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いずれ最強へと至る道   作者: 藍澤 建
森国編Ⅱ
513/671

焔―005 黒炎魔法

一作目500話、二作目100話、番外編30話と少し……我ながら、書いてきたものですね。

 ――黒炎。

 俺がそう呼ばれる所以は、俺の持つ『黒炎魔法』だと言っても過言ではないだろう。むしろそれ以外に何も思いつかないほどだ。

 しかし、黒炎黒炎と、俺をそう呼ぶ者達は大勢居るが、それでも黒炎魔法の本当の力を知っているのもはかなり少ない。

 それこそ仲間内だけ……、もしかしたら、銀でさえ知らなかったのではないかと思う。

 しかし、何故そこまで知る者が少ないのかと聞かれれば、それは黒炎魔法について俺自身があまり話さないようにしてきたからだ。

 そして、その理由は単純明快。



 ――黒炎魔法が、他を圧倒するほどに危険極まりない能力だから。




 ☆☆☆




 ――剣聖モード。

 焔神の能力に備わった力の一つで、自らの周りに計六つ(現状、問題なく使える限界がそれと言うだけ)の武器を浮かべ、自由自在に操るという能力。

 それらの武器は刀はもちろん、銃、盾、その他全ての武器へと変身することが出来、それら全てが防御不可避の透過攻撃だ。

 確かに、銀のような多種多様な攻撃のバリエーションは存在しないが――それでも。


「攻撃力だけなら、絶対に負けてない!」


 多種多様な攻撃すらもたった一の力で粉砕する。

 その力が――俺にはあるッ!

 計六つの刀が銀めがけて襲いかかる。

 そして――


 ギィンッ!


 ――弾けないはずの刀が、弾かれた。

 それには思わず目を見張り――銀の、握っていた剣を見てさらに目を見開く。


「な……」


 ――神剣、シルズオーバー。

 それは凛ちゃんとの練習試合の際に幾度となく対戦したからこそ、俺自身もよく知っているものだった。

 けれど……、彼女の剣は、そんなにも――


「き、気をつけて久瀬竜馬! 神剣シルズオーバーは持ち主の精神力によって力が変化する……っ! そして、兄さんの精神力は――」


 ――たぶん、私の比じゃない。


 その言葉をかき消すように、銀の握りしめたシルズオーバーが全ての刀を弾き飛ばす。

 凛ちゃんの持つシルズオーバーのレプリカは、少なからず銀の精神力の影響を受けているはず。

 にも関わらず、目の当たりにしただけで実感できる――天と地ほどにも思える、輝きの違い。そして魔力の質の違い。

 どこまでも澄み渡るような、白銀色の魔力。

 しかもそれに付与(エンチャント)されているのが――


「円環龍の……絶対破壊か!」


 轟ッと、短剣から血色の魔力が迸る。

 円環龍ウロボロスが持つ、全てを破壊し尽くす最悪の魔力。

 その魔力は、本来触れることも――ましてや壊すことも出来ない炎の魔力を、いとも簡単に破壊し尽くす。


「くそ……、また面倒な力を」

「久瀬くん! 交代するっすよ!」


 俺の隣を通って花田が前へ出る。

 同時に花田の構えた巨大な盾へと短剣が振り落とされ――ギィンッと火花が散る。


「ぐ、っ……!」


 銀はステータスの限界値が俺たちよりも低い。

 にも関わらず、そのレプリカが片手で放った一撃は、盾を貫通することこそなかったが、それでも盾へも大きな傷跡を残し、一撃を盾越しに受けた花田はちいさく悲鳴をあげる。

 果たして、花田の防御力でさえ足りない銀を賞賛するべきか――あるいは、レプリカとはいえ、最強の一撃を受け止めた花田を賞賛するべきか。

 ……どう見ても後者だな。流石は花田。


「加勢しますよ! 超連続『ファイアボール』ッ!」


 後衛にいた御厨が声を上げる。

 掲げた杖の上空へと無数の魔法陣が展開され、その量に思わずレプリカでさえ顔を上げる。

 御厨の武器は――なんと言ってもその魔力量。

 それだけで言えば銀のソレにさえ匹敵しかねないほどの魔力量から放たれる、容赦知らずの超連撃。

 その上、あえて初級魔法にすることで放射後の操作性に自由度を持たせ、よりレプリカにとっては回避のし辛い連射となっている。

 この大軍――レプリカとて、そう簡単に捌ききれるとは思えない


「ハァッ!」


 杖が振り下ろされ――直後、無数の火の玉が空を舞った。

 それらは一直線にレプリカへと向かってゆき。

 そして――



『――始焔(・・)



 そう、聞こえたような気がした。


 一つ一つが必殺クラスの、無数の火の玉。

 それらをまるごと飲み込むように――巨大な、蒼い太陽が姿を現した。


「なッ!?」


 思わず目を見開く。魔法発動に際し、俺の隣にまで後退してきていた花田が冷や汗を流しているのが見える。


「ちょ……、な、なんで、影の神が……、あんなにも高位の炎の魔法使ってるっすか!?」


 激しく同感だ。

 あれは間違いなく――炎系統、最上位の魔法。

 いや、魔法というよりは……スキルに近いかもしれない。

 いずれにせよ、銀の神器による銀炎ならまだしも……あのレベルの炎、間違っても影の神が使っていいわけがない。


「――ッ!? く、久瀬竜馬!」


 背後から、凛ちゃんの焦ったような声が響く。

 焦燥感に塗れた彼女の声に思わず目を見開いて振り向くと、そこには愕然とした様子の凛ちゃんがこちらを見つめていた。

 然して彼女は戦慄きながら。


「こ、こんなの……、勝てない」


 その事実を、俺たちへと突きつける。



「今の兄さんは、影と太陽。二つの力を、従えてる」



 蒼い太陽から現れたレプリカは、炎を浴びてもなお、平然とその場に佇んでいた。




 ☆☆☆




 断続的に放たれる蒼い炎を躱しながらも、なんとか凛ちゃんの元まで後退する。


「凛ちゃん! さっきのは――」

「わ、分かんない……。けどっ、今の兄さんは本当にヤバイ。影の力を百パーセント引き出してる状態で、さらにそれとは正反対の『太陽』の力も十二分に引き出してる……。さすがに、太陽の力を百パーセント引き出してる、ってわけでも無いから炎系統の能力は吸収されずに済んでるけど……」


 ――それでも、絶望的なことには変わりない、か。

 再びレプリカへと視線を戻して舌打ちする。

 影魔法、月光眼、神器炎十字、シルズオーバー、円環龍の魔力、それら一つとっても厄介極まりないくせに……、さらに、そこには炎系統最上位の、太陽の魔力まで使いこなすだって?

 ……おいおい、お前は一体どこまでチートを極めれば気が済むんだよ、銀。

 刀を握りしめ、重心を低く刀を構える。


「凛ちゃんは……、一応あの力は手に入れたんだよな? 使いこなせるかどうかは別として。なら、炎に対しては」

「耐性は、一応できた。あの力は使いこなせないけど、戦えないことは無い」


 なら良かった。

 小さく笑って、彼女の護衛に回していた優香と妙へと視線を向ける。


「三人とも、近づく時は必ず魔力で体をおおってからにしてくれ。生身で近づくと一瞬で焼け焦げちまう」

「分かってるわよ……。アレ、いくら私でも一目見たらヤバいって分かるもの……」

「近づきたくないにゃー……」


 そうは言うが、逆に近づいてもらわなきゃこっちが困る。

 なにせ、相手はレプリカといえど銀だ。

 こっちも、全身全霊で臨ませてもらわなきゃ。


「俺は一撃(・・)の用意をする! 皆は少しだけ、時間を稼いでくれ!」

「「「了解!」」」


 三人がなんとか一人で耐えている花田の元へと向かうのを見ると同時、瞼を閉ざして意識を集中させる。

 ――黒炎魔法。

 それは、恐らく全ての『魔法』の中で最も凶暴性の高い、危険な魔法であろうと思う。

 確かに利便性、総合的な強さならば影魔法の方が上位かもしれないが、それでも、この力はそれすら上回る『ある力』を誇る。


 それこそが――全てを喰らい尽くす、という力。


 これは、混沌の力に近いかもしれない。

 大悪魔達の頂点、混沌は、触れたもの全てを喰らい、我がものとする力を持っていると聞く。

 対してこの炎は――触れたもの全てを燃やし尽くし、全てを喰らって自らの燃料とする。

 使用者が止めるまで決して消えない――地獄の炎。


 瞼を開く。

 視線の先には四人と斬り結びながらも、依然として表情を崩さない銀の姿があり、奴はその刹那――確かに、俺の方を見た。

 視線が交差する。

 俺は最初、この試練を『思ったより簡単』と思った。

 なにせ、強いとは言っても相手は銀の半分の強さしかなく、対してこちらはフルメンバー。苦戦はするだろうが、勝ち目が見えないというわけではなかった。

 だからこそ困惑し――今になって、気がついた。


 この試練の本質は――きっと、友を自らの手で殺せるかどうか。


 強さを測るのももちろんあるのだろう。

 けれど、レプリカが未だ本気を出しておらず、このままでは俺たちの勝ちが確定するだろうという状況下でも、未だになにかアクションを起こす気配がないというのは……つまりは、そういう事なのだろう。


「……悪趣味なヤツ」


 呟くと、どこからか鼻で笑うような声が響く。


『ふっ、端からこの程度の試練は乗り越えて当然だと思っていたさ。問題は、果たして君が彼から託された通り――【もしもの時】に殺せるかどうかだ。さて、君は、親友を殺せるかい?』


 ――親友を、殺す。

 その覚悟があるかと聞かれれば……多分ない。

 けれど、その代わり。


「アイツが道を違えた時に、一発ぶん殴って目を覚まさせてやれる。俺が求めたのはそんな強さで……今が、その時の予行演習だってんなら、本気でやらない理由がない」


 それに――

 そう続けた俺は獰猛に笑って。



「俺が本気で殺しに行っても、きっと本物は死にやしない。だから俺は、せいぜい鼻で笑われないように、ただ本気で殺りに行くだけさ」



 言って、沈みこんだ体をバネのようにしならせて駆け出した。

 ステータス頼りの超加速。

 言葉だけ聞けばまだまだ改良の余地がありそうだが――実質、最も早く攻撃を加えたい時は、これが何よりの最適解だ。


 刀を構える。

 視線の先には、俺の気配を感じとった仲間達が道を開け始め、その奥に佇んでいたレプリカが――確かに笑った。

 手加減――そんな言葉が頭を過ぎり、思わず苦笑してしまう。


 ――もしもの時は、殺していいから。


 あの言葉がどういう意味なのか、未だ分からない。

 もしかして、銀は生きているのかもしれない。

 道を違えて、生き続けているのかもしれない。

 そしてもしもの時っていうのが、今なのかもしれない。

 だからこそ、銀。

 もしも、次に会った時は――


お互い本気で(・・・・・・)、勝負しよう」


 刀を振り下ろすと同時、膨大な黒炎が迸る。

 黒炎魔法――Lv.5。



「――『黒焔斬』ッッ!!」



 その一閃はレプリカの体を飲み込み――



 次の瞬間、俺達は、森の中に立っていた。



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【新連載】 史上最弱。 されどその男、最凶につき。 無尽の魔力、大量の召喚獣を従え、とにかく働きたくない主人公が往く。 それは異端極まる異世界英雄譚。 規格外の召喚術士~異世界行っても引きこもりたい~
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