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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
第一席 魔国編
617/671

機―16 時空の支配者

珍しくギン登場しません。

 爆発が連続して周囲を飲み込み、雲を抉る。

 圧倒的な熱量が蒼空を灼き、焦がしたような空気が肌を叩く中、彼女――ギシルは思わず歯軋りした。


「……誤算、これは多すぎる」


 眼前に広がるのは正しく『絶望』。

 ここの戦闘力だけでいえば自分よりもまだ劣る――が、それを抜きにしてもあまりある数の力。


「……何故邪魔をする【ORIGIN】」


 金色の髪を風に揺らすオートマタが告げる。

 されどその言葉に会話の意思は含まれておらず、ギシルが背負う黒髪の少女へとその右腕を容赦なく突きつけ――告げる。


「――抹殺する」


 途端、熱量が弾けた。

 鉄すら蒸発させる圧倒的熱量の光線が空間を抉るようにして迸り、限界まで目を見開いたギシルは上体を大きく横に振ってその一撃を回避する。

 その一方で――


「ひぇぃっ!?」


 勢いよく頭を横に揺さぶられ、流れた髪に光線が掠めていった感覚をありありと感じた恭香は、ギシルの背中で悲鳴を上げていた。


「ど、どどどぉ、どうなってんのこれぇ!」

「……確信、とりあえず貴女、思いっきり殺されかけてる」

「それは分かって……ひぃぃっ!?」


 伸ばされたオートマタの腕が彼女の頬をかすめ、引き攣ったような悲鳴が漏れる。

 恭香は確かに強い。

 こと『到達者』という部類を除けば、彼女はまず間違いなく最高神の頂点にすら匹敵する実力を保有している。それは使用者が強ければ強いほどに能力が解放されてゆく彼女の能力に起因するものであろう。が、しかし。


 ――結論から言うと、流石に相手が悪すぎた。


 いくら『マスター』が常軌を逸した糞チートだろうと、それによってどれだけ強化されていようと、彼女はあくまでも神々が作り上げた神器であり、そこには『上限』というものが必ず存在する。

 そんな彼女の今の状態を端的明快に告げるとしたら、【カンスト】といったところだろうか。

 しかしながら――


「――各機へ通達。【ORIGIN】の抵抗値許容通過を確認。これまでの無傷での奪還任務を破棄。これより『殺さずに奪還する』任務へと移行する」


 途端、オートマタの背中からジェットが噴射し、目に見えて速度が上昇する。しかもそれは一機だけの話ではなく――


「……懇願、嘘だと言ってほしい」


 ギシルは思わず呟いた。

 蹴り上げれば雲が割れ、拳を振るえば大地が砕ける。

 それが今の恭香。もちろんその実力は他の追随を許すことなく、過去の名だたる英雄であっても彼女の前には膝を屈することだろう――が、しかし。

 一般人の常識が恭香に通じないよう、彼女の常識もまた、この世界においては一切通じることはない。


 蹴り上げれば宇宙が潰える。

 拳を振るえば世界が消える。

 というか、指一つ動かすことなく、座ったまま全快時のギンや混沌をなぶり殺せる。

 そんな化物――もとい、最早なんと形容すべきかも判断のつかない、ありとあらゆる常軌から大幅に脱した文字通りの最強。

 他でもない、そんな神霊王イブリースの眷属たちが自由に闊歩していた時代こそ現代であり、この世界であり――そんな世界において、彼女の……否、世界中の他の誰であったとしても、常識なんてものは通用しない。


「……っ!」


 ギシルは視界一杯に捕らえた無数の『危険』を察知し、後方に迫る地面へと視線を向ける。

 眼下に広がるのは見覚えのある大地。

 無数にそびえ立つ尖塔に、生気なく街中を闊歩する人々。

 そして、それを管理し、頂点に君臨する機械たち。


「……確認。こいつらと戦っても意味はない。故に結論、やるならば本体を叩くほかないけれど、たぶん私の実力では遠く及ばない。……相談、どうすればいい?」

「ど、どうすればって……っ」


 問われ、恭香は必死に思考を巡らせる。

 ギンに助けを乞うのを真っ先に考えた。

 が、何の制限もない彼ならまだしも、今の彼に頼ったところでしょうがない。

 魔力が使えない以上ここにたどり着くことも困難を極めるだろうし、加えて彼が駆けつけたところでこの大群を前に何か打開策があるとも思えない。

 となると――


(こ、この世界には、ギンの方が私たちより先に来てた……。それが、もしもあの瞬間、ギシルから遠くに位置してたものから順番にこの世界へと送ってるのだとしたら――)


 ギシルの背中に触れていた自分が、ギシルと一緒に送られた。

 そして、自分よりもギシルから離れていたギンが、先に送られた。

 ならば、ギンよりも遠く、結界のすぐ近くに位置していた彼女ならば。

 かつてはギシルを前に届かなかったが、それでもあれから数週間。既に全快近くまで体力を整え、かつて失った魔力も既に戻っている、そんな彼女ならば。


(お、お願い、こっちに来てて……ッ)


 彼女は心の底からそう願い、念話を飛ばす。

 念話の送り先は見知った一人の白髪少女。

 陽と月の目を保有する、この世界においてもなお十分すぎるほどに『化け物』の域に足を突っ込んだ、ドMドラゴン。

 彼女へ向けて、恭香はたった一言こう贈る。



「――あ、ギンが知らない女の子を虐めてる」



 ――次の瞬間、目の前に時空の穴がこじ開けられた。

 それは紛うことなく、『転移門(ワープホール)』だった。




 ☆☆☆





「なんじゃとおおおおおおおおおお!」


 聞き覚えのある声が響き、穴の中から白いのが飛び出した。

 みょんみょんと頭の頂点から飛び出すアホ毛を不機嫌そうに揺らし、キッと周囲を睨み据えたその少女――白夜は、怒りを隠すことなく怒鳴り散らした。


「いったい何をしておるのじゃ主様! 主様が虐めていいのは妾か暁穂かエロースかソフィアかと相場が決まっておるじゃろう! まったくうらやまけしからんのじゃ! 一体どのようなプレイをしているのかとくと妾がこの目で確かめ、あわよくば後々の糧とさせてもら――って、あれっ、主様は一体どこじゃ?」


 ひとしきり叫んでからギンがいないことに気が付く白夜。

 彼女の目の前には自然落下中の見覚えのある二人と、同じくここ数日間にわたって嫌というほどに見知ったオートマタたちの姿があり、白夜の登場に二つの勢力は戦慄いた。


「が、愕然……まさかあのような不明瞭極まりない一言でこの場所へピンポイントで飛んでくるとは」

「わ、私も自分で言ってて驚いてる……」


 恭香とギシルはあらためて白夜の変態性に戦慄き――


「――ッ! さ、散開ッ! 各機に次ぐ、や、奴が来た!」

「ま、まずいッ、あの変態性に触れたβ16が一体どのような末路に至ったか……ッ!」

「危険ッ! 奴に触れるな話すな近寄るな! 変態が移るぞ!」


 オートマタたちも、白夜の変態性に戦慄いていた。

 哀れなことに白夜の拷問を任されていた彼らの仲間β16、その記憶や感情も全て共有しているオートマタたち。彼らは白夜を見るなり恐怖に体を震わせ散開しており、その光景を前に二人は思う――コイツ、一体なにやらかしたんだ、と。

 されどそんな恐怖の視線すら興奮に変えかねない白夜を前に恭香は小さく深呼吸をすると、首を傾げる白夜へと声を上げる。


「白夜! とりあえず助けて!」

「……ふむ? なんじゃか理解が及ばないのじゃが、とりあえず分かったのじゃ!」


 白夜の声が響き――次の瞬間、二人の体は地上に在った。

 まるで時間が飛んだような不自然な感覚。ソレを前に目を見開いて目の前に佇む白夜を見上げた二人は、思わずその体を震わせた。

 ソレは先ほどのようなふざけた恐怖ではなく、体の芯に突き刺さるような明確な恐怖。

 ギルと相対した当時の、力を使いこなすことも出来ず、体力も消耗していた彼女の姿は既になく、そこに在ったのは陽と月、時と空間を司る二つの瞳を煌めかせる――時空の支配者たる、少女の姿。


「――とりあえず、この数日間休んだおかげで全快近くまでいけたのじゃ。そのお礼と言っては何じゃが――お主ら、たしか主様に攻撃しとったよな?」


 叩きつけるような殺気が溢れ出す。

 周囲の空間を把握する月光眼。それによりギンがこの世界に来て、そして目の前にいるオートマタたちに危害を加えられたのは既に彼女にとって既知の事実。

 ならなんであんなふざけた言葉でここに来たんだ、と聞かれれば彼女は『主様ならやりかねないと思って』と答えるだろうが、それはそれとして。



「――とりあえず、お主ら全員フルボッコじゃな」



 彼女の声が響き――そして、オートマタたちに無数の打撃が襲い掛かった。

 躱す暇もなく……というか、まるで当たってから気が付いたような理解の及ばない現象に、オートマタたちは思わず思考を硬直させる。

 それらを前に一瞬にしてはるか上空にまで移動して見せた白夜は、真紅の瞳を煌めかせる。

 全ての時を司り、最強の名を関する三大魔眼が一つ――【太陽眼】。

 到達者となることでより強く、より大きな範囲でその力を使用できるようになった彼女にとって、既に自分以外の時を止めるなど容易なことであり――


「言っとくがの、妾。本気で戦ったら主様にもたまに勝つからの」


 彼女の体から膨大な魔力が迸り、銀色の瞳が輝きを放つ。

 全ての空間を司り、万能の名を関する三大魔眼が一つ――【月光眼】。

 片目だけであるためにギンの保有するソレよりも幾分か能力的には劣って見えるが――それを抜きにしても余りある絶大な能力。


「く……ッ! 各機に次ぐ! 奴を殺せ、全力を以てだ!」


 オートマタが叫び、白夜の周囲に無数の穴が開く。

 彼ら特有の移動手段。一種の転移門のようなソレは転移距離こそ短いものの、それでも発動速度で言えばかの転移門にすら匹敵する――が、されど今の彼女に対してその選択肢は愚策であった。


「――【魔空両断】」


 白夜の声が響き――そして、世界が割れた。

 彼女を中心として迸った時空の魔力が刃となって空間を裂き、無数に放たれたそれらは時空の歪みごとその先に存在していたオートマタの姿すら両断し、一瞬にして数十体を物言わぬガラクタへと変えてゆく。


 ――その姿、正しく【最強】。


 太陽眼による緊急回避と不可避の攻撃。

 月光眼による視角外の把握と時空間魔法の補助。

 前者だけで既に手が付けられなかった化け物が、後者による万能の空間把握力を得ることにより、もはや攻撃を当てる事すら叶わぬ、時と空間を支配する時空の支配者と相成った。


「な……っ!?」


 その光景を前に目を見開いて硬直するオートマタ。

 そして、かつて見た際と明らかに異なる強さを見せる白夜にギシルが限界まで目を見開き、茫然と口を開閉させるのを見て、恭香は苦笑交じりにこう呟く。



「……ま、これでもたまにしか勝てないのがギンなんだけど」





開いた転移門からロウリィ転げ落ちてくる方が面白いかな、とか思いましたけど、そうなったらまず恭香死亡確定しそうなのでやめました。

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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
― 新着の感想 ―
[気になる点] 恭香の本体は破壊不可能では?それこそ混沌やウルの絶対破壊みたいな能力がなければ。それとも人形の時は関係ないのでしょうか?
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