失―01 独白
新章開幕!
私は、きっと幸せになる権利などないのだろう。
分かりきっていることだ。
理解しきっていることだ。
他の誰よりも、この私が識っている。
瞼を閉ざせば、無数の『目』が浮かび上がる。
今まで犠牲にしてきた数多の輩。
この手にかけた無関係の民草。
踏み台としてきた、己が部下たち。
彼ら彼女らは、未だ私の中で燻っている。
私の中で、私の全てを見据えている。睨み据えている。
不思議と、鬱陶しいと思ったことはない。
当然だ、とそう思う。
私はそれだけのことをしてきたから。
嫉妬に駆られ、父を陥れ。
その果てに裏切られ、殺して、声の限りに慟哭して。
今思うと身が竦むほどの狂気に囚われ、思いつく限りの悪をなした。私は誰もが思う悪だった。悪そのものへと成り果てた。
だから、当然なのだ。
恨まれて当然、憎まれて当然。
幸せになれなくて当然。
少なくとも私自身は、そう思って止むことはないだろう。
――さて。
醜い独白を聞かせてしまい申し訳ない。
皆は弟……といって分かるだろうか。
奴の物語を追いたいのだろう。
だから先に謝る、申し訳ない。
ここから先は、私の物語。
かつて【混沌】と世界に疎まれ。
世界中の全てに絶望しておきながら、のうのうと今を生きる醜悪な化け物。
幸せになる資格などない。
到底ハッピーエンドには届かない。
されど、今を生きている。
そんな、私の物語だ。
とりあえずプロローグだけ。
本編は普段通り、6/1、6/2を予定してます。




