことがあるから走り続けられる。


 そのためなら、なんだってする。

 プライドを捨てた日のことなんて、もう昔過ぎて覚えてもいない。

 精神論を馬鹿にする気概も既に失せ。

 必要()()()()()()と感じたことは、否が応でも手に入れてきた。


 ただひたすら、死なないために。


 人間、そういうもんだよ、鎧王ガルム。

 そして、それが僕らとお前らの違いさ。

 覚悟の強さと、経験の違い。


「恐怖はある。……だがな鎧王。幾億年生きてきたお前らは、故に僕には追いつけない」


 せいぜい、自分の生まれを呪って逝け。

 お前は最強として生まれてしまった。


 それが、お前の敗因さ。


 僕は刀を強く握りしめる。


 僕の視線の先で、鎧武者もまた刀を構える。


 右の短剣、左の短刀。

 それぞれ、常人が持てば長剣にすら匹敵する大きさのそれらは、剣呑が過ぎる光を帯びている。


「【……貴殿に対する評価を、更に改めることにしよう。貴殿は強い。心身共にこれほど充実した生命体を、我は『非眷属』において初めて見知った】」

「井の中の蛙だな。……僕以上なんざ、あの世界にはゴロゴロいるぞ」


 例えば、黒髪軍服のいけ好かない女とかな。

 嫌悪混じりの言葉に……ヤツは、ヘルムの下で笑ったように見えた。


「【そんな貴殿と、純粋な武を競えたこと。未だかつて、我はこれほど我が天能に感謝した日はないと言えよう】」

「そうかい。なら僕も感謝するよ。鎧王ガルム、ありがとう。()()()()()()()()()


 感謝には感謝を返す。

 まぁ、人間として当たり前のことをして。

 僕は、大地を踏み砕いて走り出す。


 動き出しは、両者全く同じタイミング。


 彼我の拒否は数メートル。

 お互いに手を伸ばせば届くかもしれない距離。

 刀であれば、一歩踏み出せば届く距離。

 それらを互いに、全身全霊で踏み抜いた。


 それぞれ、刀が煌めく。

 僕の一刀と、ヤツの二刀。

 僕が振るった一刀は二振りの内、片方を真正面から切り裂き、その首へと向かう。

 同じく、片方の刀を壊された鎧王も、残る剣で僕の首を狙い撃つ。


 お互い、コンマ数秒もかからず相手の首を跳ねられる。


 そこまでの状態に至り。



 ただ、()()()()()



 その表情を見た鎧王が、目を剥いた。


 格上と格下。

 精神論に頼らざるを得ない劣勢。

 異能を使えない空間。

 誰がどう見ても僕の敗色が濃く見える。


 そりゃ、間違ってないよ。

 ただ一つ。

 それでも僕らの見解に相違があると言うのなら。



 ――ギン=クラッシュベルに、これ以上の【引き出し】が在るか、無いかという理解の差。



 ヤツは焦りに剣を加速させる。


 ……言ったろ、お前は僕に追いつけない。


 常に格上と戦わなきゃ行けない僕と。

 格上は居ても、戦わなくて済むお前と。

 僕らの間の、大きな隔てり。


 お前の力――異能の無効化。


 悪いがソレなら、同じ力を知ってるんでな。

 そんな初歩的なチート能力、眷属と戦うと決めた時から対策してるさ。


 僕は手を伸ばす。

 その手に銀色の煌めきが生まれ落ちた。


 ――神剣シルズオーバー。


 本来なら無効化されるべきソレは、なんの遠慮もなく、一切の障害なくこの場に顕現し舞い降りた。


 剣を握る。

 右手に握ったその剣で、迫る刀を受け止める。

 衝撃が体を襲い、短剣越しに首へと刃が押し付けられる。

 短剣の刃で切れて、首から血が滴り落ちる。


 それでも僕は、笑みは崩さない。


「――次は、僕の番だな」


 やがて衝撃は収まって。

 僕は笑って、ヤツを見上げる。


 首の肉は切られようと。

 衝撃で骨にヒビが入ろうと。


 ただ、一閃。

 それだけ動けば問題ない。


 傷は、瞬く間に癒えてゆく。

 封印されたはずの吸血鬼の力が発動し、いよいよ鎧王も異変に気づいた。


「【……ッ、な、何故――!?】」


 焦る鎧王へ。

 僕は、左手の刀を首へ突きつける。



「チェックメイト」






 そして――。






『GOOOOOOOOOAAAAAAAAAA!!!』




 響き渡ったのは、怪獣の叫び声だった。




 ☆☆☆




 僕の刀が、ピタリと止まる。

 視線を声の方向へと向けると、そこには……なんだありゃ。見たことも無い『化け物』が居た。


 強いて言うならば――鬼、か。


 先程、影の中に封印した鬼に少し似ていなくもない。

 ただ、あまりにも異なったのはその身長(サイズ)

 先程戦った……というか、一方的にボコった鬼は、せいぜい二メートル~三メートル程度のものだった。


 それに対して、今僕らの視線の先にいるのは……全長で20メートルは下らない怪獣だ。


 元々の姿形は似ている……とは言えども、これほどの差異をして『似ている』といぅていいものか……。

 正直、全くの別物にしか見えない。


 それに、この威圧感……。

 チラリと鎧王へと視線を向ける。

 ……今すぐコイツを殺すだけなら容易い。

 だけど、それからあの化け物を相手するとなると……今のコンディションで勝てるかどうか。


 その鬼は、僕らには目もくれず街の破壊を続けている。


 その光景を見ていた僕は……少し悩んで、ため息を漏らす。

 突きつけていた刀を収めると、鎧王は驚いたように僕を見上げた。


「……おい。少し手を貸せ。こんな勝負より、あの化け物をぶっ飛ばすのが優先だ」

「【……何故、我を殺さない】」


 は? こちとら殺人鬼じゃないんだよ。

 別に殺す相手と殺さない相手くらいは見極める。

 でもってお前は、後者に当たる。

 なんてったって、お前――。


「お前、最初から敵意はなかったろ」


 僕の言葉に、鎧王は目に見えて身体を震わせた。

 何が理由かは知らないけれど……というか、ただの戦闘狂にしか思えなかったけれど。

 悪意のない野郎まで殺してたら、僕はただの人殺しに成り下がる。

 ま、お前は眷属だけどさ。


「こっちにだって、明確な一線がある。お前を殺さない理由はそれだけさ」


 仮に、この戦いを続けるのなら、それはそれで構わない。

 僕の命をつけ狙う。

 それを僕は悪意と考える。

 だから殺す、今すぐに。

 あの化け物は……まぁ、後ろに仲間達が控えてるんでな。そいつらと協力して倒すとしよう。


 僕の目の前で、鎧王は刀を収める。

 改めて向き合うと凄い体格差だな。

 そんなことを思っていると、彼は問うた。


「【ならば、何故この我が協力すると?】」

「それこそ簡単だろ。戦ってる僕らを見る民衆の眼だよ」


 あれは、『よく分からない奴らが戦ってて不安だ』って感じの目じゃない。

 あれは【()()()()()()()()()()()()()が争っていて不安だ】って目だ。

 僕は鎧王の姿をもう一度確認する。

 この時代に則したような鎧姿。


 まるで、さっき話に聞いた【武神様】みたいだ。


 と、ここまで考えれば馬鹿でも分かる。

 この世界には鬼がいて。

 コイツはその鬼を狩って人を守ってる。

 なら、結論は簡単でいい。


「こと、あの化け物を倒すことに関して、お前は僕らの敵じゃない」


 僕は鬼へと向き直ると。少し遅れて、鎧王ガルムもまた鬼の方へと視線を向けた。


 白夜達が駆け寄ってくる中。

 破壊の限りを尽くす鬼は、僕らの姿にようやく気付く。


『GOOOOOOOOOAAAAAAAAAA!!』


 鼓膜を突き破るような大声。

 それを前に、鎧王を一瞥する。



「僕が勝者だ、異論は?」


「【無い。敗者は勝者に順じよう】」



 僕らは刀を抜き放つ。

 さて、なんとまぁ異常事態。

 眷属と共闘だなんて想像だにしなかったが。


 僕は、目先の鬼を見て呟いた。



「眷属に比べりゃ、随分可愛い小鬼だな」




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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
― 新着の感想 ―
 …え?武神様って、鎧王のことだったの?
[一言] え? 完結すんの? とか後たったの3章しかないの? とまぁ色々ありますが 更新ありがとうございます!!!!!!
[一言] えつ、あと3章? 今のところレベルクラウンがギンが2で、混沌が3でしょ? 最終章が対神霊王イブリースだとしたらあと2章分でLvカンストするですか? どこかのムルムルみたいに決戦前に雑魚眷属(…
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