竜ー04 諦め
誠に遅くなりました!
新連載を始めた翌日から残業地獄という悪夢ッ!
世界を攻略するにあたり。
まず最初に目をつけたのは、変態性の暴力というイカれた二つ名で呼ばれている覇魔王だった。
こいつを狙おうと思った理由。
それはシンプルに、1番活発的な覇魔王だったからだ。
3人の覇魔王の中でも、なんとなーくイメージと噂を鑑みて、変態性の暴力が最も活発に変態活動を繰り広げている気がする。
なんだっけ?
変態行為を強要し、しなければ家族にその変態行為を強要するぞ、さぁ、私に鞭を打ってみろ、だったっけ?
イカれてるよ。頭沸いてる。
そいつら全員白夜かよ。
ちなみに、次点で【人類の最底辺】、最後に【異質の帝王】と来る。
こいつらは……なんというか、変態性が常軌を逸しすぎていて、もはや何が変態なのかも分からない。
白夜達にすれば『なんという高位な変態度……! 主様よ! こやつらのプレイを見てしまったが最後、もはや人間には戻れないのじゃ!』との事だったが……たぶん、変態にしか分からない何かがあるんだろうね。
閑話休題。
「というわけで、覇魔王城までやってきた訳だが」
「すごいくらい道中をすっ飛ばしたな……」
輝夜が呆れたようにそう言った。
道中? 聞くんじゃないよ、そんなこと。
この世界は変態であればあるほどに強い世界。
つまり、ウチの変態3匹にかかれば何とも楽ちんな世界である。
そのぶん、イライラは凄く募るけどな!
「アホをして叩かれるのではない。叩かれるためにアホをするのじゃ」
「いつから錯覚していましたか? 既に私は脱いでいますよ」
「「「ぎゃぁぁぁぁあああああああ!?」」」
この世界で気がついたこと。
それは、変態性を正体不明の衝撃波へと変換できるということ。
白夜や暁穂が変態性を見せつける度、謎の衝撃波が敵軍をぶっ飛ばす。
いつもと何ら変わらぬことをしているだけなのに、この有様だ。
変態って怖い。
「主殿、気をしっかりと持つのだ。これは異常だぞ。この光景に違和感を覚えていないということは、この世界において常軌を逸した変態行為を、こやつらは常日頃から行っているということだ……!」
「だろうな。知ってた」
ウチの変態達が変態の平均値だったらどうしようかと思ってた。
よかったぁ、ちゃんと異常で。
最近は変態に慣れすぎて、本当にこいつらが変態なのかもどうかも怪しく思っていたところだったんだ。
「主様よ! 敵は片付いたぞ!」
「うむ、よくやった」
白夜が敵軍の壊滅を教えてくれる。
僕は彼女の頭を軽く撫でると、僕は後方に下がらせていた最終兵器、変態系ピラミッドの頂点、ソフィアを呼び出した。
「さぁ、行くぞド変態。お前の出番だ」
「ふっ、主人様よ、第一声目から余を高ぶらせてくれるではな」
「いや、そういうのはいいから」
変態発言を予期し、ピシャリと言い放つ。
するとソフィアは頬を赤くして身悶えした。
気持ち悪いやつだなー。
身悶えしている彼女の首根っこを掴むと、そのまま彼女を引きずって覇魔王城へと歩いてゆく。
しかし、そんな時、どこからが声が響いてきた。
「待たれィ、そこの数名! ここを何処と心得るか! 迷っているなら道を教えるからそこで止まれィ!」
声は、僕らの頭上から聞こえてきた。
顔を上げる。
そこには、無意味に屋根の上へと登っている数名の姿があり、彼ら彼女らは皆、尋常ならざる気配を身にまとっていた。
「くくく、まずは自己紹介と行こうか。……常日頃から、名乗りもせずにいきなり戦闘をおっぱじめるキャラ、終わってると思うこの俺。俺の名は【厨二院 豪傑】」
「私の名前は【アンジイコ・ポンテスタ・ワーン】、通称あんぽんたんよ! 覚えやすい2つ名でしょう? よろしくね!」
「迷子は交番に、という言葉を受け。警察官も大変だなぁ、と思ってしまう今日この頃。公務員の中でも警察にはなりたくない男! ムメイキシ!」
「我が名は永遠舞呼! 理由は特になく、何となくかっこいいと思った単語を組みあわせただけ! 本名は山田タケシ! よろしくな!」
「「我ら4人含めて、変態性の暴力四天王!」」
また厄介なのが出てきたなぁ。
僕は思った。
「えっ、なに。いつからこの世界は変態から厨二病路線に変わっちまっ――ッ!?」
「あら、いいの持ってるじゃない」
僕は思わず呆れの声を出し。
その直後、目の前に現れた女の四天王、あんぽんたんを前に目を見開いた。
彼女は僕の胸板……というか、乳首をピンポイントでつつき回しており、僕は咄嗟に距離を取る。
「……ッ、み、見えなかった、だと」
「当然じゃない。私たちは皆が今世紀を代表するド変態。変態行為にかけて……私たちは目にも止まらぬ早業を披露できるわ」
なんだその、謎理論!
僕は思わず内心叫ぶと、女は言った。
「技の極地、今のはその片鱗よ。……これから出すのが、私の本気。よーく見てなさい。これから、気がついたら全裸に剥かれているでしょうから……ッ!」
女はそう言って、僕へと駆けた。
その速度は、普通の一言。
一般人としか思えない。
けれど……僕との距離が3メートルを切った瞬間。
彼女の姿が、掻き消えた。
「な……っ!?」
気がついたら、彼女の右腕が眼前にまで迫っていて。
その手を、僕の隣にいたソフィアが掴み、阻止していた。
「――ッ! あ、貴女は……!」
「なるほど。貴様も、その道を極めし者か」
何言ってんの、こいつら。
僕はドン引きした。
寒気に身を震わせて、ソフィアへと視線を向ける。
「……なぁ、ちょっとここ任せていい? こいつ無理だわ。生理的に受け付けないもん」
「わ、我も同じく」
顔を赤くした輝夜が同意した。
僕らはソフィアたちにあんぽんたんを任せて先に進もうとしたが……そんな僕らへと、残る3人が立ち塞がる。
「ここは通さんと言ったはずだ!」
「もしも通りたければ!」
「我らを満足させてから往くことだ!」
3人は、両手にムチと縄を持っていた。
うわぁ、こいつらあれだ。
白夜の男バージョンだ。
僕は思わず、白夜に送るような冷たい視線を送ってしまう。
すると……なんということだろうか。
男3人は、白夜と似たような顔をして身悶え始めた。気持ち悪っ。
「うっぷ」
隣の輝夜が吐きかけていた。
そりゃそうだ。
白夜が変態なだけでも結構きついのに、暑苦しいおっさん3人が変態とか、もはや地獄絵図。
変態美少女ってだけでもかなりマニアックだと思うのに、変態おっさんとかどこに需要があるんだよ。
「くっ、この男に……なかなかやるッ!」
「あの視線、あの態度! 常日頃から我らと同等の変態性を相手していなければ身につかぬ所作!」
「この男……なんというSッ! 俺たちのMを上回るほどの……! 貴様、その力、どこでみにつけた!?」
「い、いやぁー、それほどでもあるのじゃ」
白夜が照れたように頬をかくなか。
後ろにいた、女の四天王がこちらを振り返る。
「ちょ! 嘘でしょ!? SならSって最初から言ってちょうだいよ! それなら最初からこっちから進んで脱いだのに!」
「貴様! 主人様の前で脱いでいいのは余たちだけど知れ!」
そして、ソフィアの理解不能な発言。
僕はいよいよ、頭の痛さが天元突破。
自分の中で、何かがプツンと切れる音がした。
僕は、大きく息を吐いて頭を振る。
そして、目を細めて。
右手に、魔力の限りを集めた。
「変態性の暴力……だっけ? お前らさ」
「そ、そうだが……一体何をするつもりだ! な、なんかよくわからないけど、右手が恐ろしいことになってるぞ!」
四天王の1人がそう叫び。
僕は、思いっきり拳を握った。
「そうだよ、最初から。何を馬鹿馬鹿しくこんな茶番に付き合ってたんだか。こんな変態共を相手にするくらいなら……こうして、物理的に行けばいいじゃないか!」
「ちょ! 主殿!? ま、まって――」
輝夜、思いっきり避難。
白夜たち変態三匹も顔を青くして逃げ出してゆき、僕の魔力が銀色へと変わる。
「え、あ、ちょ」
焦る変態。
僕は、彼らへ向けて拳を振るった。
容赦? そんなものは微塵もなかったよ。
「死に晒せェェ!【正義の鉄拳】ッ!!」
「「「「ぎやゃああああぁぁぁぁぁ!?」」」」
横道へ、飛び退く変態共。
僕の拳は衝撃だけで突き進み、見上げるほどの大きな城へと激突。
そのド中心に、巨大な風穴を開けた。
それは実に、清々しい光景だった。
「ふぅー! スッキリした!」
いやー、この世界に来てからのイライラを吐き出せた気がするね!
ありがとう、四天王!
この世界は変態が強いみたいだけど、強いものが弱くなる的な法則はないわけだし? 物理的に行けばすぐ終わるんだって学べたよ!
そうこう考えていると、女性の四天王、あんぽんたんが叫んだ。
「ちょ! ちょっとあんた! 何してくれてんの! 馬鹿? もしかしなくても馬鹿でしょ! 空気読みなさいよ! 変態達がそれ相応の舞台で醜く争ってんのよ! SはSらしく、冷たい目線を送ってればいいの!」
「うるせぇド変態。もうお前らに付き合うのは辞めだ。この世界、秒でぶっ潰すことに決めたから」
僕はそう言って、彼らへと絶対零度の視線を向ける。
普段ならば興奮するような変態共も、さすがに命の危険を感じては食指も動くまい。
もうね、最初の一発目から限界でしたよ。
こいつらに付き合ってたら、メンタルがいくらあっても足りなくなる。
そう理解出来たから。
僕はもう、空気を読むこともやめにした。
「お、おい、主人殿? 余たちの……変態達の活躍シーンは……」
「ない。もう、僕が出ることにしたからな」
僕は拳をにぎりしめる。
変態共は悲鳴をあげて身を寄せあって。
僕は、物語の魔王もかくやという笑顔を浮かべた。
「おい、覇魔王の所に案内しろ。言う事聞かなかったヤツから、仕置してやるよ」
四天王は、我先にと覇魔王の元への案内を始めた。




